メモ

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724

植林について

2003/07/23

●エリモ岬の植林は地元の声に促されて林野庁も重い腰を上げて支援するようになったが、これは冬の強い季節風に砂塵が舞って海に入りコンブが根付く岩礁が埋まってしまうことを防止する上で有効である。この目的には針葉樹も有効だがもともとエリモ岬にあった森林は針葉樹だったのかどうか疑問である。

●瀬戸内海で山に木を植えるとカキが太るといわれているが、これは落葉樹の落ち葉から染み出るポリフェノールが海に入り、栄養分をなるのではないかと推察される。このような場合にも植林は有効であろう。

●水源涵養という面では落葉樹がすぐれている。また山の崩壊防止にも落葉樹が根をはって針葉樹にまさる。しかし林野庁はそれも針葉樹の植林をしたがる。地元からは落葉樹もという声があっても針葉樹である。なぜかといえば戦後の拡大造林の方針の下、針葉樹の苗木業者を育ててしまったからコレを保護するためとしか考えられない。むろん落葉樹の苗木業者は育ててないから落葉樹の苗木のコストは高い。

●笹原などは60年に1回枯れて実生から再スタートするし、根が浅く、急斜面では表土の一斉崩落も無いとはいえない。とはいえ、礼文島で林野庁がしているような自然に存在する緩傾斜の笹原にまで植林するのは自然破壊とはいえないだろうか?

●杉花粉症は戦後の拡大造林の方針の下に杉を多量に植林した結果といわれている。

●京都大学の加藤真教授が学士会報2003-IV No.841で「草原の残照」と題し、日本で戦後進んだ草原の喪失をひいては植生の多様性の喪失を嘆いている。彼によると1960年以降日本にあった原野が消えてなくなって、皆森になってしまった。日本列島がかって大陸と陸続きだったころ日本に到達した草原性の植物たとえば、オキナグサ、ムラサキもほぼ絶滅危惧種になり、種の多様性も失われた。万葉集の額田王の「あかねさす紫野行き標野行き」に描かれたムラサキを見つけることはもうむずかしい。なぜそうなったかというと日本の原野は阿蘇、九重、由布といった山塊の周辺に広がる火山性騒乱により維持される草原を除けば、残りは人間が農耕牛馬の放牧、採草、屋根・俵を作るための萱場によって維持されてきた草原だ。これが 化学合成肥料と農耕機械の導入で消えてしまった。生物の多様性という面からみれば日本のように多雨の地方では自然は森林に向かって遷移するので草原への植林は農地化と同じく植生の多様性を失わせ、植林が全て全て善ではないことを知るべきであろう。

森林吸収

Rev. November 6, 2005


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