1999七夕調査〜星の悪神

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星の悪神
●五月蝿
 さて弟棚機が出てくる「死者と生者を間違えてはいけない」お話の続きで、 いわゆる「天国(アマクニ)」が「大国(オオクニ[葦原中原])」を征服するお話となります。

 葦原中原には蛍のように光る神。五月蝿のようにうるさい神などの邪神がおり、 草や木まで話をするというので誰を遣わしたらよいものかと協議し、 神を遣わしますがどうも上手く行きません。

 そこで「返矢畏るべし」「雉子の頓使い」の故事の由来が説明されます。 それでは次に誰を遣わすか・・・のあとのお話です。

●アマノカカセヲ
 新たに選ばれた2人の神が交渉の後葦原中原を平定しますが、どうしても服従しない 「悪い星の神:香香背男(カカセヲ)」が最後に残りました。

そこで倭文神(シトリガミ)と建葉槌命(タケハツチのミコト)を派遣したら ようやく「星の神:香香背男(カカセヲ)」も服従し、この二柱の神は天に昇ったといいます。 これを倭文神、斯(シ)図(ト)利(リ)俄(ガ)未(ミ)と言うそうです。

中原を平定するのは現在の香取神宮と鹿嶋神宮の二神です(z8)。 この二神は伴に軍神であるわけですから、平定するのに疑問はないですね。

 「悪い星の神:香香背男(カカセヲ)」が、ナンジャラホイ?なんですね(^^;

星の神が誰の言う事を聞かないと考えると、日神アマテラスの言う事を聞かないとすれば、 それは昼でない世界、つまり夜で、その前の文に蛍のように光る神などと書いてあるので、 単純に星の事を指すと考えて良さそうですね。

 そこで二軍神は倭文神・建葉槌命を派遣するわけです。
星をやっつけられるやつ(^^;誰だ?ブラックホールじゃないだろし〜(^^;


倭文神
●倭文神
星をやっつけられるやつ(^^;・・・数が沢山あるものとも類推できそうですが、 それらを一網打尽にするには「雲・雨など悪天候」か、それこそ「網」って言う事になりますね。

倭文とは「倭・つまり日本の事」と「文・つまり文様、転じて織物」となるよう(z8)なので、 次頁に譲る事に致しましょう(^^;(^^;(^^;(^^;(^^;


葦原中原の平定
●その後z9
 葦原中原を平定した後アマテラスの孫であるニニギノミコトが地上に降り立ち、 下界の平定を完全なものにしていくのですが・・・

ニニギ命は天下りしてじゃなくて(^^;天降りし、波打ち際に「八尋殿」を建てて、 その中に機を織っている2人の姉妹を見つけました。 姉が磐長姫、妹が木花開耶姫(コノハナノサクヤビメ)と言いました。 ニニギ命は姉を帰し、妹を迎えたので、姉と父は怒り、ニニギ命の寿命が短くなったと言います。

 さて折口氏は「川などに棚を作り、その中で機を織り、神のような尊い方が来るのを待つ、 当時の結婚の習慣があった」とされております。これが丁度七夕のお話と似ているので、 このお話同士が結びついたと他の例を挙げ書かれております。

●水中の織り姫z9
 万葉集などを見ると、当時では「天」と「地」の区別はそれほどなされていないので、 天の織り姫と地の棚機は、ほぼ同じと考えられていたと言います。 そして川辺で機を織り神を迎えるという考えが次第に廃れ、中国渡来の七夕の話に 取って代わられたと言うのが、今までの民俗学の主流であったようです。

 また「水中の織り姫」の話も、「天」と「地」の区別と同じように、 棚の場所が違っただけの話であるとされていたようです。

 簡単にもうしますと「いい加減に覚えていた幾つかの話が、ある部分は消え、 ある部分は妙にくっ付いてしまた」と言う事でしょう。

●寿命z9
 水は言わば禊(みそぎ)になくてはならないもので、その場所の象徴として「水辺」が あると想像できます。ニニギ命は木花開耶姫を怒らせてしまった事により、言わば 「水神」の怒りを買い、寿命が短くなったことになります。

 これは変だと考えれば変ですね〜。ニニギ命はアマテラスの孫で「三種の神器」を 賜って天より降りてきたのですから、「水神」などよりも位は遥かに上であると 考えるからです。

 う〜んこの項目は「祟り神」を言いたいのでしょうか、それとも 「寿命」の事を言いたいのでしょうか。

 織り姫が不死の象徴であったとすれば、この話はしっくりきそうな気が致します。 ギリシア神話で言えばゼウスと言えどもモイライ(運命の女神)には逆らえないことと同じ理屈です。

●民俗学
 私が民俗学の本を読む上で注意している事があります。 民俗学は明治になり、諸事情によりそれまでの伝承などが急速に失われて行くのを危惧して、 それらを書き留めておくことを目的として、発展してきました。  しかしそれらは、あくまでも民間に限られてしまいました。それでそれ以外の例えば 「XXの神」などの言わば正規の伝承などは殆ど取り扱われない欠点を残してしまいました。

 伝言ゲームなどで伝聞は正確に伝わるものではないことは皆さん良くご存知かと思います。 それが例えば何百年というサイクルで行われたり、例えば社会的上層から下層へ話が移行した 場合を考えれば、民間伝承だけでもとの思想を手繰り出すのは容易な事ではないであろう と言う事です。

 それにしてもこの断片をどう繋げるか・・・はたまた、どう繋がるか(^^;



参考引用文献

z1古事記・武田祐吉訳他・角川ソフィアY-1
z2古事記物語り・太田善麿著・教養文庫717 D101
z3日本書紀・井上光貞他著・日本の名著1・中央公論社
z4日本の神話・山田宗睦著・カラーブックス
z5七夕と相撲の古代史
z6東アジアの古代文化94号・倭文神の祭祀と信仰
z7東アジアの古代文化98号・倭文神タケハツチ
z8古事拾遺・岩波文庫
z9折口信夫全集・第十五巻・民俗學篇1・中公文庫s4 15


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