読書録

シリアル番号 1317

書名

阿弥陀堂だより

著者

南木佳士(なぎけいし)

出版社

文芸春秋

ジャンル

小説

発行日

2002/8/10第1刷
2007/9/5第12刷

購入日

2017/12/11

評価



医者の西岡昌紀氏が書いた短編小説集『』が面白かったので友人の加 畑氏に読んでみと貸したところ。お返しににやはり医者で作家の作品だと貸してくれたのがこの本である。

著者 は佐久総合病院勤務の医者であるという。友人は付け加えて「医者と作家の二刀流のなかでは渡辺淳一が一番。最近(後期)の作品は不倫を扱ったものや露骨な 表現等が目立って 感心しないがが、『雲の階段』や『阿寒に果つ』などは読み応えを感じたと付け加えた。私は「渡辺淳一はどちらかというと医者より本格的作家ではないかと思 う。不倫ものを書くのは結局、実入りが大きいためかと勘ぐる。私も阿部定ものの「失楽園」では近くの鎌倉プリンスが舞台だと言うので大枚はたいたことがある。林真理子も最近は日経に『愉楽に て』という過激なポルノを書いているようだ。その日経新聞9月15日の一節:

久坂はすばやくワンピースの裾をめくり上げた。女は両脚を少し開けて立っていたため、 その間にすぐに指を置くことが出来た。中指を往復させる。絹の薄い下着だったので、亀裂をなぞることはたやすかった。由希はこらえきれずに、傍のソファに 倒れ込んだ。三十八歳の彼女は指だけであっという間に達してしまう。

早速、「阿弥陀堂だより」を手に取ってぱらぱらとめくってみた、ゆったりとした文章で最後まで読めそう。そして樋口可南子と寺尾聰が出演した「阿弥 陀堂だより」という2001年の映画の原作だと分かる。樋口可南子の魅力で人気があったようだが、いまだ観ていない。映画のロケ地は安曇野だと紹介したTV番組を観た 覚えがある。西沢氏主宰の西高との合コンで飯山の枝豆畑にでかけたとき、木島平の奥にある阿弥陀堂がそのモデルだとか聞いた。西沢氏はそこにいったことがあるという。

加畑氏がDVDを貸してくれたので見るとロケ地は安曇野ではなく、飯山と分かる。まさに下の写真の右手奥の扇状地が舞台となっている。萱ぶきの阿弥陀堂は わざわざ造ったらしい。映画では原作にない小説の師匠が登場し、主人公が日本刀を譲り受けて、村の祭りで剣舞をひろうするという部分が着け加えられてい た。多分映像美をつけくわえたいという監督の計略だったのだろう。久石譲のテーマ音楽はすばらしい。



枝豆畑から阿弥陀堂のある扇状地を望む 2007/8/23撮影

Google mapで調べると菜の花公園の東方の福島棚田の里に萱ぶきの阿弥陀堂が今でも残っているようだ。翌日には小菅神社を訪問し信 濃巡礼19番札所でもある菩提寺を訪問した。


読みだすと、引き込まれ、2日で読破してしまった。主人公が飯山出身という設定になっているので地元で聞いた話と一致する。作者は医者だそうだが、その経 験を女医と作家の夫婦に分けて投影したようだ。男と女、都会と田舎、若者と老人をしっとりと描写して読者をその世界に引き込む力を持っている。読後感がす こぶるさわやかだ。

信州の方言も懐かしく思い出した。昔、坂 東三十三観音めぐりしていたとき、益子のレストラン「やまに」で食べた乳茸入りの蕎麦の味は忘れられない。飯山にも乳茸が採れるらしく、「ちい ぼ」という名ででてくる。私の子供の頃、そういうものが信州でも採れることすら知らなかった。

阿弥陀堂守の老婆のために主人公が屋外トイレを作る話が出てくる。米国のトランプ大統領がハイチやアフリカからの移民について人種差別的用語を使ったと非 難されていることをCNNが報道していた。人種差別的用語とはどういう言葉かなとおもいつつ米軍放送をきいているとアナウンサーがトランプがハイチやアフ リカをblank hole countriesと言ったという。それがどうして人種差別になるのかなとおもってgoogleでしらべるとs***hole contriesと言ったとでている。これは何だろう。活字でs***は言いたくないのでblankと言ったのだろうとは推察できた。ならば***はなんであろうかと気になります。そうこうしているう ちに朝日新聞が「屋外便所の国」すなわちshit hole countriesといったのだと書いてあったので納得。ということは阿弥陀堂のある国はshit hole countriesということになる。そういわれるとやはり気分は良くない。

Rev. January 24, 2018


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