新潟で限定販売 「抗がん」ヨーグルトが出来た!   

 2000.06.10号 週刊現代

(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)
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新潟で限定販売/「抗がん」ヨーグルトが出来た!

 「発ガン物質を与えた大腸菌などに、今回開発した植物性乳酸菌〈ラクトバチルス・カゼイ・カメダ〉を投与すると、抗変異原率(ガンの発生などを抑える確率)か90%以上になりました。
 つまり植物性乳酸菌が、90%以上の確率で発ガン性を抑えることが判明したのです」(東京農業大学応用生物科学部・岡田早苗教授

 ガン予防に効果が高いとされる、画期的な研究がまとめられた。

 これまでの牛乳などを元にした乳酸菌ではなく、植物で殖える乳酸菌に、高い抗ガン作用が認められたというのだ。 しかも、その植物牲乳酸菌から作った「植物性乳酸菌ヨーグルト」か、新潟県で地域限定発売され、人気をよんでいる。

 '81年に国内の死因第1位になって以降、ガンによる死亡率は年々増加の一途をたどっている.もちろん、働き盛りのサラリーマン世代の死因の1位のガンだ。
 それだけに、冒頭の岡田教授らによってまとめられた研究は注目に値する。
 岡田教授は、過去30年間、植物性乳酸菌の研究を行ってきた、この分野の第一人者。食物に直接噴霧して、食中毒菌の0−157を抑制する植物性乳酸菌「乳酸菌カイワレ」の開発にも成功している。その岡田教授が、8月に日本食品科学工学会で発表予定という「植物性乳酸菌の抗変異原性」の研究内容を、さっそく紹介していこう。

植物性乳酸菌という新発想

 乳酸菌というと、まっさきに思い浮かぶのが、チーズや牛乳製のヨーグルトなどに使われている動物性乳酸菌だが、乳酸菌は、実はこの1種だけではない。ほかに、ミソや醤油、日本酒、漬物など、日本人にはおなじみの食品の発酵に使われている植物性乳酸菌と、人間などの腸に棲息する腸内乳酸菌がある。

 岡田教授らは、これら3種の乳酸菌のうちの植物性乳酸菌に注目。米やヌカ、コウジ、酒粕などの米加工品から乳酸菌を分離し、4−NQO(発ガン物質)に対する抗変異原性(抗ガン性)を調べた。

 「大腸菌やサルモネラ菌に4−NQOを与えると、変異を起こします。その変異した細菌が、人間でいえばガン細胞にあたるわけです。そこで、4−NQOを与えて培養した菌に、植物性乳酸菌を投与したとき、どれくらい変異が抑制されるかを調べたのです。結果は、90%以上の確率で、発ガン性が抑えられました」(前出・岡田教授)

 試験は「エームズ・テスト」と呼ばれる方法で行われた。これは、化学物質の「突然変異性」を調べるための試験管内テストで、ガン細胞を死滅させるかどうかのテストではない。ただし、突然変異は、ガン発生の主要な要因のひとつと考えられているから、突然変異性のテストは、発ガン性を調べる上での重要な参考資料と見なされているのだ。

 動物性乳酸菌から作られたヨーグルトなどが、ガン予防に有効だということは、すでによく知られている。
 たとえば胃ガン。その原因のひとつにピロリ菌があり、ヨーロッパの疫学調査では、ピロリ菌感染者は、非感染者より最大で6倍も胃ガンにかかるリスクが高いとの結果が出ているが。本誌4月15日号で紹介したように、ヨーグルトには、このピロリ菌を殺傷する作用がある。また、ガンを誘発する食物の焼き焦げも乳酸菌で分解されて、無毒化されることがわかってきたという。

 このように、乳酸菌の働きは、実に偉大なのだ。「毎日100億から1000億ぐらいの乳酸菌を摂ることで、腸の細胞壁にある免疫細胞が刺激され、身体全体の免疫力が高まります。また、細胞壁には発ガン物質を吸着する性質もあるので、大量に乳酸菌を摂ることで、それらを無力化し大腸ガンにかかり難くする作用もあります」(東京大学・光岡知足名誉教授)

