問題93(健康)の答え・・・「その食品とは(f. 牛乳)と、これを含む食品[つまりバター、チーズ、ヨーグルト、乳酸飲料、クリーム、アイスクリーム、などの乳製品]です」。

牛乳と乳製品が乳がんと前立腺がんの根本原因

乳がんと牛乳・・・・がん細胞はなぜ消えたのか(原題"Your Life in Your Hands"「あなたの命はあなたの手に委ねられている」)』【径(こみち)書房刊、ジェイン・プラント著。日本語版は山梨医科大学名誉教授・佐藤章夫(あきお)氏が翻訳されましたが、原著にない最新の情報が多数追加されています。この本は15カ国語に翻訳され、世界で400万部売れたそうです】には、「多数の科学的証拠にもとづいて、乳がんの根本的な原因が乳・乳製品であることを世界で初めて明らかにした」(18ページ)、また、「乳がんの原因や治療に関する事柄が、男性の前立腺がんにもあてはまることをみいだした」(19ページ)と書かれています。著者のジェイン・プラント氏は、英国のインペリアル大学教授(地球化学)で、この本の出版によって、2005年に英国王立医学協会の終身会員となったそうです。

乳がんの発生率と乳製品の消費量には強い相関性がある

肉の消費量と腸がんの死亡率には強い相関があることは、問題78(健康)の答えでご紹介しましたが、牛乳などの乳製品の消費量と乳がんの発生率にも、強い相関関係があることが分かっています。下の図は『乳がんと牛乳・・・』(以下「同書」)の153ページに載っていたものですが、この図によると、国ごとの乳製品の消費量と乳がんの発生率の間の相関係数は0.817と非常に高いことが分かります(この図のデ-タ数、つまり国の数は37です。この場合、相関があるかどうかを調べる「t検定」によれば、相関係数が0.4182を上回れば、危険率(間違える確率)1%(有意水準0.01)で相関があるといえます。0.817という相関係数は、危険率0.001%(有意水準0.00001)でも相関があると言える水準です)。


つまり、乳製品の消費量が多い国は乳がんの発生率が高く、消費量が少ない国は発生率も低いというはっきりとした関係があります。そのため、牛乳と乳製品を摂取しなければ、乳がんにかかる確率を下げることができ、増やせば、かかりやすくなることになります。

中国の乳がんによる死亡率は西欧諸国の3分の1にすぎない

プラント教授が牛乳の発がん性を発見することになったのは、教授自身が乳がんにかかり、自らの科学的知識に基づいて、治療しようとしたことがきっかけでした。乳がんと牛乳の関係に着目するようになったのは、乳がんになる数年前に中国人の仕事仲間からもらった「中華人民共和国におけるがん死亡率図譜」でした。この図譜によれは、中国全体の乳がん死亡率は1万人当たり1人(10万人当たりでは10人)と、多くの西欧諸国の水準を大きく下回るものでした。独立行政法人 国立がん研究センターがん対策情報センターの「がん情報サービス」の中の「乳がん―WHO死亡統計データベースより(1960-2000)」(http://ganjoho.jp/professional/statistics/digest/digest12.html )というホームページに載っていた「乳がん死亡率」というグラフから「欧米諸国の乳がんの死亡率」は、年齢調整後で人口10万人当たり大体30人程度であることが分かります。つまり中国の乳がん死亡率は「西欧諸国の水準」の3分の1程度にすぎませんでした。欧米諸国は中国に比べて高齢者の比率が高いことを考慮しても、大きな開きが残るそうです。残念ながら、年齢別人口構成の差を考慮した中国の「年齢調整死亡率」の値は載っていませんでした。また、乳がんの罹患率(発生率)は、中国の啓東地方の女性では10万人当たり11人で、都市(上海と天津)では、啓東地方の2倍、都市化がさらに進んでいる香港では3倍(10万人当たり34人)と欧米諸国並みになっているそうです(113ページ)。

大きな差の原因が遺伝的特性である可能性もありましたが、中国人や(中国人同様乳がん死亡率の低い)日本人が西洋に移住すると、1―2世代のうちに、乳がんや前立腺がんの発生率と死亡率が西洋人と変わらなくなってしまうことと、香港で西洋人の生活様式を取り入れた中国人、あるいはマレーシアやシンガポールで西洋式生活を送る豊かな中国人の乳がんや前立腺がんの発生率も、西洋人の発生率に近づくことから、遺伝的特性(人種)ではなく、生活習慣の違いが、発生率の差の原因と考えられるようになったそうです(114ページ。この論理展開は、問題78(健康)の答えでご紹介した、海外に移住した日本人の大腸がんの発生率が、外国人並に高まることから、人種ではなく、肉食が原因であることが明らかになったケースと同じです)。

