読書録

シリアル番号 579

書名

風の果て

著者

藤沢周平

出版社

文藝春秋

ジャンル

小説

発行日

1992/11/10第1刷

購入日

2003/06/27

評価

鎌倉市図書館蔵 藤沢周平全集第二十巻

「三屋清左衛門残日録」「蝉しぐれ」と長編を読んできて「風の果て」は3っ目。これに加え「漆の実のみのる国」を入れて藤沢の4大武家物長編小説といわれるそうである。「漆の実のみのる国」はこれから読むが、いままで読んだ3つでは「蝉しぐれ」と「風の果て」がよい。主人公は政争の末、北国某藩 (海坂藩)の主席家老になった桑山又左衛門の目を通して見た政争がテーマ。主題は権力の甘い匂い。同じ道場で学んだ旧友でかつ政敵杉山忠兵衛、野瀬市之丞、寺田一蔵、三矢庄六。

この小説はNHKが2007年に8時間のドラマ化をした。ところで海坂藩は藤沢周平の故郷、庄内平野にある鶴岡市がモデルとなっている。小説の主人公、桑山又左衛門は逼迫する藩の財政を立て直すために、大櫛山(朧月山)の水源から広大な荒れ地「太蔵が原」に水路を開削し、「太蔵が原」の開墾に成功するのである。こうして首席家老に登り詰める。大櫛山は月山をモデルにし、「太蔵が原」は月山西北部山麓の旧櫛引町(現鶴岡市東部)の延田原ではないかと言われている。この開墾地には「天保堰」というものが実在している。これは朝日村の町見家、大館藤兵衛が開発したものだという。この灌漑により不毛な原野は水田になり、地下水を涵養するようになったという。

庄内平野の水田用の灌漑用水が涵養する地下水は鶴岡市の水道の供給源だったのだが、地下水が涸れるたわけでもないのに鶴岡市は国土交通省直轄の赤川系の多目的ダムである月山ダムに水源を切り替えたという。結果、料金が上がり、水質が低下してうまい水を飲めなくなった住民は困惑しているという。国土交通省が無駄な月山ダムを建設した尻拭いに鶴岡市はつき合わされ るはめになったのだ。市民が市のしていることを監視せず、放っておいたため、自業自得という面もある。どこかの小村が村の有力者が村八分を 指導するのに唯々諾々と従っておいて、訴訟費用を折半させられたと同類の話だ。そこで一首

周平が 月山ダムに 泣いている    座一

Rev. October 23, 2007


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