放医研などがマウスの腸内細菌からがん転移抑制成分を発見

 1988.09.16 朝日新聞 朝刊

 
(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)
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 癌の転移を抑える腸内細菌をマウスの腸から分離し、その細菌の細胞壁に有効成分があることを放射線医学総合研究所の安藤興一室長、松本恒弥主任研究官、東大医学部外科(森岡恭彦教授)の治部(じぶ)達夫医員、東大医科学研究所の金ケ崎士朗教授や、富山医科薬科大のグループらが突き止めた。

 癌による死亡の多くは、悪性化した癌細胞の転移が原因といわれており、今回の成果は将来、臨床的に転移を防ぐ方法の開発に道を開くものとして注目され、20日から東京で開かれる日本癌学会総会で発表されるとの事。

 放医研の安藤興一室長、松本恒弥主任研究官らは、
 マウスによる実験として、有る種の癌細胞を注射すると簡単に他の部位に転移するのに、マウスの内蔵に放射線を照射してから癌細胞を注射してもその転移が1/10に減少する事に気付いた。

 転移が最も抑えられる時期は、放射線を照射してから約1週間後であった。この時のマウスの腸内細菌を調べてみると、乳酸菌が減り大腸菌の一種のエンテロバクター・クロアケーという細菌が1000倍にも増えていた。

 この細菌だけを注射しても転移は抑えられるが、大腸菌や乳酸菌だけを注射した場合は転移は抑えられない事より、放射線を当てる事により、腸内細菌のバランスが崩れて、急激に増えたエンテロバクター・クロアケーが体の組織に入ることが、転移の抑制に関係していると考え、この細菌を殺してから体内に入れても転移が抑えられる事より、この細菌の体を作っている成分が原因らしい事を突き止めた。

 そこで東大医学部外科(森岡恭彦教授)の治部(じぶ)達夫医員、東大医科学研究所の金ケ崎士朗教授と協力して、細菌を分析した。
 その結果、その細菌の細胞壁の外側の膜に多く含まれているリポ多糖類が有効成分であることがわかった。

  このリポ多糖類をマウスに与えると、癌細胞などを殺すナチュラルキラー細胞というリンパ球が5倍にも増えるので、これが転移を抑える仕組みではないかと、安藤さんらは考えているとか。

 一方、富山医科薬科大の小西健一教授(細菌免疫学)らのグループは、ユーバクテリウムという細菌に転移を抑える働きが有り、この細菌の成分を分析したところ、細胞壁だけを取り出して与えても同様な効果があることを突き止めたとの事。

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