「腸内革命の威力」・・・

96.11.   月刊誌「ゆほぴか」'96/11月号

 
(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)

乳酸菌飲料などに含まれる「酸乳」の血圧を下げる効果が実験でわかった・・秦 葭哉

杏林大学教授 秦 葭哉  
1932年生まれ。56年東京大学教養学部卒業。62年慶応義塾大学医学部卒業。63年同大学医学部内科助手。米国のケース・ウェスタン・リザーブ大学内科研究員、ハーネマン医科大学心臓血管研究所内科講師を経て73年慶応大学医学部内科講師。80年慶応健康相談センター所長代行、慶応大学医学部助教授を経て90年より杏林大学医学部高齢医学主任教授。
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酸乳を2ヶ月のみ続けたら高血圧患者の血圧が下がった

 酸乳は、乳を発酵させて作る大変すっぱい液体です。発酵とは、細菌の作用によって糖類などが分解してアルコールや有機酸などを生ずる現象を指します。

 酸乳は、たん白質やビタミン、ミネラルなど、脂肪を除いた牛乳のほとんどの成分を含んでいるので、非常にバランスの良い栄養構成になっており、乳酸菌飲料の原液になります。乳酸を大変多く含んでいるのが酸乳の特徴です。

 乳酸は、体に有益な腸内細菌の代表で有る乳酸菌が作り出す物質です。この乳酸に腸の調子を整える整腸作用のほか、血圧を下げる効果が有る事を実験で確かめたので紹介します。


 先ず最初は、遺伝的に脳卒中を起こしやすい実験用のネズミに酸乳を与えてみました。すると、わずかながらコレステロール値が下がり、血圧も下がりました。

 そこで、人間も酸乳を飲めば血圧が下がるのではないかと、考えたのです。実験は、高血圧と診断された患者さん40名を2つのグループに分けて行いました。

 通常の血圧は、最大血圧が120mmHg前後、最小血圧は80mmHg前後ですが、この40名の平均の血圧は最大血圧が160mmHg、最小血圧95mmHgでした。

 1つのグループには酸乳を毎日100mリットル飲んでもらい、もう一つのグループには酸乳そっくりの液体を同様に飲んでもらいました。
 これは味は酸乳にそっくりですが成分は全く違うと言う疑似酸乳です。それぞれ12週間のみ続けてもらって、血圧、コレステロール値、体重などの変化を観察致しました。

 その結果、疑似乳酸を飲んだグループの場合はほとんど血圧が下がらなかったものの、酸乳を飲んだグループでは、ほとんどの人が5〜15mmHgほど下がりました。

 この実験で、酸乳に血圧を下げる効果が有る事が確かめられたのです。同時に、若干では有りますが、酸乳を飲んだグループでは血液中のコレステロール値も10m程度下がっていました。

酸乳の2つの物質が血管の収縮を防ぐ
 この研究内容を濃縮乳酸菌飲料の大手メーカーが分析し、酸乳の中に血圧を下げる2つの物質を見つけました。それは「バリン・プロリン・プロリン」「アイソロシン・プロリン・プロリン」と呼ばれる2つの物質です。

 ここで指摘されたメーカーから出た、酸乳飲料とは?
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 これらは、それぞれ3つのアミノ酸で出来たペプチドです。ペプチドとはたん白質を構成する主要なアミノ酸が結合したものです。

 2つのペプチドは酸乳を作る際に用いた微生物が牛乳のたん白質を発酵させるときに出来たと考えられます。

 血圧が高くなる1つの大きな要因が血管の収縮です。血管の収縮は、アンジオテンシン交換酵素と呼ばれる物質の働きによって行われます。
 この物質は血管の表面細胞に付着して血管を収縮させるのですが、酸乳に含まれている先の2つのペプチドは血管の細胞にいち早く付着して、アンジオテンシン交換酵素の働きを阻止するのです。その結果血圧が下がるのです。

 ほかの大手乳酸メーカーも酸乳を使って同様の研究を行い、血圧が下がる事を確認しました。

 こちらは酸乳を粉末にしたカプセルを飲んだ高血圧患者14人のグループとを、疑似酸乳のカプセルを飲んだ14人のグループを比べたものです。
 12週間後の結果は、最大血圧が169mmHgから160mmHgに、最小血圧は100mmHgから94mmHgに下がりました。こちらの研究では、ペプチドは見つかっていません。

 しかし、ラクトバチルス・カゼイル(このメーカーが発酵に用いた乳酸菌の1種)という菌を構成する成分が、血圧を下げるらしい事は分かっています。

乳酸菌飲料は食後に飲むと効果が高い

 血圧を下げる値は10〜20mmHgと薬に比べてわずかでは有りますが、酸乳に血圧を下げる働きがある事が明らかになりました。

 この程度の効果では、高血圧の人は酸乳だけを飲めば良いといというほどの切れ味では有りません。しかし、高血圧の治療薬では下がり方が足りない人などがその補助として取り入れるには、とてもいい働きをしてくれるのです。

 コレステロール値が下がるのに酸乳のどんな成分が作用しているのかに付いては、いまだ解明を待つ段階です。とはいえ、酸乳は腸内細菌のバランスの崩れからくるさまざまな障害の緩和にも有効なので、健康維持を目的に飲むのも良いでしょう。

 ただし、酸乳には非常に大量の乳酸が有る為、とてもすっぱいものです。濃縮乳酸菌飲料を薄めないで味を見てもかなりすっぱいものですが、これは砂糖が入った上に乳酸の1/40程度の濃度です。酸乳の酸味ははるかにすっぱいのです。

 酸乳を市販のヨーグルトや乳酸菌飲料で代用するにはかなりの量が必要ですが、乳酸菌飲料やヨーグルトを1個ないし1本でも、毎日飲む事が大切です。

 食後は胃酸の出が薄くなっているので乳酸菌が腸に届きやすいので、朝食後、高血圧の薬と一緒に飲むと良いでしょう。
 もちろん、高血圧の治療には太らないようにする、イライラしない、睡眠時間をしっかり取るなどの注意が不可欠です。
 食事も塩分を1日10g以下にする事を心がけ、その上で甘味飲料水ではなくて乳酸菌飲料を飲むようにするといいでしょう。
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