2001年12月 - 傑作多数…来年持ち越しも多数


「ムーラン・ルージュ」- Moulin Rouge -☆

 バズ・ラーマ監督、ニコール・キッドマン、ユアン・マクレガー、ジョン・レグイザモ、ジム・ブロードベント、リチャード・ロクスボロウ。

 1989年パリ、ボヘミアン革命真っ盛りのモンマルトルへやって来た作家志望のクリスチャン(ユアン・マクレガー)。知り合ったトゥールーズ・ロートレック(ジョン・レグイザモ)は高級娼婦サティーン(ニコール・キッドマン)を主役としたショーを計画しているが、ムーランルージュのオーナーのジドラー(ジム・ブロードベント)による経営は火の車。資産家の公爵(リチャード・ロクスボロウ)から資金を引き出そうとする…。
 
 面白かった。前半は目くるめくエンターテイメントの世界。サティー登場のショーの豪華さは見事、また公爵へのプレゼンのカンカンは傑作。みんなが楽しんでいるのが判る。キッドマンのコメディエンヌとしての才能が見える。美人がコメディをやるとこれほど様になるとは。後半は物語重視で、娯楽性は落ちるがしっとりとした面白さ。
 
 「ロミオ+ジュリエット」は狙いは面白いにしても、成功しているとは思えなかったが、音楽でも影像でもストーリでも、この映画はすべてに成功している。

「ムーラン・ルージュ」 Official Website
「Moulin Rouge」Official Website


「殺し屋1」

 三池崇史監督、山本英夫原作、浅野忠信、大森南朋、塚本晋也、寺島進、塚本晋也、SABU、松尾スズキ。

 泣き虫のイチ(大森南朋)は、実は特殊スーツを身にまとった無敵の殺人マシーン、そして変態でサド。謎の男ジジイ(塚本晋也)はイチを操り、マゾのヤクザの垣原(浅野忠信)たち新宿歌舞伎町のヤクザ組織に抗争を起こし潰そうと図る。垣原は究極的なサディスティックな殺し屋イチに胸を躍らせる…。
 
 基本的には単行本10巻の長い物語そのままをうまく詰め込んでいる。基本線以外は三池監督が好き勝手にやっている感じ。垣原に比重が大きい所や、ジジイの味が出てない所など、原作から失われている部分が大きいけど、ま、しょうがないかな。しかし「漂流街-The Hazard City」に比べると仕事が雑な感じがする。もうちょっと救いがあってもいいんだけど、余りに殺伐とした印象。

「殺し屋1」Official Website


「千年の恋 ひかる源氏物語」

 堀川とんこう監督、早坂暁原作、吉永小百合、天海祐希、常盤貴子、高島礼子、かたせ梨乃、南野陽子、細川ふみえ、中山忍、風間トオル、松田聖子、竹中直人。

内覧である菅原道長(渡辺謙)の要請で、紫式部(吉永小百合)は越前の国から京の都へ移り、道長の娘の彰子(水橋貴己)の教育係となる。道長の兄道隆もその娘定子に清少納言(森光子)を教育係につけ、帝の御子を産ませるために躍起になっている。紫式部の紡ぐ源氏物語、桐壺帝の子の光源氏(天海祐希)の恋の物語と交錯して話は展開する…。

 これほど贅沢に役者を使っている映画も少ないが、まるで活かされてはいない。ともかく天海祐希の素晴らしさだけは際立っている。凛とした立ち姿だけで画面が引き締まる。
 それに比べ他の役者のお粗末な事。細川ふみえが明石の君絶世の美女として出てくると絶句だし、揚げ羽の君の松田聖子に至っては存在意義が不明。岸田今日子などはいい味を出していたけど。
  
→ 「千年の恋 ひかる源氏物語」Official Website


「山の郵便配達」- 那山那人那狗- - Postmen in the Mountains - ☆

 フォ・ジェンチイ監督、トン・ルゥジュン、リィウ・イェ、ジャオ・シィウリ、ゴォン・イエハン、チェン・ハオ 、リ・チュンホア、ヤン・ウェイウェイ、ダン・ハオ、ホァン・ウェイ、ワン・ユイ。
 舞台は1980年代の中国湖南省西部の山間地帯。一日約40km、二泊三日で120Kmの険しい山道を歩き集配をする郵便配達。初老の父は仕事を息子に譲ったが、最初の仕事に愛犬の次男坊と共についていくにする…。

 面白かった。父と息子二人の三日間、非常に単純な話ではあるが心に深くしみる映画。広角を活かした影像の中国の山間部も美しい。何百年も変わっていない様な人々の素朴な生活もいい。
 1999年中国金鶏賞、1999年モントリオール映画祭観客賞など。見せ場は次男坊のダイビングキャッチかな…。


「オー・ブラザー」- O Brother,Where Art Thou ? - ☆

 ジョエル・コーエン監督、イーサン・コーエン製作、ジョージ・クルーニ―、ジョン・タトゥーロ、ティム・ブレイク・ネルソン、ホリー・ハンター、ジョン・グッドマン。

 舞台は1930年代、ミシシッピー州の片田舎、エヴァレット(ジョージ・クルーニー)、ビート(ジョン・タトゥーロ)、デルマー(ティム・ブレイク・ネルソン)の三人は、工事によりダムの底に沈んでしまう、隠された120万ドルを目指して脱獄する…。

