ボクの名前は、如月瞬。よく女の子に間違えられるけど、これでもれっきとした男だよ。
ボクの通ってる私立大原高校は結構歴史のある男子校で、白をベースとしたスーツタイプの制服がすごく人気。
1年生のボクらは青色のレジメンタルタイをつけて、柊をかたどった青色の学年証を胸に付けているんだよね。
入学してから、もうじき1年が経ちそうな、今日は3月14日。
今日はホワイトデーで、しかもボクとセンパイがつきあい始めてからちょうど一ヶ月の記念日!
2月14日のバレンタインデーの日、憧れの逢坂センパイにチョコレートを渡したボクは、思い切って「つきあって下さい」っていったんだ。そしたらセンパイ、すっごく綺麗な長い髪をかきあげながら、にっこりと笑って「うん。いいよ」って、いってくれたんだ。

あっ、そうだ。逢坂センパイの紹介をするね。
ボクがセンパイを初めてみたのは、体育館でバスケットの練習をしているところだったんだ。
身長は180センチ以上あって、すごく大きいんだ。並んで歩くと、ボクはセンパイの肩までしかない。
体は痩せてるように見えるんだけど、結構筋肉がついていて、ダンクシュートも楽々できるんだ。
だから、去年のインターハイもベストエイトまで残ったぐらい、すっごくバスケットがうまいんだ。

キャプテンの仕事がすっごくいそがしそうなんだけど、センパイはボクと同じ放送部も掛け持ちしていて、昼休みになるとふらりと放送室に来てサウンドジョッキーをしながら好んでプログレや70'sロックをかるんだ。
 放送用の機械の使い方がなれてきて、2年の先輩に好きな曲をかけても良いよ。って初めていわれた日、ボクは一番のお気に入りのエリック・サティをかけたんだ。

「へぇ、すごいな。サティ。聞くんだ?」って、不意に後ろから声をかけてきたのがなんと、逢坂センパイ!!そのときは緊張して何を話したか覚えてないんだけど、最後にセンパイが「如月瞬か。よい名前だね」っていって、にこっと笑ってくれたのだけは、今でもすっごくおぼえてる。

 ボクとセンパイがつきあってることは、みんなには内緒にしてあるんだ。だって、センパイすっごくかっこいいし、他の学校の女の子にも人気があるからね。
 そんなわけで、今日もセンパイと放送室で会うことになってたんだけど、行ってみたら屋上に来てくれっていう紙が一枚、置いてあるだけだった。

 急いで屋上まで駆け上がって重い扉を開けると、設置してあったベンチに先輩は座ってて、こっちを見て手を振った。
「今日は何の日か、知ってる?」って、センパイがボクの目を見て云うんだ。ボク、すっごくどきどきして「あ、あの、ホワイトデーですか?」つい、目をそらしていっちゃった。
 そうしたらセンパイ、ベンチの後ろからアコースティックギターを取り出して、サティのジムノペディを歌ってくれたんだ。
 ジムノべディ、ボクの一番好きな曲ですっごく感動しちゃって、曲が終わってすぐ、センパイに抱きついちゃった。

「あれ?おまえら、そういう関係だったの?」
 いつの間にかボクの後ろにいたのは、センパイとのバスケット部のキャプテン争いに敗れた早見先輩だった。
「へぇ・・・逢坂、おまえがねぇ・・・」
 センパイは何も云わないで苦笑してるけど、ボクはなんだか怒りがこみ上げてきた。
「男同士だって別に良いじゃないですか!」
「別に、悪いとは云ってねぇよ。ただ、普通屋上で逢い引きするかなぁと思ってねぇ」
 たぶん、キャプテンになれなかったことを根に持ってるんだろうけど、すっごくいやらしい言い方でニヤニヤしてこっちを見てるんだ。
「逢い引きだなんて、そんな言い方しないで下さい!」
「へぇ・・・そう?」
「ボクたちは、プラトニックな関係です!!」


すると、彼はこう云った。
「プラトニックねぇ。まぁ、少なくともプラトンは君たちに賛成だろう」
と。

これが、究極のアメリカンジョーク。


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