日本のベジタリアン事情と日本語クレオールタミル語説について房枝さんからメールをいただきました(その後2007年10月1日に一部削除し、「房枝さんの「日本語クレオールタミル語説」についての否定的なコメントを削除するに至った理由」という段落を追加しました

「イギリスのベジタリアン事情についてのメールをいただきました」で、「欧米在住の日本人にもベジタリアンはけっこういるとは知りませんでした」と書きましたが、日本にいる日本人にもけっこうベジタリアンはいるというメールを、4月15日に房枝さんからいただきました。掲載するのが大変遅れてしまいましたが、掲載されていただきます。さらに、房枝さんのご主人のリチャードさんは、オックスフォード出身の言語学者で、房枝さんも言語学を大学院で研究されていたということで、問題81(日本語)でご紹介した「日本語クレオールタミル語説」についても、ご意見をお寄せくださいましたので、ともにご紹介します。房枝さんは、どうも日本語クレオール・タミル語説をあまり評価していないようです。


日本のベジタリアン事情

ホームページ拝見しました。・・・でも一つだけ誤解があるのです。「日本人のベジタリアン」というのはイギリスにいる日本人ではなく、日本にいる日本人のことなのです。1月に送っていただいた本〔引用者追記: ロンドンでは入手困難な、大森一慧(おおもり かずえ)著、大森英桜(ひでお、一慧氏のご主人)監修、『一慧の穀菜食Book』(宇宙法則研究所発行)〕の著者、大森英桜、一慧先生も桜沢如一〔さくらざわ ゆきかず〕先生の弟子なのですが、この人たちを中心とする宇宙法則研究会とか、桜沢先生の未亡人だった(もう亡くなられましたが)桜沢里真〔りま〕先生を中心としていた日本CI協会のような組織的な玄米菜食グループもあるし、ヨガの実践者、ミュージシャンやアーティスト等、個人的に菜食をやっている人たちもいます〔引用者追記:漢字が苦手なわたしのような人間からみると、どうしてこんな難しい読み方のお名前の方ばかりなのかとあきれます〕。

ベジタリアンとして名乗りをあげていないので目立たないのかもしれませんが、結構多いと思います。(桜沢先生を中心とするいわゆる「正食運動」(「マクロバイオティック」の別名)に対して、医師や栄養士の間で菜食か否かという論争もあったようです。)

確かにビジネスマンにはベジタリアンが少ないようですから、小倉さんの周りにいないのはそのせいだと思いますが、いるところにはいる、という感じではないかと思います。ビジネスマンというのは忙しすぎて思索にふける時間のない人たちだという印象を受けていますが〔引用者追記:確かに、金儲けのことしか考えていない人が多いかも知れません〕、病気をしたりして変わる人も結構少なくないようです。そのような環境にあって菜食に目覚めたのですから、周囲の偏見に負けずにがんばってください。ただベジタリアンも自己流だとかえって健康を害する場合もあるようなので、気をつけてください〔引用者追記:植物から摂ることができないビタミンB12が入っている栄養剤で一番安かったエスエス製薬の「エスファイト・ゴールド」をのんでいますが、それ以上のことはしていません〕。

日本にはリマコーポレーションとかミトクとかマクロバイオティック食品専門の会社もあるし、こだわりや①ISP店 東京都豊島区南池袋1-29-1、池袋ショッピングパーク B1 03-3980-7428、②池袋店 東京都豊島区南池袋1-28-1、西武百貨店 B2 03-5949-5861〕とか正直村東武百貨店、東京都豊島区西池袋1-1-25、東武百貨店池袋本店、03-3981-2211〕のような専門店も昔からあるそうです。そもそも私の先生のドーソンさんのご主人のクリスさんがこちらで経営している"Clearspring"はミトクから分かれた会社のようです。(クリスさんはマクロバイオティックのために来日し、長い間ミトクに勤めていたそうです。)

マクロバイオティックは貝原益軒の『養生訓』あたりの時代からある思想(陰陽道等中国の思想を含む)をベースにしているので確かに難解で、私もいろいろ参考書を読んでようやく少しわかりかけてきたところだし、動物性の食品や化学性の食品を避けるとか、陰性(体を冷やす食品)と陽性(体を暖める食品)のバランスを取るとか実践面も指導を受けないと難しいと思います。

古代ギリシアの学者はもちろんのこと、シラノ・ド・ベルジュラックも「哲学者にして物理学者」だったのに、その後デカルトの二元論以降、心と体とか、文科系と理科系とか何でも二分するようになったのが現代人の混乱の元なのではないかと思うのですが、前回引用した養老孟司氏(中央公論3月号)も考える労を惜しむ人が悪しきデータ主義に陥る、今では哲学が衰微した、大学は哲学なんていらないと言う、と嘆いています(この人もいわゆる「理科系」です)。

