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 9月12日(月)...6日目

  意外や意外、スッキリ、シャキッと目覚める。昨日までの疲れがまるでウソのように体が軽い。夕べのお酒はそれほど残っていないようだ。

 (9:45) 弘前プラザホテル出発。弘前城へ。

  弘前の中心部からすぐの所にあり、ひろ〜い敷地は現在公園として開放されている。雨に濡れた木々の緑の中で、三重三層の天守閣が美しいたたずまいをみせていた。できれば、日本一といわれる弘前城の桜がいっせいに開花する、ゴールデンウイークの頃に来てみたいものである。

  弘前駅へ。「ドムドム」で朝食、380円ナリ!。伝言板に何やらゴチャゴチャと、住所、電話番号など書いていた清水くん。その後、誰かから連絡あったかい? それにしても弘前の駅前というのは、高いビルなどほとんど無く、十年以上昔のような、なつかしい感じのする町並みである。

 (10:45)
 弘前駅発。今日は青森市を通って、下北半島方面へ行く予定だ。弘前〜青森間は、まっすぐ行けば30〜40分位の距離なのだが、十和田湖を見てから行くので、3、4時間はかかると思う。

  102号線→ 途中雨が降りだし、カッパを着る。

 (12:15)
 十和田湖北側の、御鼻部山展望台に到着。十和田湖は、青森県と秋田県の二県にまたがる大きな湖だ。

 どーでもいいことだけど、公衆便所で大きい方の用を足した時、下から冷たい風がヒュ〜っと吹いてきて、おしりに当たった。その時のなんとも言えない、気持ちの良さが、その、今でも、忘れられないのよ..。(アホッ!)

  奥入瀬
 
十和田湖といえば、ここから流れ出す有名な、奥入瀬渓流である。
 約14キロも続く美しい渓流である。全部で十数個の滝があり、一番十和田湖よりの、奥入瀬のフィナーレが銚子大滝だ。近づいてみると、すごく水量感のある滝だった。

  102号線→  十和田温泉郷→

 紅葉の時期などは大渋滞するという、奥入瀬渓流のすぐ脇を走る道を、スイスイと走り抜けて、八甲田山へ向かう。

 八甲田山は青森県のほぼ中央、十和田八幡平国立公園の北部に横たわる連峰の総称なんだそうである。

  樹木に囲まれた道を走る。緑のトンネルの中を走っているようで、気分爽快だ。  清水が、ガソリンが無くなりそうだと言って後ろでゆっくり走っている。ミラーの中で、清水のガンマがだんだん小さくなり、ほとんど見えなくなった時、ちょっと隠れてやろうと思い、スピードを上げ適当な所で、道端の草むらに隠れた。念のためエンジンを止めると、車の音など全く聞こえずシーンとしていた。しばらくして遥か遠くの方から、バイクの音が聞こえてきた。「おっ、来た来た」。息を潜めて(そんな必要ねーだろ)じっと、清水が通り過ぎるのを待った。「ブオーン!」全く気づかなかったようだ。「やったネ」と一人でニヤニヤしながらエンジンをかける。「よし、今度は俺が追う番だ」と出ようとした瞬間、ズリズリ..と後輪が滑って危うくコケそうになった。結構急な斜面だったのだ。ヤバイヤバイ、

こんな所でもたもたしていたら、清水がどんどん先に行ってしまう。体制を立て直して後を追う。何も知らず、俺が先を走っていると思っている清水。「大成功!」と喜ぶ俺..「一人上手」と呼んでやってください。

 そのあと、八甲田連峰大岳のふもとにある酸ヶ湯温泉の、「まんじゅうふかし」という所に寄った。これは、食べ物ではなくれっきとした湯治の一種である。木箱の中に高温の蒸気を通し、その上に腰掛けてお尻から体全体を暖めるという、ユニークなものだ。俺達はカッパを着たまま、その木箱に抱きつくような格好でうつぶせになったりして、体を暖めた。じわ〜っと体中ヌクヌクしてきて、まるで夢心地だった。もうしばらくこうしていたかったけど、他の観光客がやって来たので、しぶしぶとバイクに戻った。「チェッ」。
 横には地獄沼という、こわ〜い名前の沼があった。

 八甲田山から青森市へと、パノラマラインを下って行く途中、青森市街と青森湾が一望できる所があり、なかなかいい眺めだった。 北の果ての港町..思えば遠くに来たもんだ。

 (15:10) 青森駅。
 交番で富士銀行の場所を聞いてから、「ドムドム」に入る(またあ?)。予定ではもっと走るつもりだったのだが、今日は出発の時間が遅かったため、もう三時をまわっている。今夜は近くの「うとうYH」に泊まる事にして、青森市内をちょっとブラブラしてみようということになった。

