第37次超長距離移民船団。突然、船団内に警報が鳴り響いた。しかし、それは非日常の出来事ではなくなっていた。ムクイ・リンキーはVF−11Cに急いだ。

(今週に入ってもう3回目か・・・)

 現在、マクロス7船団はバロータ軍の攻撃にあい惑星ラクス上に不時着している。CITY7とBATTLE7のドッキングシステムが壊れ、更にBATTELE7の変形システムにも問題が発生していた。これではラクスの重力圏を突破できないのだ。地表からフォールドという超空間航法によりラクスを脱出する方法もあるが、かなりの危険が伴ってしまう。そのことが軍上層部にフォールドでラクス脱出することを決断できない要因になっていた。

「早くしろ、ムクイ。遅れるぞ。」

 激しい騒音の中、隊長の声がかすかに聞こえた。格納庫では出撃していくバルキリーのエンジン音が鳴り響いている。ムクイは自分の機体に乗り込むと発進準備を急いだ。

「急かさないで下さいよ、隊長。」

「いいから急げよ。」

「グット・オータム隊、出撃して下さい。」

(この声は・・・)

 オペレータの指示が二人の通信に割り込んできた。

「了解。いくぞG2、G3。」

「了解。」

「了解〜。」

 三機のVF−11Cが大空に駈け登っていく。一般パイロットの中でも操縦技量の高くない三人は配属先の関係もあり後方支援が専らの任務である。ムクイ達が配属されているのは護衛戦闘空母ボルデガである。

  突如、激しい爆音とともに前方の部隊が火の玉となった。上昇を続けるグット・オータム隊のわずかに先だった。

「ここまで攻め込まれてるのか?どうなってんだ。」

「落ち着け、G3。前方から何か来るぞ。」

 前方の小さな点に見えていた物が急激に大きくなった。それはムクイ達が搭乗しているVF−11Cの最大巡航速度を上回る速度で巨体のプロトデビルンと一機の戦闘機が近づいて来る。

「くっ、なんてスピードだ。あれでも生物か?」

 それはプロトデビルンと呼ばれている生物である。このプロトデビルンに対し統合軍が所有している兵器ではほとんど歯が立たない。残された可能性は反応弾しかない。しかし、反応弾は銀河条約により使用は禁止されている。事実上、統合軍の兵器ではプロトデビルンに対し手も足も出なかった。

「G2、G3、ミサイルを撃ちつつ右に旋回。プロトデビルンの後ろへ回る。」

 隊長の指示が出るよりも早く巨体のプロトデビルンからエネルギー波が放たれた。それは戦艦数隻をも沈めることの出来る破壊力を持っているのである。

(くそ・・・どうするか・・・

 

右に避けよう・・・)

左に避けよう・・・)