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  9月10日(土)...4日目
 朝、吉田拓郎の曲で目覚める。(YHだ〜!)

  朝食の時、朝もやの田園風景を見ていて「いや〜、とても市とは思えない!」と、清水。(そう、遠野は市なのだ)。そーだよなー、群馬町は町だもんな。否、それにしても、ほんとのどかなところだ。

 (9:15) ほとんど強制的に、そうじをさせられたあと、出発!

  ヘルパー(YHで働いている人)や、ホステラーたちの盛大な見送りのもと、バイク二台、カッコよく走り去る。「じゃあね〜、また来るね〜」(また来る?)昨日は、まっすぐYHに行ったため、遠野はどこにも寄っていないので、市内を見て回ろうと思う。とりあえず遠野駅へ。

  駅前の観光物産店で、清水がおみやげを買おうと言う。「それじゃ俺も何か買おうかな〜、え〜っとウエストバックは腰に..無いから..?ゲーッ!!ウエストバックが無い!YHに忘れた〜!」まったくドジである。走っている間、気が付かなかったなんて..我ながらホントに情けない。ちょうどそこに、ゆうべ同宿だったカップル(?)がやってきたので、ウエストバックのことを聞いてみると、やっぱりYHにあるという。あれだけ盛大な見送りをしてもらったというのに、こんなにすぐ、ノコノコとYHに戻るなんて..とほほ..あ〜恥ずかしい。YHまで往復約10キロ。「清水すまん!」。

  再び市内に戻り、「とおの昔話村&博物館」に寄った。
ここは、かつて柳田国男が宿泊したという宿や、物語蔵(イラストや映像などを使った昔話ボックスなどがある)があり、民話のふるさとの世界を楽しめる。ただ民話の中には、地元のお年寄りが語っているものもたくさんあって、方言バリバリで何を言っているのかサッパリ分からないものもあった(おもしろかったけど)。初めて遠野を訪れる人は、まずここに寄ることをおすすめします。

  旅をしていると、ついつい曜日の感覚が無くなってしまうものだが、考えてみると今日は土曜日である。そろそろ財布の中身も心細くなってきたので、銀行でお金を引き出しておこうと思う。午後2時までに銀行へ行かないと、キャッシュコーナーも閉まってしまうのだが..しかし時間のことより何より、ここ遠野市には困ったことに都市銀行が無いのだ!清水は群馬銀行(地方銀行)のカードなので問題はないが、俺は富士銀行、バリバリの都市銀行である。問い合わせてみたところ、遠野はもちろんのこと、釜石にも宮古にも都市銀行は無いらしい。盛岡まで行かないと無いというのだ。いや〜、うかつだった...今日はこれから、「吉里吉里」(釜石と宮古の間にある)に寄ってから、盛岡市〜田沢湖方面へ向かう予定なので、とても午後2時までに盛岡など行けるはずがない。仕方がないので、金が足りなくなったら清水に貸してもらうとしよう..まあ、借りればそれで済むことなので、どうってこと無いんだけど、何が言いたいかというと、地方に来ると、よほど大きな都市でないと都市銀行は無い、ということに驚いたという..ただそれだけ書きたかっただけである。ついでに書き加えておくと、銀行を使うよりも郵便局を使ったほうが、ツーリングなどには何かと便利だと思う。とにかく、清水が群馬銀行でよかった。   

  今晩はYHを使わずに、田沢湖のキャンプ場あたりに泊まるつもりだ。

  清水が是非寄りたいという「吉里吉里」(きりきり)に寄ると、時間的にあとは盛岡くらいしか寄れない。遠野からは、田沢湖と吉里吉里は反対の方向にあるのだ。特に盛岡市に寄ってどうこうという事はないんだけど、前にも書いたように、今回のツーリングの目的の一つに、東北全県回って各県庁所在地の駅に寄る!というお約束があるので、寄らない訳にはいかないのだ。意味のない事かもしれないが、何かこだわりみたいなものがあったほうが、きっと楽しいと思う。という訳で、龍泉洞や平泉中尊寺、そして遠野YHおすすめの滝観洞などは、今回はパスすることにした。

  吉里吉里への近道である山道を使って、45号線へ。

 (12:55/66.6Km) 吉里吉里
 当然知っている人も多いと思うが、ここは、井上ひさしの小説「吉里吉里人」の舞台となり、何年か前、話題になった所である。清水は以前読んだことがあるそうで、せっかくだから行ってみたいという。途中道を訪ねながら、清水が先に駅へと向かう。             

  結構きつい坂道を登りきると、そこが吉里吉里駅だった。小さな駅だ。一時、話題になった所とはいえ、もともと小さな村なので、駅舎にみやげ物店があるくらいで、静かな所だった。駅は山の中腹にあり、駅舎から見ると下には吉里吉里の村落が見渡せ、階段の上には電車のホームがある。

  バイクから降りて駅舎に入る。小さな待合室があり、おばあちゃんが一人、編み物をしていた。電車が来るのを待っているのだろうか、のんびりとした雰囲気である。とてもやさしそうなおばあちゃんで、俺達が話しかけると、ニコニコしながら話してくれた。遠野YHで作ってもらったおにぎり(2個100円)を食べていると、「ちゃ〜んと一日三食、食べねーとダメだよ!孫にも、いつもそう言ってるんだよ..」なんて言ってた。俺達とこうして話しているのが、本当に楽しそうだった。そんなおばあちゃんを見ていると、なんだかこっちまで嬉しくなってくる。清水が、記念に写真を一枚撮らせてほしいと言うと、少し照れながらも快く承知してくれた。「パシャ!」。

  このあと、短い電車(ディーゼル?)が到着して、学校帰りの地元の高校生達がわんさか降りてきた。ものめずらしそうに、こっちを見ながらゾロゾロ通り過ぎたあと、どこからか聞こえてくる「笑っていいとも」のテーマ曲を聞きながら、(なんで土曜日のこんな時間にやってんの?)吉里吉里をあとにする。ところで、あのおばあちゃんは本当に電車を待っていたのだろうか?もしかしたら、ああして、編み物をしながら話し相手(観光客)が来るのを待ってたんじゃないかと、ふと思ったけど..そんな訳ないか。とにかく、吉里吉里のおばあちゃん、長生きしてね〜!

