NTTではなぜ「再発」のことを「再演」と言うのかについて、NTT社員の方からメールをいただきました

NTTでは、事件や事故が再発することを「再演」すると言うらしいということについては、問題37(日本語)答えでご紹介しました。ただ、なぜ普通の日本語では使わない用法(このような用法を「電電語」というということもご紹介しました)をNTTでは使っているのかは、不明でした。問題を作ってから6年8カ月経った2006年2月に、この件についてのメールをいただきました。メールを下さった方(匿名を希望されていますので、仮にNN様とお呼びすることにします)がメールの転載をご了承下さいましたので、その内容をご紹介します。

NN様によれば、この用法は(a)郵政関連の職員が使い始めた歴史ある言葉のようで、(b)これが使われるようになったのは、多分事故や事件ではないとの認識があったためである、(c) 「再演」は、「再発」と明確に区別されている、(d)また、少なくても発表資料の文面は、間違った単語がつかわれることは無い、(e)電電公社の時代から、言葉遣いは、まちがいではなく意図的に、言葉が作られている歴史がある、とのことでした。

NN様のお話の通りだとすれば、「再演」は、外部からみれば事件や事故であっても、社内的には、そうではないとみなして責任を回避するための用語のようです。

民営化して21年も経っているのに、旧電電公社時代に使われた、一般には使われない用法が、依然として使われているというのは、驚きであると同時に、一般の企業ならあり得ないことだと思います。電電公社民営化の際に、「電電語」は使うなと発言され、2003年に他界された、真藤恒(しんとう ひさし)初代NTT社長も草葉の陰でさぞ嘆かれていることでしょう。

NN様、ご協力ありがとうございました。大変参考になりました。


(1) NN様からの最初のメール

From: NN
Sent: Monday, February 20, 2006 9:44 AM
To: pb6m-ogr@asahi-net.or.jp
Subject: 「再演」は根が深い

はじめまして、いちおうNTT社員です。
NTTの社内文書に「再演」との記述があったので調べているうちに、貴方のホームページにたどり着きました。
わたしも「再演防止」等の記述には、違和感を覚えます。
推測するに、郵政関連の職員(あえて社員ではないのですが、昔は文書課もありました)が使い出した歴史ある言葉のようです。
これが、使われるようになったのは、たぶん事故や事件ではないとの認識があってそのためにこの言葉が使われている気がします。
だから、「再発」ではなく「再演」なのではないでしょうか?

ということで雑感ですが

匿名希望


(2) NN様からの最初のメールに対するわたしのお返事

From: pb6m-ogr@asahi-net.or.jp
Sent: Saturday, February 25, 2006 8:07 AM
To: NN
Subject: RE: 「再演」は根が深い -- 貴重なご意見ありがとうございました

NN様

ホームページについてのご意見をお寄せいただいてどうもありがとうございました。
わたしと同じ違和感を持っていらっしゃる方が、NTTの社員の中にもいらっしゃることが分かって安心しました。
さらに、「再演」という言葉が使われるようになった背景のお話も大変興味深いものでした。
「再演」とされているのは、「事件ではない」ことを意味しているというご意見ですが、このご意見によって、なぜNTTが「再発」を「再演」と呼んでいるのかが分かった気がしました。これまた、非常にNTT的という印象を受けました。

XXXXX(一部省略)XXXXX

小倉正孝


(3) NN様からの2度目のメール

From: NN
Sent: Tuesday, February 28, 2006 10:01 AM
To: Ogura
Subject: Re: 「再演」は根が深い -- 貴重なご意見ありがとうございました


小倉様

返信ありがとうございます。

掲載はしていただいてかまいません。

XXXXX(一部省略)XXXXX

「再演」は、「再発」と明確に区別されている。また、少なくても発表資料の文面は、間違った単語がつかわれることは無い。
電電公社の時代から、言葉遣いは、まちがいではなく意図的に、言葉が作られている歴史がある。
そして、大事な部署として文書課があってその体質はかわっていないと思われます。

お返事おそくなりしつれいしました。

匿名希望


(2006年3月21日)

2013年末現在でも、まだ使われているようです(2013年12月25日追記)
・・・詳しくは、「最近近気付いたこと」の「NTTは電電公社時代の隠語を民営化後28年経った現在でも公式文書に使っており、そのことに全く疑問を感じていない(2013年12月25日付)という記事をご参照ください。

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