'97年5月

「殺しの儀式」は面白かった!


「パソコンで見る複雑系・カオス・量子」
科学シミュレーション研究会 ブルーバックス

 シングル・サイズのCD-ROM付き。MS-DOS、Windowsで動くシミュレーション・プログラムがついていて、本文はその説明に終始する。よって、複雑系やカオスの単なる読み物としては、あまり面白くないかも。


「盗聴」
新保祐一 講談社文庫

 「奪取」が気に入ったので、他の新保祐一も読んでみる。5本の短編集。文章は軽くて読みやすいが、ちょっと深みに欠けるのは前と同じ印象。「盗聴」は、マニアックで「奪取」みたいな面白さはあるが、他は平凡な印象。


「サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内」
石鍋真澄 吉川弘文館

 再読。(→前回感想)
 ローマ旅行から戻って来て読み返してみると、遥かに判りやすくリアリティを持って読めたので凄く面白かった。

 一般的なガイドでは無いが、建築を中心とした美術ガイドとしては面白く判りやすい。ゲーテとスタンダールのローマ、古代ローマ、キリスト教ローマ、バロックのローマ、とテーマを大きく4つに分け、各所の説明をしている。読み物としても面白い。

 著者の石鍋真澄は同じ吉川弘文館から「ベルニーニ バロック美術の巨匠」という本を出している。


「成功するための7つの原則」
スティーブン・R・コーヴィー著 キング・ベアー出版

 最近のベストセラーものという事で読み始めました。日本でもビジネス書の中で、こういった自己改革ものというのは多くありますが、90%嘘臭い上に、読み物として詰まらない。その点、「成功するための7つの原則」は読み物としてマシな分だけ優れてます。内容的には単純な事を、膨らませて書いているので多少冗長度が高いですが。

 ミッション・ステートメントの作成や、第二領域(重要であり緊急でない)の優先の話など、結構面白かった。

→ コヴィー・リーダシップ・センター


「スリーパーズ」 上下 - Sleepers -
ロレンゾ・カルカテラ 徳間文庫

 映画の「スリーパーズ」が面白かっただけに、原作は楽しみにしてました。原作はずっと買っておいてあったのだけど、映画の後から読もうと思って。

 原作も面白かった。構成的には非常に似ていて、面白さも本質的には同じ。ただ、原作の方が、子供の時代のヘルズ・キッチンの描写の詳しさが面白いのだけど、映画の方は法廷劇の書き込み方が面白かったです。これは映画のブラッド・ピットの力かもしれないけど。

 ヘルズ・キッチンの中で、「ウエストサイド・ストーリ」がどうして嫌われるかってのは、納得出来ます(^^)。


「殺しの儀式」- The Mermaids Singing / Val McDermid -
ヴァル・マクダーミド 森沢麻里訳 集英社文庫

 食傷気味のサイコ・スリラーものですが、これは面白かった。傑作。
 CWAゴールド・ダガー賞受賞。
 英国中部の都市の連続殺人事件、犠牲者は男性、すべてむごい拷問の後で綺麗に洗われ、ゲイの集まる街に捨てられている。
 主人公は女性警部補キャロル・ジョーダンと心理分析官のトニー・ヒル。設定は多少興味を引く程度。今や、心理分析医なんか平凡な登場人物だし(^^;)。
 だけど、プロファイルの組み立て方のディティールの細かさや、キャロル、トニーの心理的な歪みの書き込み方が面白い。女性ならではの視点で、男だらけの職場で出世するキャロルの立場を描いているのもリアリティがあっていい。特にプロファイリングとラストの組み合わせ方が絶妙。比較的早く、結末は予想できたけど、ラストの一気に畳みかける展開の素晴らしさは、久しぶりの快感でした。


「フランケンシュタインの末裔たち 人工生命のワンダー・ワールド」
佐倉統 日本経済新聞社

 カオス・複雑形ものという事で読みました。内容的には、非常に読みやすく、広い話題を拾っているので、入門書としても面白いと思う。
 巻末のブックガイドも、お勧めなものばかりで役に立つ。


「香港電脳オタクマーケット」
クーロン黒沢 徳間文庫

 普通の香港のガイドブックには出ていない情報を網羅しているので、オタクな人にはお勧め。貧乏旅行の情報もあるけど、面白いのはもっとオタクっぽいネタで、香港のコンピュータ、ゲームマシン、ビデオCD、ポルノ関係などなど。
 中に出てくるオタクな店は、ほとんど行ったことがあったのでリアリティを持って読めた。でも、著者のマニアックさはかなりのもの(^^;)。 ちなみに著者、クーロン黒沢のホームページは次の通り

   → http://members.tripod.com/~kowloon

 香港マニアとしては、一度は泊まっておきたい重慶大履(チョンキン・マンション)だったけど、あそこでの火事の実体験の話を読んで、やっぱり止めたくなった(^^;)。


「東京下町殺人暮色」
宮部みゆき 光文社文庫

 「東京殺人暮色」の改題。

 下町が舞台で、少年が主人公というのが、いかにも宮部みゆきという感じだけど、物語の始まりがいきなりバラバラ殺人事件というのが意外だった。
 そういう部分で話の暗さが鼻につくし、推理小説自体としては面白くなかった。ただ、出てくるキャラクタはそれぞれ面白いので残念。特に、スーパー家政婦幸田ハナは面白かった(^^)。


「イタリア・都市の歩き方」
田中千世子 講談社現代新書

 フリーの映画評論家、田中千世子によるイタリアの都市案内。出てくる都市は、フィレンツェ、トルカーナ、ヴェネツィア、ミラノ、ナポリ、シチリア、ローマ。それぞれを映画の話を絡ませながら語っていく構成は、映画好きとしてはたまらない。巻末の関係する映画の一覧も、イタリア関係映画のリストとして役に立ちます。その数124本。半分ぐらいしか見ていないし、ちゃんと覚えているのはそのまた半分ぐらいだけど、リストを見るだけでも楽しい。


「世界の名探偵コレクション10 フィリップ・マーロウ」
レイモンド・チャンドラー 集英社文庫

 「犬が好きだった男」- THe Man Who Liked Dogs -
 「碧い玉」 - Mandarin's Jade -
 「うぬぼれた殺人」 - Smart-Aleck Kill -

 の中編3本で、全部未読。最後の「うぬぼれた殺人」の主人公はジョン・ダルマス。シカゴからハリウッドに来た私立探偵で、フィリップ・マーロウの前身。全体的にイマイチな印象だったのだけど、もしかしたら訳がこなれていないせいかもしれない。


「いちど尾行をしてみたかった」
桝田武宗 講談社文庫 

 ストーカー流行りの企画モノと思ったけど、意外に真面目。元は1992年末から報知新聞に連載していた「尾行ちゃった=都市の人間行動学」。
 ただ、後をつけて行動を観察するというだけだけど、意外に面白い。調査対象は比較的地味で、典型的オバサン、小学生、高校生カップル、ホームレス老人などなど。調査対象をもっと過激にした方が、ずっと面白かったんだろうけど。個人的にはホームレス老人と、夜の澁谷のたいこ帯姿が面白かった。


「パソコンを1/256倍使うための本」
First Hill/Bamboo Grassmound編著 アスキー出版局

 いわゆるイースターエッグをまとめた本。
 どっかの検索エンジンで、Easter Eggで検索すれば、このぐらいのネタはすぐに集まる気もするけど、ま、それなりにまとまっているので買って読みました。 ちなみに、著者は英語名だけど日本人だと思う。早丘、竹芝??


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