日本の政治・経済の不調の原因

形式知優先社会は暗黙知を失い国は亡ぶ

追補ー3 脳の構造

動物学者のコンラートローレンツは「現代生物学の立場から見たカント のアプリオリ論」という論文を書いている。人間も含め、それぞれの種の脳にはくせがある。女と男の脳にちがいがあるように文系と理系の脳には認識の仕方に 違いがある。文系はアプリオリな認識の傾向が強い。法科にしろ、経済学にしろ実験できないからいい加減な観念論にながれる傾向がある。理系はヒュームが指 摘した通り、実証して確認しながら進むため努力次第でアポステリオリな認識が可能なのだ。すなわち革新ができるのは理系に多い。むろん努力しない人は文系 的になる。これが一番始末に負えない。

英語国の子供が太陽を黄色に塗り、日本の子供が赤を使うのはサピア=ウォーフの仮説(言語相対性仮説)によれば言語はその話者の世界観の形成に差異的に関 与するという。日本は文系支配の国だから、文=言葉による洗脳という意味で当たっていると思う。「原発は安全と言わねば住民が反対する。ゆえに安全であ る」などなど、とても論理的ではない。魔女的支配の国とでも言える。松下政経塾の連中はこの魔女能力だけ磨いていたみたい。松下魔女軍団とでも言えそう。 一方理系はつねに現実解釈を継続しているからサピア=ウォーフの仮説から自由である。

私が参加しているとある理系中心の学会は多様な意見の交換を楽しむ会 員が多いが、通産省主 導で製造業会出身の会員の多いとある経営情報学会の文系の教授らと論争していると、揚げ足取りばかりし、挙句の果てはすぐ失礼だ、謝れとか、あやまらなけ れば絶交すると最後通帳を突き付けたがる人間が多いことに気が付いた。まー!日本の国会など100%これだろう。英国の国会のように議論は互いに落としど ころ探る場というところが ない。これを、ロンドン滞在中に娘に話 したらつぎのような情報をもらった。

世界観が真っ向から対立することの多いリベラル派と保守派だが、実際、脳の構造が異 なっていたとする研究成果が、7日の米科学誌カ レント・バイオロジー(Current Biology) に発表された。 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London、UCL)の研究チームは、健康で若い成人90人を対象に実験を行った。自分の政治的志向を1の「非常にリベラル」から5の「非常に保守的」 まで5段階で評価してもらったあと、脳をスキャンした。その結果、リベラル派であるほど前帯状皮質の灰白質の容積が大きく、保守派であるほど右へんとう体 の容積が大きい傾向があることがわかった。前帯状皮質は複雑性の理解に関連しており、不確実性や対立をチェックする機能を持つ。そのため、前帯状皮質が大 きい人ほど不確実性や対立への認容性が高く、リベラルな物の見方を許容しやすくなると考えられるという。一方、へんとう体は恐怖心の処理に関連しており、 これが大きい人ほど、反感や脅すような表情に敏感で、危機的状況に際してはリベラル派以上に攻撃的に反応する傾向があるという。これまで、一定の心理的特 性でその人の政治的志向を予測できることは知られていた。政治的志向を脳活動と関連付けた研究はあったが、脳の構造と結びつけた研究は今回が初めて。

私が参加している理系中心の学会の方々は前帯状皮質が大きい傾向があるといえるのではないか。それどころか複雑性研究を本職にしている現役の大学教授もい る。一方、通産系の学会の会員は右へんとう体の容積が大きい傾向があるという感じ。どうも私の文系・理系二分法より説得力あるかもしれない。ただ理系には どちらかというと複雑性とかリスクを怖がらない性向があり、文系は感情の奴隷という傾向はあるだろう。だからこそ偉大な文学者がうまれるのだ。高校の同期 の半分は文系で役人やマスコミで働いた人間がおおいが、揚げ足取りは得意だし。考えは硬直してステレオタイプの歴史観を展開し新しいことに興味を持たな い。さてこの脳 の構造が生まれつきなのか、その人の生きた環境の影響なのか、はたまた国によってこの比率がどうなっているのか興味がある。特にロンドン滞在中であったた め、東洋と西洋でこの比に差があるのか気になった。そんなバカなと思われる方は、宗教を信じ易い人とそうでない人がいることもDNAが決めていると指摘すればいいだろう。そういうDNAはリーダーとフォロ ワーを区別して群れとして生存していくために都合がよかったためそのようなDNAがわれわれの体に残ったと理解すればよい。

もう一つ東大脳と他大学脳という脳の構造の違いの実例を挙げよう。東大に合格できる東大脳は効率の良い暗記能力(左脳側頭葉と海馬)と高速処理能力だ。グーグルの入 社試験のように発想力(左脳の前頭葉)や地頭力(暗黙知)は問われない。人間的魅力や政治的敏感さはまた脳の別の部位がかかわる。留学するとわかるが米国 の教授は「私の学説はたどるな」「君の意見を言え」とせまる。東大脳は北京大脳やパリ大脳にかなわない。日本の企業経営、国家経営がうまくゆかないのは東 大脳が役にたたないからであると開成高校から東大の文科II類(経済学系)と理科III類(医学系の両方に合格し、医者になった福井一成氏は指摘する。

October 6, 2011
Rev. January 14, 2013
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