ノースウエスト・アース・フォーラム

細木書簡

ロンドンのインドレストラン

グリーンウッドさん

ご連絡有難う御座いました。明日から8月末頃まで山中湖に滞在予定です。山中湖でも東京自宅の着信メールが覗けるし、気温が7〜8C低いので冷房は要らず助かります。9月11日は出席できるように頑張りたいと思います。

インドカレーについて愚著「商社マンのうちあけ話」に一言書きましたので繰りごとになりますが下 に転載させて頂きます。


ロンドンのインドレストラン

私にとってロンドンでの食事の楽しみの一つはインディアンレストランです。それは好物のカレーの種類が多いからでもあります。

注文の仕方は、鶏カレー、大エビカレー、小エビカレー、野菜カレー、ミンチカレーなど50種類にも及ぶメニューから、中華料理のように人数に応じて数種類選び、それぞれに辛さの程度を指定します。気の抜けたように味のうすい「ベリーマイルド」から、飛び上がるほど辛い「フェアリーホット」まで5、6段階ありますので、野菜カレーはマイルドで、鶏肉カレーはホットで・・と おりまぜて注文して楽しめます。値段も一様にお手頃です。

不思議だったのは、数年後インド本国に行った際、本場であるべきインドのカレーがロンドンのインディアンレストランのように美味しくないのでした。どれも煮込み過ぎているようでべチャべチャなので「オヤッ?」と思ったものです。

再度のロンドン駐在中にその謎が解けました。ロンドンでは看板こそインディアンレストランですが、実体はバングラディッシュレストランだったのでした。未だパキスタンもバングラディッシュもインドの一部であった頃、バングラディッシュ地区のカレーがロンドンで受け入れられインディアンレストランとして定着したと思われます。全部が全部とは言いませんが8割以上はバングラディッシュ出身者だと、あるレストラン店主が教えてくれました。その後私は念の為インドレストランに入るたびに出身地を尋ねたものですが、聞いた店は全部バングラディッシュと答えておりました。


さて 新宿の中村屋レザミのカレーの原産地はどこでしょうか?

細木

 

 

細木さん、

細木さんの本と川上さんのインドのカレーは旨くないという話と、小笠原さんのマハラーシュトラ、カルナータカ州からケララ州にかけての東海岸仕込みの「いわゆるスープカレー」がうまいと同じルーツのようです。

私もロンドン滞在時代、カレーが旨くて一日交代でカレー料理屋と中華料理屋を往復していた記憶がありますが細木情報によればこれもバングラディッシュ というかベンガル風とでもいう料理ということになります。

子供のころ母に連れられて中村屋に足しげく通ったミセスグリーンウッドによれば中村屋のカレーはインド独立運動で活躍し、日本に亡命したラス・ビハリ・ボースと中村屋創業者の出会いから始まったといいます。ラス・ビハリ・ボースはインドベンガル地方に生まれたので中村屋のカリーは ベンガル風といえるのではないかとおもいます。すなわち旨い。

ラス・ビハリ・ボースは独立運動に身を投じ。英国政府から懸賞金をかけられ、日本に亡命しました。日英同盟を結んでいた日本政府は、ボースに国外退去を命じたが中村屋の創業者の相馬愛蔵夫妻が店の裏の洋館に彼を匿いました。そして相馬夫妻の娘俊子がボースに嫁ぎ支えたのです。日英同盟の破棄により英国の追及が終了。ボースは、翌年には日本に帰化、中村屋の役員を務めインドカリーをメニューに加えたということのようです。

中村屋の会に 参加できるようになりましたら連絡ください。

グリーンウッド

 

 

グリーンウッドさん

成るほど、分かりかけてきたように思います。それにしても新宿中村屋とは特にカリーに関して大変な歴史がある老舗なのですね。現在も健在なのは誠に嬉しい話です。ラス・ビハリ・ボースに関してもネットでU-tubeの動画を含めて興味深く拝見しました。ベンガル出身のボースさんが日本に紹介したのは紛れもなくバングラディッシュ地区のものと思うのですがネットで紹介されているのはあくまで「本格的なインドのカリー」という表現ですね。知り合いにロンドンとムンバイの両方に駐在した男がおりますので新たな見解があるかどうか意見を聞いて見る積りです。奥様の博学にも脱帽です。

細木

 

 

細木さん、

実は私は中村屋は肉マンしか知らなかったのです。川上さんからカレーで有名と教えられ、女房には知らなかったのとバカにされています。女房は「子供のころよく母親に連れられて出かけた 」と遠くを見るような目でなつかしそうに言っています。

今回のカレー談義で食べたくなり、今夜は私の作ったトリのスープカレーで夕食を済ませました。塩を少なめにして私の好みのスパイスを利かせた味でしたがあともう一歩。

中村屋を早く味わってみたくなりました。

先日加畑さんが小麦粉を焦がしたカレーを母君が作っていたとなつかしそうに話していましたが、私は父からそう教わりましたし、新婚の頃、女房が作ったやり方もこれでした。これは日本海軍が英国から学んだやり方だと知りました。いまでも横須賀海軍カレーというレトルト製品が出回っています。

スパイスが高価な国は安価な小麦粉を焦がして、スパイスもどきの香りを出す工夫をしたのではないかというのが、私の仮説です。

グリーンウッド

July 29, 2010


トップページへ