読書録
シリアル番号
1313
書名
短編小説集『桜』2017
著者
西岡昌紀
出版社
文芸社
ジャンル
小説
発行日
2017/5/15第1刷
購入日
2017/11/12
評価
優
著者献呈本
インターネットで部分的に読んでいたこの短編小説集『桜』が文庫本になった。やはり紙で読むほうがすっとその世界に没入できる。寝転んで読めるところも好ましい。
五話の短編が収録されている。いずれも桜と風と丘と海を背景に苦悩や喜びに翻弄される人物が登場し、物語が展開してゆく。言葉が重複しながらゆったりとストーリーが展開する。小説と言うよりは詩的でちょうど協奏曲を聞くようにことばが頭のなかでエコーして心地よい。
第一話は讒言にあった武士とそれを安易に信じた領主との葛藤がテーマだ。読了して良質のワインを味わったような気分となり、数日、その余韻を楽しんだ。残 りの物語である落ち武者と白馬の幻想的な逸話、笙の名人である楽人の親子の葛藤、恋になやむ若い僧の成長物語、北国の廓の遊女と若き船乗りの悲劇は一挙に 読破した。そして最後にこれは五楽章の交響曲だと気が付くのである。
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