問題61(読書)の答え・・・『あなたもいままでの10倍速く本が読める』によれば精神を集中させるためには、b. 後頭部の上方にミカンが浮かんでいると考え、そのミカンに意識を集中して、静止させる)といいそうです。

「ミカン」は「空中の眼」

「a. 息を吸い、止め、吐き、再び止めるという動作を、それぞれ心の中で1から8まで数えながら繰り返す」というのは、アメリカのある資格試験のスタディーガイドに載っていた、試験直前の精神の集中法です。この動作を繰り返すと、気持ちが落ち着いて、精神を集中できるようです。また、便秘の時にトイレで使うと排せつが容易になるという意外な効果があるようです。

「c. 意識の一部が、・・・空中に舞い上がり、・・・天井近く、自分の斜め(後)上方から見下ろしているとイメージする」は、神田橋 條治(かんだばし じょうじ)著 『精神科診断面接のコツ』(岩崎学術出版、問題19参照、64ページ)で紹介されている、精神科医が患者の面接に集中するためのコツです。 この空中の意識のことを、神田橋氏は「空中の眼」と名付けました。私ははるか昔に、この本を読んで空中の眼のことは知っていたのですが、『あなたもいままでの10倍速く本が読める』のミカンの話は、空中の眼の話と、イメージするものは違いますが、後頭部の後上方の一点に意識を集中させるという点が共通しているため、実際には、ほとんど同じことを狙っているのではないかという気がします。

神田橋氏は、空中の眼について、さらに次のように述べています。

「はじめは少し難しいかもしれないが、馴れるに従って、長時間そのイメージを保つことができるようになり、ついで、空中の眼というか意識が、次第に薄くなりながら拡がってくる。そしてついに、面接している自分にまで届いて、両者が融合してしまうことがある。そのときおそらく、「関与しながらの観察」(引用者注:アメリカの精神医学者、サリバン(Harry Stack Sullivan)が提唱した、医師は患者を客観的対象として観察することはできず、人間関係の中で相互に影響し合いながら観察するのだという説)が成就したのであろう。わたくしは、ごくコンディションのよいとき、短時間そのような両方の自分の融合を体験したことがあり、そのとき、自分が桜井先生やPadel先生(引用者注:両氏とも神田橋氏の恩師)の域に達したのではないかと錯覚したものである」

また、同書の50ページには、つぎのように書かれています。

「面接について・・・最も大切なことを述べておこうと思う。・・・面接の本質は二人の人間の「出会い」である。・・・ここで私がいう「出会い」とは、・・・よどみに浮かぶ二個の泡が種々の条件が揃ったが故に出会ったという意味である。いずれかの結ぶのが早くても遅くても、他方の消えるのが早くても遅くても、二個の泡が出会うことはなかったであろう。その因縁に心をおくことなしに行われる面接は、技法、学説を問わず、結局、両者にとって有害無益であるとわたくしは思う。そのような考えは、わたくしの偏見であるにしても、二個の泡のイメージを描くことは、面接技術の向上にとって、本質的に有効であることは確かである」

この二つの文を、全く逆方向に勝手に解釈できるとすれば、人と人との出会いと、精神科医の面接は多くの共通点があり、従って、空中の眼というイメージは、普通の人間関係の場合にも利用することができるのではないかと思います。さらに、『あなたもいままでの10倍速く本が読める』によれば、速読術にも使えるようです。

私の経験によれば、後頭部の後上方に意識を集中させるためには、耳を後上方に引く感じにするといいようです。

自分を客観的に見る能力とも関係

『精神科診断面接のコツ』の194ページによれば、「空中に浮かぶ眼」というイメージを持てるかどうかは、自分を客観的に見る能力とも関係しているようです。

「分裂病(引用者注:多く青年期に発病し、妄想や幻覚などの症状を呈し、しばしば慢性に経過して人格の特有な変化を引き起こす内因的精神病。人格の自立性が障害され周囲との自然な交流ができなくなる)診断に際し、もっとも切れ味の鋭い技法は、他人の目の位置から自己を観察してみることを強要し、そのでき具合をみることである。・・・わたくしのやり方は、・・・「空中に浮かぶ眼」を患者にさせてみるやり方である。・・・具体的には、『いま、こうして話しあっているわたくしたちを、誰かが天井あたりからのぞいていたら、どんな印象をもつと思いますか』と問うたり・・・するのである。試みてみると、それまでの対話の質とは格段に低水準の答、たとえば「さあ・・・」という程度の答しか戻ってこないものである。そしてこの、「空中に浮かぶ眼」をうまく駆使できないという分裂病の病態は、発病のごく早期に認められ、寛解期(かんかいき:病気そのものは完全治癒してはいないが、症状が一時的あるいは永続的に軽減または消失すること)にいたってもなかなか回復しないものである。どうしてそうなるのか、わたしにはよくわからないが、おそらく、分裂病者にこの能力が欠如しているのではなくて、自己を二つに分解して、半分を空中に置くという作業は、精神状態を不安定にするので(引用者注:潜在意識によって)禁止されているのではないかという気がする」

「空中に浮かぶ眼」をイメージできるかどうかは、他人の目の位置から自己を観察する能力、つまり自分を客観的に見ることができるかどうかという、人間として非常に重要な能力とも密接に関係しているようです。

『あなたもいままでの10倍速く本が読める』は、少なくても自分の今までの読書を見直すのに役立つような気がします。さらに、この本を買うと、無料でビデオ教材を送っていただけます。ビデオが付いて1,300円とは安いと思います。これは、12万円の集中講座または、5万円の通信教育の宣伝のようです。ただ、そんなにお金を掛ける価値があるかどうかは分かりません。

また、NHKの「試してがってん」でも取り上げていた『速読の科学』(光文社 カッパ・ブックス、佐々木豊文著)も役立ちそうですが、こちらは技術的なことが中心となっており、かなりの訓練が必要なようです(2002年5月5日)。

お断り:この問題・解答で取り上げた書籍の出版社または著者と私の間には、利害関係は一切ありません。これらの本を取り上げたのは、読者の方々への情報提供だけを目的としており、これら書籍の出版社または著者が主催している、高額のセミナー等への参加を勧める意図は全くありません。セミナーに参加したが、全く効果がなかったというような可能性も考えられますので、セミナーへの参加は十分にお調べになってから、ご自分で判断されるようにお願いいたします。

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