読書録

シリアル番号 1114

書名

暗黙知の次元

著者

マイケル・ポランニー

出版社

筑摩書房

ジャンル

社会学

発行日

2003/12/10第1刷
2012/6/20第9刷

購入日

2012/07/01

評価



原題:The Tacit Dimension by Michael Polanyi 1966

ちくま学芸文庫

著者はブタペスト生れのユダヤ人で医学、化学博士号を持つ。英国に渡り物理化学教授になりのち社会科学に転ずる。本著は1962年のイェール大学のテリー 講座での講義をベースにしている。この講座のテーマはメノンのパラドックス(パラドックス集37)であっ た。

「人は言葉にできるよりも多くのことを知ることができる」

発見されるべき何かが必ず存在するという信念に、心底打ち込むということだ。それはその認識を保持する人間の個性を巻き込んでいるという意味合いにおい て、また、おしなべて孤独な営みでるという意味合いにおいて、個人的な行為である。

ポアンカレ予想を証明したロシア人数学者グリゴリー・ペレルマンはまさにこの孤独な作業を一人でやりとげた。

Tacit knowledgeは非言語的知性ともいわれる。言 語に拘束されない知性のことで映像、画像、音声、音響など言葉では伝達できない声色、リズム、沈黙、間、表情、仕草、雰囲気、余韻、におい、雰囲気など。

これに対し formal or explicit knowledgeは言語的知性とも言われ言語に拘束された知性のこと。学者、研究者、アカデミアは言語知に拘束される。官僚・官僚的組織(東電など)が どうしようもない のは言語化できる知識能力である形式知にこだわるから。全て文書化する。マニュアルは形式知であり、人間の直観力を阻害するため適時適切に判断する実践知 が働かなくなる。

大乗仏教では。眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識・末那識・阿頼耶識の8つの識のうち第8番目にある阿頼耶識(alaya-vijnana)がほぼ該 当。また「蔵識」(藏識)「無没識(むもつしき)」とも訳す。この識は個人存在の中心として多様な機能を具えているが、その機能に応じて他にもさまざまな 名称で呼ばれる。諸法の種子を内蔵している点からは「一切種子識」(sarva-bījaka-vijñāna)、過去の業の果報<異熟(い じゅく)>として生じた点からは「異熟識」(vipāka-vijñāna)、他の諸識の生ずる基である点からは「根本識」(mūla- vijñāna)、身心の機官を維持する点からは「阿陀那識」(ādāna-vijñāna、「執持識」/「執我識」ともよばれる。

エレベータやスライド・ドア業界の暗黙智に 10Jの法則というのがある。10 ジュールの仕事量が働くと人間が怪我をする危険性が増す。

私は日本の官界、民間企業がうまくいっていないのはリーダー に暗黙知が欠けているためとみている。

アイステーシス=「感性」 =「統合的認知」も似たような概念であろう。

Rev. December 19, 2012


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