 (13:30) 吉里吉里発。 45号線を北上し、宮古市から盛岡方面へ106号線を西へ向かう。

  この辺はネズミ取り(速度取り締まり)が多いらしいので、注意しながら走っていたけど、大きなカーブが多く気分がいいので、ついついスピードを出してしまう..と、いきなり対向車線の白バイとすれ違った。気をつけよう..と思ってもやはり周りの車の流れも早いし..バイクでチンタラ走るのはシャクだし..でも絶対捕まりたくないし..と葛藤が続く。そんな時ふと気付くと、茶色っぽい旧型のマークツーが、うしろからピッタリと、あおるように付いてくる。しつこいので、前を走る車を2、3台追い抜いても、またすぐにピッタリと付いてくる。そんな繰り返しでしばらく走り、長い直線になった時...一台の白い車が、もの凄いスピードで追い抜いて行った。新型のマークツーだ。こちらも負けじとアクセルを全開にする。GO!150Km/hくらい出したのだろうか、新型マークツーに追いついたと思ったら、その直後今度は旧型マークツーが、俺達と新型マークツーを一気に抜き去った。「チクショ〜」。後ろを走っていた清水が、それを追おうとして、さらにスピードを上げて近づいてくる。「清水〜、行け〜、頑張れ〜」と、その時、重量感のある白いバイクが、あっと言う間に俺達を追い抜いて行った。「チクショ〜。清水〜!ゲッ!!い、行くなあ〜!白バイだ〜!!」

うわ〜、 危ない危ない...あっけ無く捕まった旧型マークツーを横目に、安全運転で走り過ぎる。 〜ゆっくり走ろう、みちのく路!〜

 (16:15/203Km)
 盛岡駅に到着。さすが東北を代表する都市の一つ。近代的な駅だ。「やっぱり、新幹線の止まる駅は違うよな〜」。俺がトイレットペーパーを頂きに駅のトイレに行ってる間、清水は駅前の写真を撮りまくっていた。荷物をいっぱい積んだバイクを駅前に堂々と止めて、もろツーリング野郎!って格好で、しかもカメラ片手にウロウロしているには、はっきり言って、恥ずかしいものがあるよね..

 予定通り、今夜は田沢湖のキャンプ場に泊まることにする。
 夕方になり、涼しさを通り越して少々肌寒くなってきた。トレーナーを一枚着込んで、田沢湖へ!

  田沢湖...水深日本一!
 キャンプ場の場所がよく分からなくて、湖畔でちょっと休んでいると、高校生風の地元の原チャリ野郎がやってきたので、キャンプ場の場所を教えてもらった。「サンキュ〜!」田沢湖をバックに、立ちションする清水の写真を撮ったのだが、暗くてなんだかよく分からない写真になってしまった(よく分かる写真だったら、現像してもらえなかったりして..)

  キャンプ場に着いた時は、もう真っ暗だった。
 「すみませ〜ん、シュラフだけで泊まりたいんですけど〜」「いいけど寒いよっ」受付のおじさんは渋い顔をしている。「あ、テントじゃなくてバンガローがいいんですけど〜」「あ、それなら大丈夫だね」。キャンプ場、入場料が300円。バンガロー使用料が2千円(一人千円)だった。俺達二人とも、バンガロー初体験である。簡単に荷物の整理をして、すぐに買い出しに出かける。来る途中にあった酒屋に行こうと思うのだが、早くしないと店が閉まってしまう。急げ!
 荷物を降ろしたバイクは、信じられないくらい軽い!軽い!。たいしたコーナーでもないのに、ハングオン(倒し込み)したりして..
 酒屋で、ビール、ウイスキー、ウーロン茶、そしておつまみなど買い込んで、途中、焼き肉屋でホルモン焼きを食べて(今晩のディナーです)、バンガローへ戻った。

  本日の走行距離...265Km


清水と二人で、ゆっくり酒を飲むのは久しぶりだ。YHに泊まれば風呂に入れるし、めしも出るし、ふとんでゆっくり寝れるし、人との出会いもあったりと、いい事も、もちろんたくさんあるけど、その反面なかなか自分達の時間を取れないという欠点もある。一方バンガローは何もない部屋だけど、酒は好きなだけ飲めるし、消灯時間なんてもちろん無いし、時間に縛られず自由にできる..なかなかいいもんだ。

 群馬を出発して四日目。まだ今回のツーリングは前半戦だが、清水も俺も一緒に走り同じ体験をしてきた。俺はバイクで走る時は一人の方が多いので、正直言って出発前、二人でのロングツーリングでどうなるものかと多少の不安もあった。でも一緒に走って、こうして酒を飲み語り合う..同じ道を走ってきても、感じ方、見方は当然違う訳で、そういったことを語り合えるというのは、ソロツーリングでは絶対に味わえない良さだと思った。走り方の違い、ペースの違い、女の子の好みの違い(×)そんなものどうでもいい。気の合う奴と一緒に走って、その素晴らしさを共有できる喜び..酒のせいで目頭うるうるしそうな程、うれしかった。この日の晩は、本当に気持ちよく酔えた。清水も相当酔ってたみたいで、あとで聞いたのだが、明け方外で吐いたそうだ...