動脈硬化防止など多彩な働きを持つエイコサペンタエン酸(EPA)を高率に作り出す新種の細菌を、財団法人相模中央化学研究所と東ソー(旧・東洋
曹達工業)の研究グループが、サバやアジなどの腸内から発見した。
EPAは医薬品や健康食品として期待されてはいるが、魚臭さや精製の難しさ等が問題になっていて、今回発見された海洋細菌を利用すれば、高純度のEPAを安く作ることが出来そうとのことで、この研究成果は29日に発表された。
魚をよく食べるエスキモーに動脈硬化が少ないことから注目されるようになったEPAは、脂肪酸の仲間でサバ、アジ、イワシなど背の青い魚に多く含まれており、血栓の形成を抑えたり、血液中のコレステロールを低下させて動脈硬化を防ぐ等の効果が知られている。
EPAはもともと食物連鎖で魚に取り込まれると考えられ、現在、主に魚油から抽出している。
しかし、この方法では商品化が難しいため、前記の研究グループは、フグ毒がフグの腸内細菌によっても作られることをヒントに魚の腸内細菌に注目して、様々な魚から約7000種類の微生物を分離し、調査を行った。
その結果、百種類以上の細菌がEPAを生産していることが明らかになった。
しかも、元々EPAを多く含む魚から、より多くのEPA産生菌が分離され、魚のEPAの一部が腸内細菌に由来する可能性を示した。
この細菌は普通の培養条件で高率よく増殖する。また、この菌が作る様々な脂肪酸
のうちEPAが 40%も占め、分離、精製がし易いことも判った。
橋本周久・東大農学部水産学科教授(水産物利用学)の話では、今回の細菌を使えば、純粋なEPAをかなり楽に取り出せる可能性がある。
EPAは魚の成長にも大事で、海産魚を養殖する時のエサの改善にも役立つと考えられ、人間はもとより、魚にとっても重要な研究になりそうだ。