さらにこれを裏付ける中国国内での都市と地方の食習慣の差について、次のような事実があったそうです。

『中国では乳がんは、俗に「富貴婦病=金持ち女の病気」と呼ばれていた。これは開放経済前の中国では金持ちだけが「香港食」を手に入れることができたからである。そのころの中国人は、アイスクリームやチョコレートから、スパゲッティ、フェタチーズ(訳注:山羊や羊のチーズ)まで西欧風の食品をすべて「香港食」と呼んでいた。というのも、これらの食品は当時イギリスの植民地であった香港でしか手に入らなかったからである。このことからみても、乳がんや前立腺がんは遺伝要因によるものではなく、環境要因によるものであるということができる。そうだとすれば、これらの病気は予防可能である!』(114―115ページ)

さらに、プラント教授は「中国人は乳製品を食べない」ことに気がつきました。

『・・・私が共同研究をおこなった中国人の研究者はいつも「ミルクは子どもが飲むものだ」と言っていた。中国系の親しい友人は、夕食のデザートに出されるチーズをいつも丁寧に断った。伝統的な中国風の生活を送っている人で赤ちゃんに牛乳や乳製品を与えている中国人はひとりもいなかった』(118ページ)。

さらに、日本でも、厚生労働省研究班が2008年に発表した調査結果によれば、45歳~74歳の男性4万3000人を乳製品の摂取量に基づいて四つのグループに分けると、乳製品摂取量が最も多かったグループの人たちが前立腺がんにかかるリスクは、摂取量が最も少なかったグループの人たちの1.63倍だったそうです(153~154ページ)。

一般的な治療のほかに、牛乳と乳製品の摂取をやめることによって乳がんを克服

プラント教授は、42歳だった1987年9月に金鉱の調査のためにカナダ北部を訪問していました。宿泊していたホテルの部屋で、乳がんの自己検診をしたところ、左乳房にえんどう豆ほどの大きさの硬いしこりをみつけました。すぐに、ホームドクターであるロンドンのカマック医師に電話をして症状を説明したところ、乳がんの確率が高いが、病変は広がっていないため、ロンドンに戻ってからしこりを摘出すればいいというアドバイスを受けました(28―29ページ)。その後トロントで開かれた学会にも参加されましたが、同時に有名なプリンセス・マーガレット病院(トロント大学付属病院)の乳がん専門クリニックで、多くの検査と生検(バイオプシー、病変組織の一部を採取して行う病理学的検査)を受けた結果、乳がんであることが確定しました。

左乳房の全切除のあと再発し、放射線治療を開始

治療は、ロンドンの一流病院であるチャリング・クロス病院の乳がんクリニックで行われ、最初の治療は左乳房の全切除でした。その後教授は自分でしこりの大きさを測り続け、5年後の1993年の始めに、チャリング・クロス病院に、1年間でしこりが2ミリほど大きくなったことを報告したところ、数日のうちにしこりは切除されました。ところが、その2週間後に、教授は別の場所にもしこりができていることを発見されました。つまり、3回連続でご自分で、乳がんを発見され、治療に結びつけることができました。このしこりを取り除いてから、放射線治療が開始されました(72ページ)。放射線治療では7週間かけて35回の照射が行われ、治療の直後と6週間後に、全身の詳しい身体検査が行われ、がん細胞はなくなったと診断されました(74ページ)。

4回目の転移発見のあと放射線による卵巣摘除術を受けた

しかし、その診断の6週間後に、教授は鎖骨の上のリンパ節にしこりがあることを発見し、再び針生検(針を刺して組織を採取する生検)で病理検査が行われ、リンパ節転移が確認されたため、リンパ節は日帰り手術で摘出されました。医師は、乳がんの発生と関係があるとみられているエストロジェン(女性ホルモンの一つで、卵胞ホルモンともいう。思春期の女性の胸の膨らみは主としてこのホルモンの影響だそうです、同書37ページ)の血中濃度を下げるために、坑エストロジェン作用のあるタモキシフェンを使うことを勧めましたが、タモキシフェンは子宮体部がんのような他の部位のがんを誘発することを教授は知っていたため、この治療を断り、放射線による卵巣摘除術(放射線照射によって人工的に更年期状態をつくりだし、エストロジェンの分泌を抑える。訳者注によれば、最近ではLH-RHアゴニストという薬剤による機能的卵巣摘除が一般的になっているそうです。77ページ)を受けることにしました(76ページ)。

