平成20年3月9日作成 

1:ウイルス性肝炎とは
 日本でもっとも多い肝臓病は、肝炎ウイルスによって起こるウイルス性肝炎です。肝炎ウイルスには、A型,B型,C型、D型、E型、非A〜非E型(G型、TT型など)、その他の 7つに 分類されます。ただ、D型、E型は日本ではまれで、問題になるのはほとんどがA型、B型、C型の3種類です。
 A型肝炎はウイルスは急性肝炎を引き起こしますが、慢性化することは無い。B型やC型のウイルスに感染した人の中には慢性肝炎に移行する人があり、そして肝硬変、肝臓がんを発症する人もいます。

 肝炎ウイルスの検査としてはウイルスマ−カ−を調べます。→→→もう少し詳しくは  をダブルクリック。

A型肝炎 B型肝炎 C型肝炎 D型肝炎 E型肝炎
原因ウイルス A型肝炎ウイルス B型肝炎ウイルス C型肝炎ウイルス D型肝炎ウイルス E型肝炎ウイルス
主な感染源・感染経路 患者の便で汚染された生水・生の貝類、経口 血液、体液、経皮 血液、経皮 血液、体液、経皮 患者の便で汚染された生水、生もの、経口
母子感染 なし あり あり(まれ) あり なし
好発年齢 全年齢層 青年 青、壮年 青年(B型キャリア) 全年齢層
劇症肝炎 あり(まれ) あり あり(まれ) あり(まれ) あり(まれ)
キャリア化 なし あり あり あり なし
慢性化 なし あり あり あり なし
肝臓がん なし あり あり あり なし
2:キャリアとは
 保菌者、感染症の媒体という意味でB型肝炎ウイルスに感染している人をB型肝炎ウイルスのキャリアといいます。
健康でも(無症候性キャリア)、肝炎患者でも肝炎ウイルスを体内に持っている人すべてをいいます。
 日本人の100人に1〜2人がキャリアです。
 肝炎ウイルスを他人に感染させないように注意する(血液、セックス)。
3:急性ウイルス性肝炎 
 サイトメガロウイルスやEBウイルスなどが原因となることがありますが、しかし急性肝炎の大半は肝炎ウイルスによるもので、なかでもA型が圧倒的に多く(約40%)、B型が(約30%)これに続き、C型によるもの(約20%)は少ない。
 肝臓の炎症は肝炎ウイルスが肝細胞を破壊するために起こるのではなく、侵入したウイルス体から排除しようとして免疫反応が働くことによってウイルスの侵入した肝細胞が破壊され炎症がおこります。
4:A型肝炎
 A型肝炎ウイルスに汚染された水や生の食品(特に生がきなどの貝類)を飲食したり、飲食した人の便を介して感染する。衛生状態の悪い地域への海外旅行に注意(抗体の無い人はワクチン接種で)。2週〜1ヶ月の潜伏期間。
 症状:発熱やかぜ様症状、消化器症状、黄疸など。
 慢性化することはないが、1%弱の人に激症肝炎、2%に急性腎不全になる。
 A型肝炎ウイルスマ−カ−:IgG型HA抗体---陽性は過去に罹患。IgM型HA抗体---最近感染した。
5:慢性B型肝炎
B型慢性肝炎は感染防止対策のとられていなかった時代の感染がほとんどです。中高年を中心に日本に約150万人のキャリア。慢性肝炎を発症するのはこのうち10%で、患者は約15万人。
B型肝炎ウイルスの感染経路 血液、体液を介して感染
  1:垂直感染 1:出生時の母子感染(キャリアの母親から感染)
  2:水平感染 2:輸血、血液製剤、手術
3:汚染された注射針、注射器、医療器具の反復使用
4:乳幼児に口移しで食物を与える
5:性交渉。もっとも多い。
6:外傷(かみつき傷など)
7:薬物乱用者による汚染された注射器の回し打ち
8:刺青、ピアス装着時の穴あけ
9:民間療法(血液使用など)など
 
 B型肝炎ウイルス感染後の経過:                
  B型肝炎ウイルスは血液や体液を介して感染します。大人になってから水平感染した場合は急性肝炎を発症することはあっても、慢性化することは、通常ありません。 B型慢性肝炎は、殆どが出生時の母子感染,または乳幼児期の感染によるものです。免疫システムの未完成な幼少期に感染すると、ほとんど症状も無いままウイルスが体にすみついて、キャリアとなります。