かのアインシュタインも輪廻転生を認める発言をしているそうですが、あそこまで科学を極めた人だからこそ、科学の限界が見えたのではないかと思うのです。神も自然も畏れず、科学を妄信し、技術を濫用して環境を破壊し、精神的価値あるものをこわしてしまった現代人がこのまま突っ走って行ったらお先真っ暗です。その頃には私は死んでいるでしょうからいいですが、子どもや孫の世代はひどいことになるのではないかと恐れています。


「日本語クレオールタミル語説」やこの説を掲載しているWikipediaについての房枝さんのご意見

XXXXXここに掲載されていた房枝さんの大野説に対して否定的なコメント(302文字)はご本人のご依頼で2007年10月1日に削除させていただきました。削除するに至った事情については、一番下に書きました。XXXXXXX


房枝さん、

メールありがとうございました。こうしてみると、日本にもけっこうベジタリアンがいるようですね。でも、あまりメジャーになっていないのは残念なことです。これは、世界的にみると、日本人ほどの食い道楽はいないからなのかもしれませんね。わたしの印象としては、テレビで紹介されているようなうまいものを食べる楽しみを放棄するのはよほどの変人か、宗教がらみと思われる場合が多いのではないかと思います。

「日本語クレオールタミル語説」については、素人からみると、かなり説得力がある感じがしますが、専門家はあまり評価していないようですね。「あの程度の一致度」と書かれていますが、もっと一致度が高い言語があるのでしょうか。問題81(日本語)の。答えにも書きましたが、日本語がインドの南端辺りの言葉の方言みたいなものだという大野説を、言語学者が黙殺しているのは、「愛国的な」日本の言語学者にとって、このような考えはとうてい受け入れ難いためなのではないかと私は考えています(2007年9月1日)。


房枝さんの「日本語クレオールタミル語説」についての否定的なコメントを削除するに至った理由

このホームページを97年9月27日に開設してから、ちょうど10年になりましたが、いったん掲載したものは原則として削除しないことを基本方針としてきました。今回、削除させていただいたのは、「日本語クレオールタミル語説」についての房枝さんの否定的なコメントを削除するようにとのご依頼がご本人からあったためです。ご依頼をいただいてから、過去のメールを調べてみると、この部分については、ご本人に掲載のご承認をいただいていないことが分かりました。房枝さん、読者の皆さま、掲載を承認されていない文書を掲載してしまいましたことをお許しください。

房枝さんが削除を依頼された理由は、結論的に言えば、「反論するほど興味がない」ということのようです。ただ、言語学の正統的な考え方から外れているからといって、大野晋氏が数十年かけて研究してきた内容に興味がないというのは非常に残念なことです。言語学関係者の大野説に対する反感またはアレルギーは相当深刻なのかもしれません。

専門家とアマチュアとの間の関係については、問題76(食文化)答えで、なだいなだ氏の『権力と権威』(岩波新書、1974年初版発行)の次のような意見を引用しました。

「専門家と呼ばれる人は、ぼくたちより多くのことを知っている人間ではあるが、すべてを知っている人間ではない。だから、知らないことの理まで、ぼくたちに納得させることはできないのさ。それから先は、私にも分からない、がもちろん君にもわからないと、そこであきらめねばならんのさ」

専門家だから、専門家の間だけで分かり合えばよく、アマチュアに対する説明責任はないと考えるのは、専門家のおごりだと思います。

これについて思い出すのは、大学時代の物理学の授業で、もう亡くなられたある教授の方からお聞きしたお話です。はっきりとは覚えていませんが、大体次のような内容だったと思います。

物理学は複雑な研究が多いが、自分の研究を本当に理解していれば、高校生にでも分かるように説明できるはずだ。誰にでも分かるように説明できないということは、研究内容を自分で十分に理解していないか、その研究が本物でないのかのどちらかだろう。

高級なことを勉強していると思っていた学生時代の私には、予想外のご意見で、非常に強い印象を受けたと記憶しています。日本の言語学者は、新説を異端視して黙殺を続けるだけでなく、黙殺することに対する説明責任を果たさないままでいると、21世紀に入ってもいまだに「象牙の塔」にこもっていると言われても仕方がないのではないでしょうか(2007年10月1日)。

日本の言語学者は少なくとも、次のような点は明確にするべきだと思います。
(1)「言語学の正統的な考え方」とはどんなのもなのか。
(2)大野氏の方法論は、どんな点が「言語学の正統的な考え方」と違うのか。
(3)なぜ「言語学の正統的な考え方」を維持しなければならないと考えるのか。
そうでなければ、単なる嫌がらせということになります。
(2018年7月7日追記)

(2009年7月4日追記)集団遺伝学の最新の研究によれば、日本人の祖先は南インドから海路で渡ってきたようです。これは、大野晋氏の日本語クレオールタミル語説を強く支持するものではないかと思います。詳しくは、問題85(集団遺伝学)をご参照ください。

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