古事記では次のような「曲」が書かれております。
天(あま)なるや 弟棚機(おとたなばた)の 天上のおわします。若い織り姫様が、首にかけておられる玉を連ねた首飾り、 その連ねた孔玉の輝くこと!、深い谷を二つも渡って、輝き照らす、 阿遅志貴高日子根神でいらしゃる。と訳せば良いのかな、自信ない(^^;
頸(うな)がせる 玉の御統(みすまる)、
御統に 孔玉(あなだま)はや。み谷(たに) 二(ふた)わたらす
阿遅志貴高日子根(あぢしきたかひこね)の神そ。
ここで「弟棚機」が出てまいります。何の前触れもなく突然「弟棚機」が出てきます。 「弟」は「兄」に対するもので「若い」と訳すのだそうであります。ここまでのお話はアマテラス・ツクヨミ・スサノヲが登場し、スサノヲがヤマタノオロチを 退治し、大国主命(オオクヌシノミコト)が登場し、葦原の中原に神を遣わし、 平定しようとする時に読まれたものです。
その後アマテラスの孫であるニニギノミコトでも棚機が出てまいりますが、 そちらは「星の悪神」の方にしまして、棚機の考察をしようと思います。
兄に対する弟と考えますと、織り姫は2人以上の姉妹のようにも見えます。 しかし「詩」である以上「短く端的に」を考えていたとすれば「弟」は「若い」と 考えても良さそうに思われます。(本居宣長・古事記伝十三より)また牽牛に比して若いと言う考えもあるのかも知れません。
それから織り姫が姉妹であるのはおかしいという説を見つけましたが、 中国の天帝の孫娘「北斗あるいは昴」の1人が織り姫である説話がありますので、 一概に否定できないと思われます。
この「曲」のおかしな所は、前段・後段が必ずしも一致していないことがあります。まず後段は、それまでも文脈からいっても妥当でしょう。日本書紀ですと、 その前の文章に似ております。
その後段の「輝き」を強調するためか、突然説明もなく「弟棚機」が出てきますが、 もし別々の「曲」を融合させたのなら、何故そのような必要が有ったのでしょうか?
今までの説では「棚機」とは「川に桟敷を渡し、その先に小屋を建てて、そのなかで機を織る 又は神を待つ風習」があったとされておりまして、 折口氏や野尻氏はこの説を取っておられるようです。そして それまで日本に七夕と同じような話があった。とされています。私は、これは時点の問題である気が致します。つまりこの詩が読まれたときには、 もうすでに説話として知られていた。と考えた方が良い様に思います。 何故なら古事記・日本書紀が書かれた時代より前の弥生時代ないし古墳時代の 「桜ヶ丘5号銅鐸」に描かれております「水辺の西王母」があるからですね。
棚のある機(はた)であるわけですから、りっぱな高級機ということでありましょう。 奈良時代においても機台に組み立てられたものは「織部司」の独占であったわけですから、 地べたに座るような代物ではなく、相当な高級機であることが伺えます。これを着る人は当然ごく小数であったでしょうから、貴族が着る、又は神事で使うなど、 貴重品であったことは確かでしょう。へ(^^へ)とすれば、・・・とすればなんですが(^^;、 織り姫の説話を利用しない手はないと思うのです。 こう考えると「機の製造者」或いは「織物の技術者」などの、個人ではなく、なにかしらの 集団が関与している可能性が有りますね。可能性のお店が広がる(^^; このページは自転車操業だなっす(^^;
らちがあかないので、同じ所の「日本書記の記述」を見てみます。古事記と同じく「死者と生ける者」を間違えてはいけないと言うお話に続いて、 同じ歌が詠まれておりますが、織女星(ベガ)が首にかけた「スバル」と解説に有ります(z-2)
「玉を連ねた」が「昴」とする解釈のようですね。でも夏の「こと座のベガ」と 冬の「おうし座の昴」は位置が離れ過ぎていませんか?おりひめ様は巨人なんでしょうか(^^;
確かに「玉を連ねた」が「昴」は見た目では納得しますが、位置が良くないですね。 スバルはそんなに光り輝くって言うんでモナイし・・・
「光輝く」に引っかけたのでしょうか、「金星」という説もあるようです。 それは、う〜ん、違うんでないのかい(^^; 感じだけど(^^; 今度は光り過ぎですよね(^^;
謎が広がるばかりだな(oo)/ 確かなのはこの部分が「出雲神話」に属するって事ですね。
なにゆえ「織姫」は神話に、突如として強引に割ってはいるんでしょうね?
日本書紀には、古事記にはない、これに続く歌があり、2つで対の歌になっています。
天離(さか)る 夷(ひな)つ女(め)の い渡らす迫門(せと)
石川片淵(かたふち) 片淵に 網張り渡し 目ろ寄しに
寄し寄り来(こ)ね 石川片淵田舎女が瀬戸を渡り魚を捕るため、石川の片岸に網を張り渡したが、 その田舎女が網目を引き寄せるようにこちらへ渡って来なさい。石川の片淵よ
「天離る夷つ女」を田舎女と訳しております(z3)が、天を隔て遠い所にいる女と直訳すれば これは「織り姫」と解釈する余地はあると思われます。
そかし「織り姫」ならば織物でなくて網になっている理由が必要ですね(--;
何にしましても「生けるものと死すものを区別するようになった話」と何の脈絡が あるんでしょう。注とかに書いておいてよね、まったく(^^;
ちょっとはずれますが、諸説には「よばいの風俗」から「男が動くものである」と 考えている説も見受けますが、 大抵の七夕説話は「織り姫サイド」のお話である事が重要です。 若しくは羽衣型や難題型の七夕説話の天女のように、位が高い方は「織り姫」の方です。
天の安の川って他にも出てきますね。「アマテラスとスサノヲが神生みする場面」 「天の岩戸事件をどうしようか協議した場所」ですね。「アマテラスとスサノヲが神生みする場面」は「天の安の川」を挟んであっちとこっちで、 話をしますね。これで一時和解しますが、後にアマテラスの機織りの侍女を驚かして殺してしまいますね。 牛飼いが犠牲と考えると、スサノヲがどうやって驚かしたのは馬の皮をはいでだし・・・ 機織りは出て来るし・・・なんか七夕ぽいですよね(^^;
読み過ぎかな(^^;
参考引用文献z1古事記・武田祐吉訳他・角川ソフィアY-1
z2古事記物語り・太田善麿著・教養文庫717 D101
z3日本書紀・井上光貞他著・日本の名著1・中央公論社
z4日本の神話・山田宗睦著・カラーブックス
z5七夕と相撲の古代史