 B型慢性肝炎の症状と経過:
  自覚症状の少ない人が多い。症状が急激に悪化したときは倦怠感、食欲不振、黄疸など。
  B型慢性肝炎はウイルスの活動にむらがあり、経過は一定していません。変化(がん化、重症化など)の予測がつけにくいので、定期的な検査が必要です。
 
 B型慢性肝炎の治療
  インタ−フェロンやラミプジン(ウイルスの遺伝子合成を抑えて増殖を抑える薬)が使われます。強力ミノファ−ゲン注射、グリチルリチン、ウルソデオキシコ−ル酸、小柴胡湯など。
6:C型慢性肝炎:
 シェリング・プラウ株式会社のWEB SITEのC型肝炎情報サイトにも:ここを
慢性肝炎の約60%がC型。日本の肝臓がんの約8割はC型肝炎から。日本では人口の約1.5%、約200万人のキャリアがいると推定されている。このうち、C型肝炎を発症している人約90万人、肝硬変が約21万人、肝臓がんが約1万5千人、残りの約70万人が無症候性キャリアです。

 C型肝炎ウイルスの感染経路:
  現在では輸血用血液の検査と管理が徹底されています。しかし、血友病治療などに使われていた非加熱血液製剤によるC型肝炎感染への対応の遅れ(無責任な厚生官僚による)への対応として国では2002年より基本健診時にC型肝炎ウイルスの検査(同時にB型ウイルスも)を5年がかりで調べることになりました。   
  B型肝炎ウイルスと、同じように血液による感染です。現在のC型肝炎の約半数は平成4年(1992年)以前に輸血(や臓器移植手術)を受けたことがある方は、当時はC型肝炎に感染している血液か否かを高感度で検査する方法がなかったことから、C型肝炎に感染している可能性が高くなっています。残り半数が散発性肝炎と呼ばれる輸血以外(昔の予防接種などやまれに性交渉)です。母子感染もB型ウイルスに較べて少ないが6〜8%あるとのことです。
 
 C型肝炎ウイルス感染後の経過:            
  C型慢性肝炎の病気の進行経過はかなり明らかになってきました。肝細胞内のウイルス排除のために免疫反応が起こりそこで、持続的な炎症が起こり、その修復のために繊維の増殖(繊維化)が進み、肝硬変に、そして肝臓がんに進行します。B型慢性肝炎では特に繊維化の程度に係り無く肝臓がんの発生が見られますがC型では繊維化が進むほど肝臓がんが発生します。
  C型肝炎の病期分類に新犬山分類がありますが、繊維化の程度により軽度(F1)、中度(F2)、重度(F3)、肝硬変(F4)と分けています。
この分類で推定年間発がん率が研究されており、F1 で 0.5%未満、F2 で 約1.5%、F3 で 約3%、F4 で 約7% との事です。
 
 C型慢性肝炎の症状と経過:
   C型慢性肝炎は自覚症状に乏しい病気で,全身の倦怠感や食欲不振などの症状をうつたえる人は患者全体の約10%です。
   C型肝炎は慢性化すると発症してから10〜20年の小康状態ののち、悪化し肝硬変そして肝臓がんへと新興していきます。
  
 C型慢性肝炎の治療:
  インタ−フェロンやリバビリン(抗ウイルス剤)が使われます。強力ミノファ−ゲン注射、グリチルリチン、ウルソデオキシコ−ル酸、小柴胡湯など。


以下のような人は、C型肝炎ウイルス感染の可能性が一般の人より高いと考えられています。検査をお薦めいたします。

@: 1992(平成4)年以前に輸血を受けた人
A:長期に血液透析を受けている人
B: 輸入非加熱血液凝固因子製剤を投与された人
C:Bと同等のリスクを有する非加熱凝固因子製剤を投与された人
D: フィブリノゲン製剤(フィブリン糊としての使用を含む。)を投与された人
E:大きな手術を受けた人
F: 臓器移植を受けた人
G: 薬物濫用者、入れ墨をしている人
H:ボディピアスを施している人
I:その他(過去に健康診断等で肝機能検査の異常を指摘されているにも関わらず、 その後肝炎の検査を実施していない人など)

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