月刊『世界の車窓から No.35 イギリス③・アイルランド』にこのホームページの写真が使われました

2010年12月4日発売の、DVDブック 朝日ビジュアルシリーズの月刊『世界の車窓から、No.35 イギリス③・アイルランド』(朝日新聞出版刊)に、当ホームページに掲載している写真2枚が使われました。DVDブック・世界の車窓からシリーズは、テレビの「世界の車窓から」で放映された映像をDVD化し、地図や解説を付けて月刊誌としたものです。このDVDブックの中の、「文学散歩、ジェイムズ・ジョイスのダブリン」というコラム(14ページ)に、当ホームページの、「『ブルームズデイ 100』をのぞいてきました」という記事に使われている下の2枚の写真が使われました。ちなみに「ブルームズデイ」とは、ジョイスの代表作「ユリシーズ」が描いた1904年6月16日のことで、「ブルームズデイ100」とはその100年後の2004年6月16日のことです。

下の写真は、「ユリシーズ」の冒頭部分で、「マーテロ塔」として登場する建物です。現在ではジェームズ・ジョイス・タワーと呼ばれ、ジョイスの記念館となっていて、ジョイスのもう一つの代表作『フィネガンズ・ウエイク』"Finnegans Wake"の手書き原稿などが展示されています。

下の写真は、「ユリシーズ」の第8挿話で主人公のブルームが歩いたルート上に設置されているプレートの一つです。

編集ご担当の伊勢京子様、素人写真を使っていただいてどうもありがとうございました。おかげさまで、生まれて初めて写真で報酬をいただくことができました。

このDVDを見ると、上のページでも触れているウェックスフォードなどの映像も含まれ、アイルランド全体の雰囲気がよく分かるため、再びアイルランドを訪問してみたくなりました。また、表紙のすぐ裏に載っている大きな地図によって、映像に登場する都市と路線の場所がすぐに分かるため大変便利でした。

この機会にアイルランドとダブリンのその後について少し追加させていただきます。『ブルームズデイ 100』は2004年でしたが、それ以来アイルランドは経済的にかなり勢いをなくしたようです。特に、2008年のリーマンショック以来、銀行の不良債権が拡大したため、大手銀行が経営難に陥り、日本同様、これを財政資金で救済することになったため、国全体が財政危機に陥り、欧州連合と国際通貨基金(IMF)が合同で総額850億ユーロ(約9兆5,000億円)の緊急融資を行うということが、2010年11月29日に決定されました。

日本経済新聞(2010年11月29日付)の「アイルランド危機の行方」という記事によれば、「アイルランドは経営危機に陥った最大手の1行だけで、総資産が国内総生産(GDP)を上回る。問題解決はアイルランド一国の手に余る。財政負担が重くなるとみて国債の買い手がつかなくなっている」と、経済情報分析が専門の仏TAC社のティアリ・アポテケール代表取締役は語っているそうです。これに対して、日本の最大手銀行である三菱UFJフィナンシャル・グループの総資産は204兆円で日本のGDP550兆円の約37%にとどまっているだけでなく、主要行が2000年代初めに不良債権処理をほぼ終了したため、アイルランドの状況は日本よりかなり深刻なようです。

不良債権の増加は、銀行の過剰融資によって膨張したバブルの崩壊が一因になっているとみられますが、これと関係して、わたしがダブリンを訪問した2004年の6月18日付The Irish Timesの記事をとってありましたので、ご紹介します。この記事によると、ダブリン南部のDartryという高級住宅街の1戸建が2004年としては最高の1,000万ユーロ(当時のレートで約13億円)で売却されたそうです。さらに、同程度の一戸建ては、95年には90万ユーロだったそうですので、この地域の不動産価格は9年間で11倍になったことになります。こんな急速な値上がりは、バブルと考えるのが自然だったんでしょうが、その頃は経済発展の勢いに目が奪われ、これほど急速な値上がりにあまり疑問は感じませんでした。バブルは崩壊するまでバブルだとは分からないなとど言った経済学者もいたようですが、残念ながら、私もかなり有力な材料がありながら、バブルを見逃していたようです。

経済危機の影響かどうか分かりませんが、ジョイスの代表作「ユリシーズ」の第11挿話の舞台となっているオーモンド・ホテルは、私が訪問した時には営業していましたが、2007年に発売された"James Joyce's Dublin-- The Ulysses Tour"というDVDをみるとすでに閉鎖されたようです。アイルランドファンの一人として、同国が経済危機を克服して、かつてのような輝きを一日も早く取り戻してくれることを、祈っています
〔2010年12月5日〕。

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