「腸内革命の威力」・・・

96.11.   月刊誌「ゆほぴか」'96/11月号

 
(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)

番茶には食中毒の原因となる腸内の悪玉菌を減らし、
    善玉菌を増やす作用がある・・青井暢之・大久保勉

太陽化学(株)総合研究所 青井暢之  
ティーサイエンス&テクノロジーラボ主任研究員。
1957年、鹿児島県生まれ。85年琉球大学大学院農学研究科を修め、
太陽化学(株)入社。天然物の有効成分の評価、特に微生物関連が専門。
お茶に関する未知のパワーの解明を目指す。
太陽化学(株)総合研究所 大久保勉  
ティーサイエンス&テクノロジーラボ室長・副主席研究員。
1954年、三重県生まれ。55年、名古屋大学大学院工学研究科修士を修め、
太陽化学(株)入社。天然物の抽出、精製が専門。
機能性食品としてのお茶の研究、啓蒙に励む。
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お茶の苦味成分が体中で良い働きをする

 「日常茶飯事」という言葉が有るように、昔からお茶は日常に深く親しまれている存在です。私達の研究所の有る三重県は全国第3位のお茶所という事もあり、食生活の中でお茶を飲む事の意義と生理的な機能について調べて見ました。
 その結果、お茶には健康と深い関りが有る事が判りました。私達が注目したのは、お茶に含まれるポリフェノールという物質です。これはお茶の苦みや渋味の元になっている成分で、身体のいたるところで良い働きをすることが判りました。

 お茶と人間の最初の接点は口の中です。そこで口の中でポリフェノールがどのような働きをするかを調べました。

 すると虫歯の原因となる細菌を抑制し、虫歯を予防する効果が確かめられました。

又、歯垢の付着とポリフェノールの関係も調べて見ました。完全に歯垢を取り除いた人に1週間、口を水でゆすぐだけで歯を磨かないでもらいました。用意した水は2種類です。
 1つは普通の水、もう一つはポリフェノールを加えた水です。すると、普通の水ですすいだグループに比べて、ポリフェノールを加えた水ですすいだグループの方が顕著に歯垢の付着が防げたのです。

 ポリフェノールは、尿毒症の症状を軽くする働きが有る事も判っています。

 体内の有害な物質は血液中からキャッチされて、尿として排泄されています。これは腎臓の働きによる物ですが、この働きが低下すると老廃物の排泄が十分でなくなり、全身の臓器の働きが低下します。これが尿毒症です。

 尿毒症の症状の程度は、その原因物質であるメチルグアニジン(MG)の量で測ります。大学病院との共同研究により、人工透析を受けている患者さんにポリフェノール入りのゼリーを試験的に6ヶ月間食べてもらいました。

 その結果、50人中41人が血液中のMG量が減少する事が確認できました。このゼリーについては、今後研究を重ねて、商品化できればと考えています。

ポリフェノール摂取には熱めに入れた番茶が最適

 このように、ポリフェノールは最初に摂取される口の中の状態と、最終的な排泄にかかわる腎臓の働きを改善する事が証明されました。
 その上、大腸に住む腸内細菌についてもポリフェノールが作用する事が判りました。腸内細菌とポリフェノールの関係についての実験は、2種類の菌を選んで行いました。

 1つは、体に有益な善玉菌の代表で有るビフィズス菌、そしてもう1つは、体に害がある悪玉菌の代表で有るクロストリジウム菌です。

 これらの菌に対してのポリフェノールがどのような働きをするかを調べたのです。
 すると、大変興味深い結果が出ました。ポリフェノールを含んだ培養液の中でビフィズス菌を育てた所、どんどん菌が増えました。
 これに対して、クロストリジウム菌を観点の上に培養し、ポリフェノールを含んだ培養液を染み込ませた紙を乗せた所、紙の周りには繁殖していませんでした。

 更に、人がポリフェノールを摂取した場合は、腸内細菌がどのように変化するも調べてみました。

 8人の健康な男女にポリフェノール1.2g入りのカプセルを28日間飲んでもらい、その間の便を調べたのです。

 クロストリジウム菌の一種で、食中毒の原因となるウェルシュ菌は、実験前に平均で10の6乗も有りました。それが、ポリフェノールを摂取し始めると、その数が減少しました。2週間後には10の4乗近くまで減っています。

 つまり、100分の1にまで減少したのです。摂取を止めると増加している事から、ポリフェノールが作用している事は明らかです。クロストリジウム菌がポリフェノールの作用で減少する理由は解明されておらず、私たちは今、この謎に取り組んでいる所です。

 一方、ポリフェノールを摂取してから便の酸・アルカリ度(pH)は、酸性へと傾き始めており、これは腸内でビフィズス菌などの善玉菌が優勢になり始めた事を示しています。このように、ポリフェノールには善玉菌を増やし、悪玉菌を減らす作用がある事が明らかになりました。

 実験には、緑茶からポリフェノールを効果的に抽出した当社の製品「サンフェノール」を用いました。
 腸内細菌の改善を目的にポリフェノールを摂取するには、かなり濃いお茶を1日に10杯ほど飲む必要が有ります。普通の濃さのお茶であれば1日に20敗以上飲まなくてはなりません。

 ここで紹介したような効果を期待してお茶を飲むには少々無理が有りますが、なるべく毎日飲んだ方がいいでしょう。お茶を用いて腸内細菌の状態を改善するには、たまに大量に飲むのではなくて、日常的に飲む事が大切です。

 ポリフェノールの量は、お茶の種類によって異なります。ポリフェノールはお茶の葉100gに約13.8mg含まれていますが、発酵させると別の物質に変化してしまうのです。

 半発酵の烏龍茶は半分に、発酵茶の紅茶はさらに減少してしまうのです。ポリフェノールが多いのは緑茶です。特に日光に良く当たった番茶にはポリフェノールが豊富です。中でも夏の日差しをたっぷり浴びて育った秋番茶が一番です。

 お茶は薬として日本に渡って以来、1000年以上も日常的に飲まれてきた安全な飲み物です。積極的にお茶を飲む事でポリフェノールが摂取できるのですから、こんなにうれしい事は有りません。


関連項目」・・・「お茶や高麗ニンジン、腸内細菌に作用成分 善玉増やし悪玉抑え がん予防の可能性も」('89.03.27.朝日新聞)


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