第58回日本癌学会総会 記念3講演
   「環境とがん・予防と診断」

 ●病理診断の重要性・・・広島大学教授 田原栄一さん

 1999.10.20  朝日新聞

(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)
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病気の組織 細かく解析

 がんの最終診断をするのは「病理医」です。しかし、アンケートによると、病院内に病理医がいることを知らない人や、手術で取り出されたものを病理医が診断することを知らない人は、6割を超えています。
 患者さんはまず臨床の先生方に受診します。臨床医は、内視鏡などで見て病変が見つかると、それを病理医に提出します。
 病理医は顕微鏡で調べて病理診断書を作成します。臨床医は、その診断書に基づいて、「あなたはがんですよ」「がんではありません」と患者に説明するわけです。
 従って、私たち病理医は患者さんに接する機会はまずありません
 顕微鏡で組織を見ることによって、「この患者さんは予後が悪いんじゃないか」と予測することもできますし、「これは放射線治療が良いのではないか」といった治療指針に役立てることもできます。
 このように、病理医が行う病理珍断は、医僚現場で非常に大きな役割を果たしているのです。

 もう一つ、亡くなった方に対する病理解剖というものがあります。生前の医療行為の検証の場です。生前になされた診断は正確だったのか、治療法は正しかったのか、どのような副作用が起きたのか、そして、死亡の原因は何であるかということを調べます。生前の臨床データと解剖した際のデータを比べて、明日の正しい医療に役立てるのが目的です。

 私たちの側から見ると、病理解剖をきっちりと行える病院は、良い医療が行われていると言えます。
 インフォームド・コンセント(十分な説明のもとでの同意)の立場から、病理医が直接、患者や家族に病理珍断の説明を試みている病院もあります。実際に生検材料を患者さんに見せて説明するものです。

 病理医の目による病理診断と遺伝子診断を組み合わせた「分子病理診断」が、がんの個性診断です。転移しやすいがんであるかどうかや、化学療法や放射線治療法の感受性の有無などを、遺伝子を見ることによって知ることができます。

 1993年から広島市医師会臨床検査センターと共同で実践医療に分子病理診断を導入し、高い評価を得ています。

 同じ食道がんや胃がんでも、遺伝子変化を調べることで悪性度の違いが診断できます。また、顕微鏡だけでは分からないときでも、がんかどうか、あるいは家族性のがんかどうか、といった診断ができます。

 こうした個性診断に基づいた個別治療を行うことが、最も良いがんの医繚です。それはがんの再発・転移の予防にも結びつきます。21世紀には、患者の組織を採取してDNAチップなどを使えは診断がつく時代が来るでしょう。
 しかし、いかに分子工学、分子生物学が発達しても、人間が行う形態的な診断遺伝子診断とのジョイント(連携)の重要性は変わりません。
 質の高いがんの分子病理診断は、がん医療のレベルを高く保つ要なのです。



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