ビタミンC スポーツ選手の「守護神」
  〜抗酸化で、病気を予防/厚生省、所要量を倍増

 1999.10.18  朝日新聞

(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)
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抗酸化で、病気を予防/厚生省、所要量を倍増

 これから、スポーツを始めようとするなら、ビタミンC(VC)を十分にとって下さい。生活習慣病を防ぐ効果も最近、注目されています。  (鍛治 信太郎)


 東京都港区でスポーツ外来などのクリニックを開いている平石貴久さんは1996年初め、サッカーJリーグの柏レイソルのチームドクターになった。それから、選手の栄養指導では、特にビタミンCを沢山摂ってもらうよう心掛けてきた。

 選手は試合の前後とハーフタイムに「スペシャルドリンク」を飲む。ビタミンCが多いアセロラ果汁をベースにハチミツ、重曹、水、氷などを混ぜ、汗と同じ授透圧にしてある。
 ビタミンCは、節肉を骨に結合させているコラーゲンが出来るのに関わっている。「たくさん摂ることで、ひざのじん帯や節肉の腱が強くなる。チームドクターになった時には、11人がけがで入院していた。今はけが人も減り、一人一人の調子が上がっている」と平石さん。チームは'99/10/06日、初のナビスコ杯決勝進出を決め、第二ステージも現在三位と好調だ。
 大量摂取とじん帯や腱の強さとの関係は科学的に証明されたとはいえないが、最近、スポーツをする人はしない人に比べ、ビタミンCを多くとった方がいいという研究結果が発表されている

 国立健康・栄養研究所の樋口満健康指標研究室長は、大学生で、普通の人とトライアスロンの選手のビタミンCの摂取量を比べた。
 8人ずつの平均で、普通の学生は一日69mgだったが、選手は倍以上の151mgだった。ところが、血液100mリットルあたりの濃度は、普通の学生が1.1mgで、選手は厚生省が'99/6月に改定した「日本人の栄養所要量」で基準にしている0.7mgぎりぎりだった。

運動で消費増

 どうして、選手の濃度の数値が低くなったのか。 運動する時には、酸素を大量に吸い込む。すると、細胞や遺伝子を傷つけやすい形の酸素が増え、がんの引き金になったり、老化を促進したりする。ビタミンCはこの酸化を防ぐために働く
 運動量が多いスポーツ選手ほど、ビタミンCの消費量が多くなる。樋口さんは「スポーツをする人は一日、150〜200mg程度摂った方が良いのではないか」と指摘する。

 一方、改定された栄養所要量では、ビタミンCの所要量が、18歳以上で一日50mgから100mgに増えた。どれぐらい取るべきかは取材した専門家によって意見が違っているが、100mg以上という点では一致している。
 所要量の決定に協力したお茶の水女子大学生活環境研究センターの倉田忠男教授は「増えた理由は、ビタミンCに関する考え方が変わってきたため」という。
 体内の酸化物が糖尿病や高血圧など様々な生活習慣病にも関係していることがわかり、ビタミンCの役割が重視されるようになったのだ。

食事でが基本

 倉田さんたちは、様々な文献を調べ、血液100mリットル当たり0.7mgという濃度を基準にした。これは、健康な日本人の平均的な値で、この濃度を保つには一日100mg必要とした。
 実際の摂取量はどうか。絢13,000人を調べた'97年の国民栄養調査では、一日約130mgと一応、所要量を超えている。
 だが、佐賀大学農学部の村田晃学部長は、「調査はミカンなどが出回り、12月についでビタミンCがよく取れる11月にある。調理で損失する分も差し引かれておらず、実際に口に入る量は50mg程度」と指摘する。

 国民栄養調査によれは、ビタミンCの約半分を野菜、約三割を果物、約8%をいも類でとっている。錠剤などで取ればいいと思っている人がいるが、食事から摂るのが基本だ。果物や野菜には、ビタミンCと同様に酸化を防ぐ抗酸化作用を持つビタミンEやベータカロチンなどが含まれている
 体内の抗酸化作用は、これらが協力して働いている。ほかのものが足りないとビタミンCの消費が激しくなり、作用を十分に発揮できない。

 ビタミンCは熱に弱く、水に溶けて流れやすいから、調理に工夫が必要だ。果物や野菜は切って組織が壊れると特に流れ出し易いから、切った後は水に長くさらすようなことは止めた方がいい。


上限はないが

 また、サツマイモやジャガイモなどいも類は焼いたり、蒸しためしてもあまりビタミンCが減らない利点がある。女子栄養大学の吉田企世子教授の調査では、ほうれん草を5分ゆでるとビタミンCは60%失われるが、ジャガイモは40分蒸しても26%しか減らなかった。

 改定された栄養所要量は、摂取量の上限を決めていない。体内でビタミンCが多くなり過ぎると尿中に排出されるので、摂り過ぎても通常、害はないとされ、人間に一日1000mg以上与えても悪影響がなかったという実験報告がある。

 それでも、倉田さんは、「ビタミンCに限らず、何でも大量に摂りすぎるのは勧められない。」と、ビタミンCの製剤を一度に何十錠も飲むことなどは控えた方が良いという。食事から取っていれば、心配はないそうだ。



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