卵巣摘除術の数日後に首に大きな腫れ物ができたため抗がん剤治療を開始

鎖骨上のリンパ節を摘出してから2週間後に抜糸が行われ、その数日後から卵巣摘除が行われました。ところが、卵巣摘除を受けてから数日後に、首の手術痕に鶏卵の半分くらいの、大きな痒(かゆ)い腫れ物が出現しました。この腫れ物もがんであることが分かったため、教授は抗がん剤治療を受けることにされました。教授は、メソトレキセート、フルオロウラシル、シクロホスファミドという3種類の抗がん剤を、2週連続木曜日に点滴注射を受け、その後3週間休んでまた同じサイクルを繰り返して、6カ月間に合計で12回点滴注射を受けるという治療(レジメン)を受けました(80―81ページ)。

余命はおそらく3カ月、運がよくて6カ月と宣告される

「治療スタッフは、私の不安と苦痛を軽減するためならなんでもしてくれた。それでも現実は冷厳であった。もし自分になにかあったら子どもたちの将来のために準備しておきたいから、あとどのくらいの時間が残されているのか正直に教えてほしいと頼んだ。私に残された時間はおそらく3カ月、運がよくて6カ月ということであった!」(80ページ)

乳製品を完全に避けることによってがんが消え、その後6年間再発していない

教授は首にできたリンパ節のかたまりの大きさをはさみ尺(ノギス)で測ってグラフにつけましたが、最初の抗がん剤治療はなんの効果ももたらさず、かたまりの大きさはまったく変わらなかったそうです。そこで乳製品を完全に避けることにされたそうです。

『(乳製品を避け始めてから)数日のうちにかたまりが縮退し始めた。2回目の抗がん剤治療が終わって2週間ほど経ち、乳製品を絶って1週間経つと、くびのかたまりが痒(かゆ)くなり、硬さが減った。グラフ上の線も下方に向かい、かたまりがだんだん小さくなっていった。その線の下がり方は横軸に平行になるようなものではなく、直線的にゼロに向かっていた。このことは私の転移乳がんが、単に抑制されたとか緩和したというのではなく、完全治癒に向かっていることを示すものであった。・・・・乳製品を完全に絶ってから約6週間経ったある土曜日の午後、1時間ほど瞑想を行っていた。そのとき、かたまりが少しでも残っているかどうか首に触れてみた。かたまりは完全に消失していた。階下に降りていって、夫のピーターに首をさわってもらったが、彼もかたまりらしきものにはまったく触れることができなかった。翌週の木曜日、チャリング・クロス病院でがん専門医の診察を受けた。かれは最初、困惑して首のあたりを触診していたが、「なにもありませんね」と言って喜んでくれた。ごく最近(1999年)この医師の診察を受けたとき、彼は私が受けた抗がん剤治療は過去20年間行われてきた、ごく基礎的なものだったと教えてくれた。どの医師も、乳がんが首のリンパ節に転移した段階で、私が抗がん剤治療で元気になることはもちろん、生き延びることすら思っていなかった。・・・・・私が最初、この医師に「乳製品を止める」という考えを相談したとき、当然のことながら彼はその効果を疑った。しかし今では、彼は「中華人民共和国がん死亡率図譜」を講義に使い、自分の乳がん患者に乳製品を止めることを勧めている』(121―122ページ)

その後は、再発もなく、髪の毛は治療前よりも色が濃くなり増えたそうです。「最後のがんが消えてから6年になるが、がんは二度と再発することはなかった。医学書を読んでみると、私に処方された抗がん剤はその当時最も安価な標準的なもので、この抗がん剤によって私のがんが消えたとは考えられない」。がんが消えたのは、牛乳と乳製品を採らないことによるものとプラント教授は考えられています(80ページ)。

牛乳に含まれるインスリン様成長因子1(IGF-1)とエストロジェンが乳がんと前立腺がんの原因とみられる

「ミルクは、新生児の特定の部位に働いてその部分の成長と発達を促すために、たくさんのホルモン(引用者追記:極めて微量で特定の組織の機能に一定の変化を与える物質)やホルモン様物質を高濃度に含んでいる生物活性(引用者注:生体に対する作用の程度。生体の中に本来存在する物質がその生体のために役立つ程度を表す「生理活性」とは異なる)の高い液体(ホルモンカクテル)である。・・・ミルクには親から新生児に伝えるべき数百種類もの化学物質が含まれているのだ。ミルクの構成成分は動物の種類によって大きく異なること以外に、親ごとにも違うし、親が食べているものによっても、ほ乳の時間的経過によっても、乳房ごとにも違う。・・・要するにミルクは、同種の動物の子どもの成長発育に適うように精密に造られた非常に複雑な生化学的液体なのである。牛乳が悪い飲み物というわけではない。それはすばらしい飲み物である、ただし子うしにとって。ここに牛乳問題の本質がある」(129~130ページ)