 今までのコーエン兄弟の中では一番好き、面白かった。ちょっとハズしたストーリ展開は予想もつかず、何とも不思議な魅力にあふれている。
 古代ギリシャの叙事詩「オデュッセイア」を元にしているらしいが、そんなの後から聞いてもまったく結びつかない(^^;)。冒険の末、最後に妻と子供に会うって点では一緒か。
 ポマードにこだわる伊達男で口が達者なエヴァレット役のジョージ・クルーニーはいい演技だった。

「オー・ブラザー」 Official Website


「アメリ」- Le Fabuleux Destin D'amelie Poulain - ☆

 ジャン=ピエール・ジュネ監督、オドレイ・トトゥ、マチュー・カソヴィッツ、リュフュス、ヨランド・モロー、セルジュ・メルラン、ドミ二ク・ピノン、イザベル・ナンティ、クロチルド・モレ、クレール・モーリエ、ロレーラ・クラヴォッタ。

 医者の父と神経質な母のもと、心臓病だと誤解され、一人空想の世界で大きくなったアメリ。大人になったアメリは古いアパートで一人暮らし、モンマルトルのカフェ、ドゥ・ムーランで働く。
 ダイアナ妃の事故の日、偶然に見つけた子供の宝モノからの思いつき、誰かをちょっと幸せにする楽しみを見つける…。

 フランスで公開一週間で120万人動員という数字には驚かされたが、確かに面白い。舞台は現代だけど、古き良き時代のパリを彷彿とさせる。銃も麻薬も犯罪も暴力もナシ。何とも心暖かくなる映画。それぞれのエピソードのどれも心温まる。特に、旅する小人がお気に入り。
 何よりも、主演のトトゥの魅力は素晴らしい。目がいい。ちょっと違うけど「読書する女」のミュウミュウもこういう魅力があったなあ。フランスはこういう才能の出し方が上手い。

 「デリカテッセン」「ロスト・チルドレン」、「エイリアン4」の監督のジャン=ピエール・ジュネがこういう映画を撮るとはちょっと驚き。

「アメリ」 Official Website


「ポアゾン」- Original Sin - 

  マイケル・クリストファー監督、ウイリアム・アイリッシュ原作、アントニオ・バンデラス、アンジェリーナ・ジョリー、トーマス・ジェーン。

 19世紀後半のキューバー、コーヒー輸出で成功したルイス(アントニオ・バンデラス)は財産目当てで無い誠実な妻を求めるために、文通だけで結婚を決める。キューバに着いた相手のジュリア(アンジェリーナ・ジョリー)は写真とは違う美女だった…。

  今、最も濃い二人の共演、さらにキューバが舞台で今年最高に濃い一本。二人の共演だけの映画かと思っていたけど、予想以上に中身はしっかりしていた。
 原作も未読、 トリュフォーによるその映画化の「暗くなるまでこの恋を」も多分未見で、まるで物語には予備知識が無かった。物語の全貌が見えたなと思った瞬間に新たな展開をする、この引き込み方がなんとも見事。
 主人公に共感出来るか否かは別にして、うまいミステリーとメロドラマだった。

「ポアゾン」 Official Website


「冷静と情熱のあいだ」

 中江功監督、江國香織/辻仁成原作、竹野内豊、ケリー・チャン、ユースケ・サンタマリア、篠原涼子、椎名桔平、マイケル・ウォン。

 フィレンツェの工房で絵画の修復士の修行をする阿形順正(竹野内豊)。恋人の芽実(篠原涼子)がいながら、学生時代の恋人、香港からの留学生のあおい(ケリー・チャン)の事が忘れられなかった。ある時、フィレンツェを訪ねてきた親友の崇(ユースケ・サンタマリア)にあおいがミラノにいることを知らされる…。

 原作は未読。基本的には単純な話なので、原作の様な凝った作りをしないとちょっと退屈。フィレンツェとミラノの影像もありきたりだし、エンヤの歌の使い方もあざとい(エンヤのファンの私としては)。「世界の涯てに」でもそうだったけど、ケリー・チャンってどうもラブ・ストーリには合わないと思うのだけどなあ。
 ラストはテンポよく畳み掛けて、うまくまとめているけど、中盤、もうちょっとエモーションを感じたかった。

「冷静と情熱のあいだ」Official Website


「かあちゃん」

 市川崑監督、山本周五郎原作、岸恵子、原田龍二、うじきつよし、勝野雅奈恵、山崎裕太、飯泉征貴、紺野紘矢、石倉三郎、宇崎竜童、中村梅雀、春風亭柳昇、コロッケ、仁科貴、尾藤イサオ、小沢昭一。

 天保末期、飢饉、米の高騰、重税により江戸の庶民は貧窮を極めていた時代。貧乏長屋に住む、おかつ(岸恵子)が金を貯め込んでいる事を小耳に挟んだ勇吉(原田龍二)が泥棒に入った…。

 落語の人情話そのまま。しかし、市川崑は非常にうまく作り上げている。これだけクサい話でありながら、いい流れで物語を運んで、ふんわりとした感動を与える。
 悪人は誰も出てこない。貧乏、姑息、怠け者だったりしても、みんなどこか憎めない人間ばかり。今だから、こんな物語を作りたい気持ちは判る。派手では無いが、決して無視出来ない作品。

「かあちゃん」Official Website


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