 光岡名誉教授の解説は、動物性乳酸菌についての話だが、岡田教授らは、同じ働きが植物性乳酸菌にもあることを立証した。それどころか、日本人にとっては、動物性より植物性乳酸菌のほうが、効果が上がる可能性すらあるというのである。

「私どもの研究では、植物性乳酸菌は、動物性のものと同等か、それ以上に発ガン性を抑える効果が見られました。 植物性の利点はそれだけではありません。日本人が動物性の乳酸発酵食品を日常的に食べだしたのは昭和30年代で、まだ歴史が浅いのですが、ミソや醤油などに含まれる植物性乳酸菌の歴史は長く、日本人の腹には、植物性のほうがなじむのではと考えられるのです。また、植物性乳酸菌は、動物性より耐性があるので、腸内でも、動物性乳酸菌より活発な効果を上げるのではと期待しています」(前出・岡田教授

 この効果に目をつけたのが、米菓などでおなじみの亀田製菓だ。前出の岡田教授とともに、農林水産省食糧庁の委託事業として研究をスタートし、〈ラクトバチルス・カゼイ・カメダ〉と名付けられた、米で殖える植物性乳酸菌の分離に成功。商品名もそのものスバリの「植物性乳酸菌ヨーグルト」(定価・120円)を今年3月21日から、新潟県内で発売した。
 売り上げは1カ月で4000個と、好調なすべりだしで、早ければ10月に、全国発売される予定だという。 「成分は米と生乳と砂糖の3種類のみで、香料や安定剤は一切使っていません。米と生乳を、当社の乳酸菌でゆっくりていねいに発酵させているので、クリーミーでいて、しかもスッキリした味わいに仕上がっています。ヨーグルトの臭いがダメという方でも大丈夫だと思います」(亀田製菓研究室長・渡辺紀之氏)

 渡辺氏によれば、同製品に含まれる植物性乳酸菌〈ラクトバチルス・カゼイ・カメダ〉の量は、商品1個(120g)あたり約1000億なのだという。抗ガン効果に必要とされる数値はクリアしている。

高まる大腸ガン予防への期待

 実際に食べてみた人の評判はどうか。 「他のヨーグルトと比べても、なんら遜色のない味です。食感はとてもクリーミー。米から作ったものとは思えなかつた。それに、胃陽の調子がよくなりました。とくに便秘に対する効き目は抜群だと感じました」(33歳・OL)

 本誌記者も、実際に食べてみた。l確かにヨーグルト独特の臭いは薄め。従来のヨーグルトよりトロ味があり、これが米を主原料にしているとは一見分からない。

 先のOLの言葉にもあるように、このヨーグルトは整腸作用にも優れているようだ。岡田教授が指導する東京農大菌株保存室と亀田製菓研究室の共同チームは、23〜48歳の女性27名を被験者に、6週間にわたって、植物性乳酸菌が便通に及ぼす効果も調べた。

 その結果、便通が週に4回以下の「便秘傾向者」19人のうちの90%以上が、排便回数が増えた」便が軟らかくなったなど便通が改善されたと報告し、被験者全体の50%以上が、便の量が増えたと答えている。  整陽効果があるということは、大腸ガン予防への期待も高まってくる。

「乳酸菌には、タンパク質が腸内で消化・吸収される過程で生まれる発ガン物質を抑制する働きがあります。発ガン物質は、腸内の悪玉菌(硝酸菌)の働きで作られるわけですが、この菌は、肉をたくさん食べると増える傾向がありますし、便秘状態でも、活性化するんです。乳酸菌は、この悪玉菌の働きを抑えます。だから、乳酸発酵食品を食べる習慣をつけるのは、とてもいいことなんです」(東京農業大学教授・小泉武夫氏)

 岡田教授らが突き止めた植物性乳酸菌の効果は、現時点では試験管内での実験データでしかない.しかし、熱に弱い動物性乳酸菌よりも熱に強い〈ラクトバチルス・カゼイ・カメダ〉には、人体内での抗ガン活動について、大きな期待が寄せられている。

 ガンを”食べて予防する”時代は、着実に近づいているようだ。




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