 (16:30)うとうYH着。
 もうシーズンオフのようだ。食事提供は無いけど、風呂は用意してくれるという。ホステラーもほとんどいないようだ。見るからにさみしげな、おんぼろYHだ。それでもバイクが一台、熊本ナンバーのホンダVT250Fが止めてあった。
 VT250Fの持ち主のライダーは、二十歳くらいの少年で、熊本からYHを泊まり歩いて、たった七日間で一気にここ青森まで来たという。顔は久保田利伸似で、なかなか気の良さそうな奴だ。会社を辞めてツーリングに出たのだという。明日函館に渡り、北海道をまわるそうだ。「何日くらい旅するの?」と訪ねると、「金が無くなるまで」だという。おもしろい奴だ、気に入った。意外と彼のように、フリーになって日本一周ツーリングなど、旅をしている人って結構いるのだ。実際、俺もツーリングの途中、何人かそういう人達に逢ったことがあって、その都度感心したり、憧れたりして、いつか俺も..と思ったりするのだが、決断力の要る、大変な事だと思う。
 荷物をYHに降ろし、バイクで再び町へ出掛ける。

  ちょうど「青森EXPO88」、青函トンネル開通記念博覧会(通称、青函博)が開催中なので、その会場に行ってみた。平日は夕方6時までとのことで、中には入れなかったけど、青森市のシンボルでもある、地上15階の三角形をした、「アスパム」は、きれいだった。それと近くに、一目でロングツーリングと分かる、荷物をたくさん積んだ汚れたバイクが止めてあったのだが、なんと、鹿児島ナンバーだったのには驚いた。ツーリングをしてるとバイクのナンバーって、つい目が行ってしまうものだ。

  再び青森駅へ。さすが青森らしく、駅前にはリンゴを売っている店が何軒もあるのだけど、ぶらぶら歩いていたら、元気なリンゴ売りのおばちゃんに捕まってしまった。「高山の朝市」を思い出すような、清水とおばちゃんのやりとりの末、結局買うことになった。8個で1500円のものを、900円にまけてくれた。さすが、値切りの清水!。

  夕食は駅の近くの、おさない食堂で食べた。俺の「しゃこちゃん丼」(1000円)は、イクラは旨かったけど、ご飯の少ないのには納得がいかなかった。清水が食べた「ねぶた定食」の方が、旨そうだった。

 田舎へ送るおみやげを買ったあと、バスの待合い所で、買ったばかりのリンゴをかじった。大分まけてくれたリンゴだったせいか、特別おいしいとは思わなかったけど、バスを待ってる人々や、その場の雰囲気が、リンゴそのものの味より、味わい深かった。
 ポツリポツリ雨が降りだし、駅の観光所も閉まっていたので、「うとうYH」に戻る。

  買ってきた(買わされた)リンゴを、VFの「くまもとくん」と、同室の外人さんに分けてやった。風呂はその外人さんのあとに入った。普通の家庭用の風呂で、一人ずつしか入れないのだ。「会津の里YH」と比べたら、湯舟に浸からせてもらえるだけでもありがたいと思うのだが、外人さんが入ったあと同じ風呂に入るということに、ちょっと抵抗感があって、そんな自分が情けなく、恥ずかしくもあった。

  いよいよ明日は北海道上陸(の予定)である。できる事なら青函連絡船に乗りたいと思っていた。青函トンネルの開通で廃止になってしまった連絡船だが、「青函博」の会期中だけ運行しているのだ。しかし問い合わせてみたところ、車やバイクは乗せないというのだ。実は去年北海道に渡った際、青函連絡船に乗るつもりが、間違って別の民間フェリーに乗ってしまい、しかも函館のYHで人から指摘されるまで、自分は青函連絡船に乗ってきたとばかり思っていたという、笑い話にもならないくらいの情けない思い出があるので、是非乗ってみたいと思っていただけに、残念無念である。そんな訳で、どうせ青函連絡船に乗れないのならと、まだ行ったことのない下北半島を走り、本州最北端の地、大間崎から北海道へ渡ろうと考えた訳である。

  夕方、フェリー会社へ予約の電話をしたのだが、その時またトンチンカンな事をしてしまった。「あの〜、明日の室蘭行きのフェリーの予約をしたいんですけど」「あ〜、今ちょっと欠航中なんだわ」「あ、決行中ですか、じゃあ、予約お願いします」「だから欠航中なんだわ」「はい、お願いします」「だから..」「はあ?」..ホント、アホです。悪天候の為、明日もフェリーが運行出来るか、微妙なところだというのだ。でも、そんなこと言われたって、俺達としては北上を続けるしかないし、とにかく一か八か大間崎まで行ってみることにした。

 「明日の晩は北海道の星空を眺められますように..」と祈りながら、北の大地を夢見るライダー達は、深い眠りに就いたのである。グッドナイト本州!!ハハ。

  本日の走行距離...149Km