三国志〜魏書〜文帝伝二
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◆◆◆火星食◆◆◆
●正史の記述
 新しい天子の気が東南に現れて以来、二十三年には白い虹が日を貫き、 月が火星を食し、(注1)
●火星食
 「白い虹が日を貫き」はどうしようもないので、置いておきまして(^^;)

火星食について調べてみましたが、どれも地平線下。惜しいのは218年8/18と219年1/8にあります。 火星が月の上をかすめますが、火星が月の裏側に入り見えなくなる火星食にはならないです。

◆◆◆日蝕◆◆◆
●正史の記述
 近年では、己亥の日(建安二十一年五月一日)、壬子の日(建安二十四年二月三十日)、 丙午の日(未詳)に日蝕がありましたが、すべてが水が火を滅ぼす象徴です。(注1)
●建安二十一年五月一日
日食  ユリウス暦で216年6月3日

 夜明けの日蝕で、欠けたまま昇ってきますね。食最大時は 地平線の下ですね。



●建安二十四年二月三十日
日食  ユリウス暦で219年4月2日

こちらは夕方の日食。空が赤くなってくる前に、日食は終わります。この時間が食最大。



●丙午の日(未詳)
 丙午の日(未詳)となっていますから、この日は日食ではないため(未詳)なんでしょうね。 該当日付の可能性は最初の前述の219年4月2日から禅譲のあった220年までで、丙午の日。

 216年から221年まで日食を探してみると220年3月22日。丁未。前日の220年3月21日は丙午ですので、 1日間違えようですね。当時の暦に直すと建安二十五年二月一日

日食  これは夜明けの日食。



◆◆◆歳星◆◆◆
●正史の記述
 そもそも歳星(木星)をわがものとしたものは、国家が起る出発点となります。 昔、武王が殷を討伐したときには、歳星が鶉火(しゅんか:星座の名)におりました。 鶉火は周の分野(天の二十八星座に対応する地上の地域)にあたります。 高祖が秦に入ったときには、五つの惑星が東井(とうせい:星座の名)に集まりました。 東井は漢の分野にあたります。現在、歳星は大梁(たいりょう:星座の名)にあり、 大梁は魏の分野にあたります。
●歳星(木星)をわがものとしたもの
 星の中でも惑星は地球に近いので明るく、また特有の動きをします。 内惑星の水星や金星は太陽に近いため昼まで見えないことが多いですが、 外惑星は見える期間が長く続きます。その外惑星で最も明るいのが木星。

 木星は約12年で全天を一周します。中国では木星は歳星と呼びました。 歳(年)の星でありますから惑星の中でも最も重要な地位を占めます。 これはどこの古代国家でも似たような傾向がありますね。

●二十八星座
 現在では太陽の通り道であります黄道上の12の星座が使われます。 「ふたご座」とか「おとめ座」と言ったものですね。 ここで気が付かれると思いますが木星の周期も約12年なのです。

 古代の中国では 月の通り道であります白道を基準に、中国の二十八の星座を割り振りました。 その星座に月が1日ずつ宿る(月の周期が約28)と考えまして二十八宿と言います。

 また西方からの影響であると思われますが、やはり黄道上の12の星座の概念が 中国にもありまして十二次と言います。

 二十八宿と十二次との折り合いがつけられ占いをする方法があります。 まあこういった意味から木星の周期が重要な意味合いを持ってくることになります。

(二十八宿については別項目で紹介しています。)

●鶉火・大梁
 鶉火・大梁は十二次の名称です。 正確には星座というよりそのあたりの場所、又はそれに対応する二十八宿という 感じが近いと思います。 この黄道十二星座と二十八宿を使った占いは春秋戦国時代の地域と対応します。 図のほうがわかりやすいですかね。

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●武王が殷を討伐したときには、歳星が鶉火に
 武王が殷を討伐したのは紀元前1100年頃。木星は約12年周期なので歳星が鶉火 (うみへび座付近)にあったのはやはり約12年にめぐってきますので、 沢山候補が出て来てしまい天文で検証不可能ですね。
●高祖が秦に入ったときには、五つの惑星が東井に集まる
 劉邦(高祖)が秦を滅ぼしたのは紀元前206年のこと。 五つの惑星とは水星・金星・火星・木星・土星のこと。 東井とは二十八宿の星座で、現在のふたご座の腕から下の部分。

東井 東井 左8/18右6/17

 左側の図は水星が出てくるまで期間を待ったものですが「井(ふたご座)」からは少々ずれてしまいます。 一番固まって見えるのは6月初旬から中旬あたり。双方火星はみずがめ座やうお座の辺りにいますので、 集合はしないですね。

 でもこれが伝わって所が凄いですよね。これは珍事ですよね。

●現在、歳星は大梁にあり、大梁は魏の分野
大梁

 大梁は「胃」「昴」「畢」(おひつじ座・おうし座付近)。ここに黄道が通り、 木星が近づき、「胃」「昴」「畢」の手前で 一度逆行して突き抜ける感じですね。これは夕べ見とけば分かる事か(^^;)

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●参考・引用文献
  • 正史三国志1魏書I・ちくま学芸文庫(注1:斜体文字引用)
  • 中国の科学・中央公論社
  • 中国占星術の世界・橋本敬造著・東方書店
  • when.doc
  • suchowanさん
  • ●当サイト内関連ページ
  • 二十八宿
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