血中のインスリン様成長因子(IGF-1)の濃度が最も高い女性は最も低い女性に比べて乳がんになるリスクが3倍で、男性の前立腺がんの場合にはリスクが4.6倍となる

「インスリン様成長因子1(IGF-1)は、インスリンと同じような働きを持つ成長因子という意味で、インスリンとIFG-1はともに細胞を大きくする作用がある。・・・IFG-1は細胞の分裂と増殖を起こし、その作用は細胞の分裂増殖が最も盛んなとき(訳注:乳児期、思春期。成人ではがんの増殖)に発揮されるという特徴がある」(135~136ページ)。

「1998年にスーザン・ハンキンスン博士に率いられたアメリカとカナダの研究チームは、更年期前の女性を調べて、血中のIGF-1が最も高い女性は最も低い女性に比べて乳がんになるリスクが3倍高いという結果を発表した。この研究チームはIGF-1と乳がんのあいだに間接的ではあるが本質的な関係があると述べている。・・・血液中のIGF-1が最も高い時期は思春期である。思春期に乳腺が発達するのは、IGF-1が乳腺細胞の分裂・増殖を刺激促進するからである。IGF-1は、同じメカニズムで、乳がん細胞の分裂・増殖を刺激する。最近、乳がんの治療にタモキシフェンという薬剤が用いられているが、マギル大学のポーラック教授によると、その薬効の一部はこの薬剤が血中のIGF-1の濃度を下げることにあるという。・・・・マギル大学とハーバード大学の研究者は血液中のIGF-1が前立腺がんの発生とも関係が深いという研究結果を発表している。この報告によると、IGF-1の濃度が最も高い男性は、最も低い男性にくらべて前立腺がんのリスクが4.6倍であった。」(138ページ)

「ウシ成長ホルモン(BGH)とヒト成長ホルモン(HGH)は構造が違うが、IGF-1はウシでもヒトでも同じである。ミルク中のIGF-1の濃度は、牛乳のほうが母乳より高い。さらに、組み換えウシ成長ホルモン(rBGH)を与えられた乳牛の出すミルク中のIGF-1濃度は普通の牛乳より2~5倍も高く、その乳牛の肉のIGF-1の濃度は普通の乳牛の肉の2倍ほど高い。」(137ページ)

エストロジェンはインスリン様成長因子(IGF-1)の増加をもたらす

女性ホルモンの一種であるエストロジェンは、体内でも卵巣などで作られ、女性の乳房の発達を促進させるだけでなく、乳がんや前立腺がんなどのホルモン依存性がん細胞の分裂・増殖を促進させることが分かっています。プラント教授は「牛乳にはエストロゲンが含まれている。しかし、その濃度は高いものではなく、人体には影響がないとされてきた。しかし、少量であっても重大な影響をもたらすことがある。・・・重要なことは、牛乳中のエストロジェンがインスリン様成長因子1(IGF-1)の増加をもたらすことである」(144ページ)と書かれています。さらに、訳者の注記(145ページ)には次のような指摘があります。

『牛乳中の女性ホルモン(エストロジェンとプロジェステロン)の濃度は、そのウシの血中濃度よりも高い。しかも、現在の牛乳はその75%が妊娠している乳牛から搾られているから、牛乳中の女性ホルモン濃度はさらに高い。エストロジェンは牛乳中には硫酸エストロンとして存在する。・・・・牛乳中の硫酸エストロンは口から入ってエストロジェン作用を示す。事実、市販牛乳はエストロジェン作用を示すとともに、ラットで乳腺腫瘍の発生・増殖を強く促進する。しかも、妊娠牛から搾った牛乳の乳腺腫瘍促進効果は、非妊娠牛から搾った牛乳より強力である』。

牛乳は骨粗しょう症を悪化させる

骨粗しょう症を予防するためには、カルシウムを含む牛乳・乳製品を摂る必要があるというのは間違いで、カルシウムはむしろ植物からとるべきであることは、すでに問題78(健康)答え骨粗しょう症の節でご説明しました。

