2001年2月


「落ちこぼれてエベレスト」
野口健 集英社

 違いが判る男の味、ネスカフェのCMに出ている野口健の自叙伝。7大陸最高峰世界最年少登頂記録を持つ本人の自叙伝ではあるが、読むとあきれてしまう経歴。山では高山病、遭難すれすれ、意識を失いガイドに救助される。昔は昔で、小学二年生で石で頭を殴る、父親は外交官でタクシーを乗り回すワガママ小学生、シェルパの娘に恋してすぐ結婚すぐ離婚…。山から生きて帰ってこれたのは単なるラッキーだったという気がしないでもない。んー、どういう本だ、こりゃ。

 ちなみに7大陸最高峰は、モンブラン(ヨーロッパ4808m)、キリマンジェロ(アフリカ5895m)、コジアスコ(オーストラリア2230m),、アコンガグア(南米6960m)、マッキンリー(北米6194m)、ビンソン・マッシーフ(南極4897m)、エルブルース(ヨーロッパ5642m)、エベレスト(アジア8848m)

野口氏情報


「チーズはどこへ消えた?」
- Who Moved My Cheese ? - Spencer Johnson,M.D.
スペンサー・ジョンソン 門田美鈴訳 扶桑社

 ネズミのスニッフとスカリー、小人のヘムとホー。スニッフは鼻がきき、スカリーは行動派、ヘムは変化を恐れる臆病、ホーは柔軟に変化に対応する。
 ほんの短い寓話。このベストセラーは驚く。でも、確かに 読んでみると面白い。みんな心のどこかに引っかかる所があるんだと思う。 内容を簡単に言えば「変化を恐れるな」という事。素直に受け取ってしまうのもちょっと悔しい気がする(^^;)。
 
 原題が「Who Moved My Cheese ?」で「誰が〜」なのに、邦題は、「どこへ」に変わっているのが気になる。
→ 「チーズはどこへ消えた?」掲示板


「からくりの話」
中野不二男 文春文庫

 古今東西のからくり的な技術についての話。キール、暗号、貨幣の穴、オルゴール、慣性航法、軸受、スクリュー、ひき臼、扇風機、ゴルフボールのディンプル、日本刀とノコギリなど様々。面白いものもあるが、当たり前な話題も多い。
 たんなるからくりについて説明するだけでなく、その社会的な背景に目を向けているのは興味深い。日本における鉄文化の遅れや、江戸時代の技術の閉鎖性について何度も批判している。


「クリムゾン・リバー」
ジャン=クリストフ・グランジェ 創元推理文庫

 映画「クリムゾン・リバー」の原作。映画ではまるで判らなかった部分を知りたいが為だけに読んで見る。まあ、確かに原作は面白いのだけど、映画だけで理解出来る訳が無い事が、原作を読んで見て理解出来た。まったく困ったもんだ。
 本国フランスでは40万部を超えるベストセラーとなったらしい。


「聖なる血」
- The Blood of the Lamb - Thomas F. Monteleone
トマス・F・モンテルオーニ 中原尚幸 扶桑社ミステリー

 ブラム・ストーカー賞受賞作。
 ニューヨーク、主人公は若くして人望が厚い司祭ピーター。彼が強盗に襲われた時、突然手から光がほとばしり強盗を焼き殺してしまう…。
 聖骸布の血液から取られたキリストのDNAなど、そのまま「イエスの遺伝子」を連想させるが、TV伝道師との戦いや、ピータの伝導の旅など、宗教を真っ向から描いている所は好感が持てる。しかし、初めのワクワク感に比べて結末はちょっとお粗末。


「スペアーズ」
- Spares - Michael Marshall Smith
マイケル・マーシャル・スミス 嶋田洋一訳 ソニー・マガジンズ

 ドリームワークスが映画化権を買った、という宣伝文句にちょっと引かれる。どうも映画化権の売り文句には弱い。
 
 舞台は未来、設定的にはちょっとSF。主人公ジャック・ランドール、元ニューリッチモンド警察警部補で元ブライト・アイ(何故か、このブライト・アイというモノが明確に説明が無い)。
  200階建という巨大飛行機メガモールが飛ばなくなり、都市と化したのがニューリッチモンド。こういうSF的な設定に、ちょっとサイバーパンク的な雰囲気が漂う。
 金持ちの体のスペアのために農場で飼育されているスペアーズ。農場の管理人のジャックは、やがて彼らと共に逃げるる事になる…。設定は面白いが展開はイマイチか。最終的なまとめ方は結構面白いのだけど、なんか不満足。結局、クローンに対する倫理的な姿勢というのが、SF的な設定全体に埋没しまっている。


「<臨時便>僕たちの深夜特急 香港→デリー→ロンドン120日間バスの旅」
西牟田靖 株スパイク

 沢木耕太郎の「深夜特急」と同じコースを、25年後(1996,7年?)に旅した記録。沢木が通った店や街の変化が判るのは面白いが、同じ場所を旅してもこうも文章から受ける 印象が違うのは不思議。それだけ沢木の文章力と視点が面白いという事が逆に印象深かった。


「深夜特急」5 トルコ・ギリシャ・地中海
沢木耕太郎 新潮文庫

 「<臨時便>僕たちの深夜特急」を読んだ勢いで、ホンモノの方を読み返す。去年、トルコに行った時には忘れていたんだけど、結構沢木が行った店に行っていたり、同じような印象を持ったりしたのを知って、なんか楽しい。
 イスタンブールで2回行ったプディング・ショップという店に、沢木も通っていたとは(当時とはまるで雰囲気違うらしいんだけど)。
 この本はやはり面白い。


「超記憶術」
- Super Memory - Douglas J. Herrmann
ダグラス・J・ハーマン 土田光義訳

 タイトルの「超記憶術」という程のオーバーな本でも無く、胡散臭い内容でも無い。
 記憶力改善の本は多いが、非常に広い範囲から捉えている所がこの本の特徴。テストにより自分の記憶力の問題点を探る、記憶と健康、たばこ、アルコールなどとの関係、記憶をサポートするシステム、忘れやすい事を覚えるテクニックなどなど。実用的で、結構面白かった。


「あふれた愛」
天童荒太 集英社

 96年から99年に小説すばるに載ったものの短編4作の書き直し。

 「とりあえず、愛」-- 育児ノイローゼ、子殺し願望の妻。「うつろな恋人」 -- 不安神経症によりストレスケアセンターに入院する塩瀬が出会うウェイトレスの智子は幻想の恋人を持っていた。「やすらぎの香り」 -- 精神科の患者の奥村香苗と同棲相手の秋葉茂樹の二人の恋人。「喪われゆく君に」 --
コンビニで突然死んだ男の未亡人宮前幸乃とコンビニの店員の保科浩之。
 それぞれの物語は、天童荒太らしい不安定な心を扱っている。「永遠の仔」「家族狩り」の様な圧倒的な読ませる力は無いものの、それぞれ面白い部分は多い。


Books Top


to Top Page