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★シンプルだが実用的ソフト「WinOrbit」

 パソコン・ユーザーにとって嬉しいことに,高性能なフリーソフトがたくさん公開されてきました.ここに紹介するソフトもそのひとつで,インターネットのウェブから見つけた「WinOrbit ver.3.6」です.

 このソフトは,名前のとおりWindows3.1以上で動作する人工衛星の軌道情報などを表示してくれるもので,作者はK8CG(C.D.Gregory)です.

 地球の周りにはたくさんの人工衛星が回っています.TV静止衛星をはじめアマチュア無線衛星や気象衛星など,なじみの深いものがいっぱいあります.最近はハムの間で衛星通信だけでなく,朝夕の衛星の目視にも人気が集まっています.そこで活躍するのは,こうした衛星の軌道情報を教えてくれるソフトです.

特徴

 このソフトの主な機能は,

・人工衛星や宇宙船などの軌道の追跡や予測
・地図上に衛星の位置表示,シュミレーション
・衛星よりの俯瞰図
・複数の衛星の表示追跡
・指定衛星の種々情報の現状表示
・次回パス情報の表示
・通過中の全衛星のリスト表示
・交信可能なDX局のリスト表示
・衛星追尾アンテナの制御
・衛星のデータベース

など,このソフトを動かすことで現在飛翔している人工衛星の軌道情報をほとんどすべて知ることができるようになっています.

ダウンロード

 本稿の末尾に記載したソフトの格納場所からファイル「winorb35.zip」をダウンロードし,ディレクトリの指定をして解凍します.Explorerでそのディレクトリに入り「winorbit.exe」(ショートカットをデスクトップに作成すると便利)を起動すると,三つのウインドウが現れます.メインウインドウと地図ウインドウ,そしてテーブルウインドウです.しかし,“Attitude Informaton for AO-10 outdated!”と表示されたりして少々変です.そこで……このエラー・メッセージを回避します.

 \database\ao-10.attというファイルの中の
Alon=41
Alat=149
Expiration=99000.00
の各行の先頭に「;」を入れてコメント行扱いにします.これでエラー・メッセージは出なくなります.

初期設定

図1:Callsign/QTHの入力画面

 このソフトを使うためには,初期設定が必要です.メインウインドウの「Setup」-「Observer/QTH」をクリックします.ここにコールサインとQTH,緯度経度を書き込みます(図1).緯度経度は小数点以下4桁の表示になっていますが,そこまでは必要がなく,せいぜい1桁くらいでいいでしょう.高地に住んでいる人は海抜高「Horizonn Elebation」何メートルと記入します.東京や沖縄など一部の地域がすでに登録されていますので,それを流用することができます.ここに数値を記入すると,グリッド・ロケーターが自動的に計算されます.

 次に「Setup」-「Time Zone」でUTCと日本時間の時間差「09:00」を入力します.ここで「Leads UTC」のクリックも忘れないようにしておきます.ここに世界各地のQTHが登録されていますので,これを使うとその土地の衛星位置を見ることができるのです.これで初期設定は終了です.ここで重要なことはいま書き込んだデータの登録です.「File」-「Save Setting」をクリックしておけばデータが書き込まれ,次の起動からその情報が表示されます.

 軌道を計算する上で重要なことは,そのもとになる軌道要素(エレメント)を常に最新のものを使うことです.これは特に低軌道な衛星ほど重要で,ミールなどは10日前のエレメントだと数分も狂っています.まず最新エレメントの取得です.これはAMSATのウエブから入手することができます.ここからNASAフォーマットの情報を使います.(http://www.amsat.org/amsat/keps/menu.html

 このエレメントをWinOrbitから呼び込んで更新してみました.ところが新しいデータは入力できるのですが,どういうことか古いものもそのまま残っています.いろいろ試みてみましたが,どうもうまくありません.そこでExplorerで各ファイルを見たところ,「database\sat」ディレクトリの中に「database.2li」というファイル名でエレメントが登録されていることがわかりました.

 そこで新しいエレメントをこの名前にして置き換えてみましたところ,うまく最新情報だけをセットすることができました.これで準備がすべて整いました.

衛星の表示

 三つのウインドウにそれぞれ衛星の名称が出ています.これはソフトとして連動しているのですが,別々の情報を表示することができます.メインウインドウの「Tracking server」はマウスの右クリックで変更できますが,ここに登録されている衛星がどのように動作するのか実はよくわかりません.まあ一番よく使う衛星を登録しておくことにしましょう.

 地図ウインドウの衛星が一番重要です.ここの登録は「Satellite」をクリックして表示衛星を選択します.世界地図の上に自分の位置と衛星の位置が表示されました.「Options」で太陽の表示や緯度経度の表示線の選択ができます.それにおもしろいのは,「Cursor Display」をクリックすると地図の上をカーソルが移動することでその位置のグリッドロケーターが表示する機能です.

写真3:AO-10をシュミレーションする
 地図ウインドウの下部に衛星の情報が表示されます.次のAOS(地平線から衛星が上る時間)が何時かも出ていますし,AOSが過ぎるとここの部分が赤地に変わり上空に衛星が来たことを表示します.衛星の表示は現在位置だけでなく,特定の時間を指定して表示やシュミレーションもできます.その変更はメインウインドウの「Calc」で行います.これでAO-10をシュミレーションしてみました(写真3).

 衛星位置の計算時間間隔は,メインウインドウの「Res」の秒数値で変更ができます.低軌道の衛星は30秒ごとのプロットがよいでしょうし,高軌道だと100秒以上の設定でよいでしょう.ただし注意することは地図をクリアしたり,衛星の変更をしたりしてもすぐに書き変わらない点です.このときは焦らずに待っていると次の計算で正常になります.

 衛星の表示は1個だけでなく複数の表示ができます.しかし軌道プロットの書き込みはメインだけになります.「Functions」で次のパス,軌道情報,現時点の交信可能なDX情報などが表示できます.また衛星からの俯瞰図も表示します(写真4).不満な点は,次回のパスが表示しますが,今後24時間というような複数のパスリストが取れないことです.シュミレーションをするとだいたいの情報がわかるのですが,やはりリストが欲しいところです.

写真4:Mirからの俯瞰図
 テーブルウインドウには選択した衛星の詳細な情報が表示されます.この数値は計算時ごとに変化して行きます.衛星のビーコン周波数やアップリンクダウンリンクの周波数,それにドプラーシフトも表示されるので便利です.

 またアンテナ制御用のインターフェイスを使うと,このソフトで衛星の追尾を実行できるそうです.そのほか地図の拡大だけでなく,1/4画面や上下2画面表示ができるのも複数の衛星を監視するときに便利です.そのほか通過中の全衛星もリスト表示できるなど盛りだくさんの機能が付いています.

最後に

 このソフト(容量は475kbでZIP圧縮)の入手はウェブ(http://www.sat-net.com/winorbit/index.html)から取得できます.筆者のWebからもリンクしていますし,そこに筆者が作成した「虎の巻」簡易日本語マニュアルも置いています.

 このソフトを作成されたK8CGグレゴリー氏に感謝すると共に,皆さんが有効に利用して衛星通信や衛星の目視を楽しんでください.商業衛星などのエレメントはNASAのウェブに載っていますので,そちらから入手してください.