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高過ぎ低過ぎても悪い、偏食避けてバランスを「コレステロールが高くなって心配だ」。健康診断の後、そんな声をよく耳にします。
生活習慣病を招く「悪玉」イメージが定著していますね。でも、食生活面の注意などについては、間違った思い込みをしている人も少なくないようです。正しい知識を専門家に聞きました。(鍛治 信太郎)
「オリーブオイルを毎日コップ一杯ずつ飲んでいます」 「シソのジュースを一日どれぐらい飲めば良いか、計算してください」
東京都立川市の健康会館で開かれた高脂皿症予防講座。中高年の女性たちの言葉に、講師のひとりで管理栄養士の金子明美さんは、びっくりした。
「テレビなどで『コレステロール値を下げるのにいい』と紹介されると、極端に走ってしまうんですね」
コレステロールは脂質の一種だ。細胞膜の重要な成分であり、胆汁酸や性ホルモンの材料にもなる。しかし、酸化するなどして血管の内側にへはりつくと、動脈硬化を起こしやすくなる。だから「悪玉」のイメージが強い。
日本動脈硬化学会は、血清100mLあたり200mg未満を「適正域」、220mg以上を「高コレステロール血症」としている。
オリーブ油には、コレステロール値を下げる効果があるといわれるオレイン酸がたくさん含まれている。
「でも、オリーブオイルも油。とり過ぎて総力ロリーが増えてしまったら、高脂血症対策として意味がない」と金子さん。
魔法のようにコレステロール値を下げる食べ物や飲み物はないのだ。
歩いて減らす
講座は、一日の総力ロリーを1600Kcalに抑えた献立や、運動の実習など計十回。六十歳の主婦は指導を守り、毎日一万歩を目標に歩いた。
努力の甲斐あって、前年の健康診断時の血清100mLあたり276mgから、228mgに下がった。体重も約8Kg減り、「動きやすい感じがします」と喜ぶ。コレステロール値は、運動不足になりがちな三十代前後から、少しずつ高くなる。女性は女性ホルモンが作られにくくなる時期、つまり更年期になると、急に上昇する傾向がある。
コレステロールを気にするあまり、卵や肉などを食ベない人もいる。だが、「食べ物などでとる量の五倍ぐらいが肝臓でつくられている」と、女子栄養大学助教授の三浦理代さん。あれは食べない、これもダメと力んでみても、あまり効果的ではなさそうだ。比重が大きいのは、食べ過ぎや肥満の影響だ。成分が炭水化物やたんはく質など何であれ、余分なエネルギーは脂質の形で体内に蓄積される。肝臓がよけいなコレステロールをつくることにつながる。
もう一つは、食事でとる油脂の種類の偏り。米国人の場合、バターなど乳製品のとり過ぎが心臓病などの危険を増やしているとされる。日本でも一時、動物性脂肪が目の敵にされ、植物性の油がもてはやされる傾向があった。
日本は米と別
しかし、「米国でいわれていることは、平均的な食生活を送っている日本人には当てはまらない」と、日本ウエルエージング協会の会長を務める元東京都老人総合研究所副所長の柴田博医学博士(老年学)。
たしかに乳製品や肉には、コレステロールの増加につながるといわれる飽和脂肪酸が多い。けれど、日本人は一般に、肉や魚、卵、穀類、野菜などをバランスよく食べている=グラフ参照。
このバランスは理想的で、それを保ったまま総力ロリーを調節するのが肝心だという。
「むしろ、無理なダイエットや偏食でコレステロール値が低すぎる人は、上げるように食生活を改善した方がいいのです」
ハワイの日系人男性8000人を対象にした米国の疫学調査では、コレステロール値が高くなるほど、心臓の病気で死亡する危険性が増えたが、がんの死亡率は減っていた。
脳卒中などほかのさまざまな死因を重ね合わせてみると、210〜239mgの人たちの死亡率がいちはん低かったという。
「高すぎても低すぎても良くない。年齢や性別によって違いがあるが、おおまかにいって180mg〜240mgを目安にしたい」と、柴田さんは話している。
東京都立川市の高脂血症予防講座の献立例(1人分)。手前左は豚肉のみそソース(242Kcal)、右は若竹煮(58Kcal)、後ろ左は、はい芽めし(206Kcal)、右は春キャべツの浅漬け(21Kcal)。
肥満のもとになる油のとりすぎを控え、野菜をたっぷり使う=赤掘料理学園(東京郡文京区)・赤掘博美副校長作成 写真・近藤悦朗
間違って思い込んでませんか?・コレステロールの知識
(日本ウエルエージング協会・柴田会長による)
- 「不要な老廃物だ」
コレステロールは、細胞膜やある種のホルモンの材料となり、体に必要なもの
- 「血中コレステロール値が低いほど、体にいい」
値が低すぎると、血管が弱くなり、脳卒中になり易い。がんによる死亡率が高いという調査結果がある
- 「値が高めの人は卵や肉を食べてはいけない」
黄身にコレステロールが含まれているが、卵にはコレステロール値を下げる物質もある。栄養のバランスを考えると、たいていの人は1日1個くらいは食べた方がいい。肉食を極端に制限すると、ほかでは得られにくい貴重な栄養源が不足し、老化を早める危険がある
- 「イカ、タコ、エビ、貝を食べると値が増える」
古い測定法(比色法)では、よく似た別な物質とコレステロールとの区別がつかず、イカなどに相当多く含まれるとされていた。しかし、新しい測定法(酵素法)で調べると、含有量はかなり下がった。魚介類を多く食べる漁村の人の値は都市部の人よりむしろ低めという調査もある。
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