以下では、同書に書かれていることのうち、問題78(健康)の答えでは触れなかった点をいくつかご紹介します。

『世界保健機関(WHO)もカルシウムの摂取量の少ない国々で、骨粗しょう症の発生率が高くないことを確認している。WHOは、骨粗しょう症予防のために勧告されている食事性カルシウムが数々の健康障害を起こす可能性があることを指摘している。イギリス政府の栄養諮問委員会も「世界のいくつかの国では、カルシウム摂取量がイギリスの現行の勧告摂取量より少ないにもかかわらず、骨粗しょう症の発生が少ない」と述べて「カルシウムパラドックス」の存在を認めている。放射性カルシウムを用いたカルシウムの吸収研究で、牛乳中のカルシウムは18―36%しか吸収されないという結果が報告されている』(168ページ)。

『(牛乳などの)動物性タンパク質の多い食事をとると、体内が酸性に傾く。この酸を中和するため、骨のカルシウムがアルカリとして動員される。このようなときには、副甲状腺ホルモンの動きを阻害するために、骨由来のカルシウムが尿中に排泄されてしまう。この仮説を実験的に検証した研究者は、植物性タンパク質は骨粗しょう症に対して、いくぶん予防的に働くと述べている』(171ページ)

がん予防食・・・ビーガン食が最良

プラント教授は「最良のがん予防食は厳格なビーガン(vegan、動物性の食品を全く食べないベジタリアンのこと)食だろう。私も最後のがん再発の際には、食事を完全なビーガン食にきりかえた。腫瘍が消えてからも8カ月続けた。もしあなたが植物性食材だけで生きるビーガンになれるならそれに越したことはない。しかし、ビーガン食では、亜鉛とセレン、ビタミンDとB12が欠乏しないように気をつけなければならない」(166ページ)と指摘しています。

さらに、決して乳製品を許容するラクト・ベジタリアンになってはならないとも言われています。また、ビーガン食ではどうしても満足できない人のために、「プラント・プログラム」という食事療法を教授は提唱しています。この食事療法の効果について、教授は次のように書かれています。

『乳がんのリスクを減らしたいと思っている人は、乳製品を(豆乳などの)大豆製品にかえることだ(前立腺がんについても同様である)。乳がんや前立腺がんになってしまった人は、一刻も早く乳製品を大豆製品にきりかえてほしい。乳がん患者でプラント・プログラムに従ってくれた人は、従っているといいながら乳製品を食べていた人を除いて、ひとりも乳がんが再発しなかった。私の友人に、乳がんで片方の乳房を切除し、その後もう一方の乳房に乳がんが発見されてこちらも切除し、間もなく6カ月の抗がん剤治療を受ける人がいる。私は彼女にプラント・プログラムを勧めていた。それなのにまた乳がんになった。効果がないのなら、もう人に勧めるのは止めようと思った。そこで「本当に乳製品を止めているのか」と彼女に聞いてみた。「ええ、だけとチーズだけはどうしても止められなくて・・・・。それにヨーグルトはいいんでしょ。みんな体にいいって言うわよ」。』(177ページ)

業界団体や関連官庁の情報操作

最後に、教授の説は、国内ではほとんど伝えられていませんが、これは、乳業メーカー、菓子メーカー、酪農家などが情報をコントロールしているためと考えられます。また、たばこの発がん性の研究の場合同様、これら関連業界の差し金によるとんでもない研究結果も公表されています(その一例が150ページの翻訳者のコメントに載っていました)。

さらに、『文部科学省も厚生労働省も、業界の意向に沿って、日本人に牛乳を飲ませ、乳製品を食べさせようと躍起になっている。結果的に彼らは乳がんを増やす方向で努力しているのである。その一方で、厚労省はマンモグラフィーなどによる乳がんの早期発見を謳っている。こういうのを、マッチ・ポンプ(自分で火をつけておいて消火活動をする)と言うのだ。早期発見・早期治療の日本のがん対策は「もぐらたたき」である』と翻訳者の山梨医科大学名誉教授・佐藤章夫氏は「訳者後記」(295ページ)に書かれています(2013年8月22日)。

〔2013年8月29日追記〕:「乳がんと牛乳」を翻訳された山梨医科大学名誉教授・佐藤章夫(あきお)様に、乳がんの死亡率についてメールでお尋ねしたところ、お返事をいただくことができました。お返事の内容に基づいて「中国の乳がんによる死亡率は西欧諸国の1000分の1にすぎない」というサブタイトルを「中国の乳がんによる死亡率は西欧諸国の3分の1にすぎない」に訂正して、続く段落を訂正しました。訂正の理由や訂正内容については、最近気付いたことの「問題93(健康)で触れた「乳がん死亡率」について、山梨医科大学名誉教授・佐藤章夫様がメールでご説明下さいました」をご参照ください。

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