曜日の由来 第四話 北欧神話

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日曜日と月曜日

Sunday.サンデイ・日曜日
 日曜日はSun(サン・太陽)の Day(デイ・日) 。 フランスなどは「主の日」と言います。 日曜日の呼び方を大まかに分類いたしますと、キリスト教カトリック系の国では「主の日」、 ゲルマン系の国では「太陽の日」、その他は「第何日目」となるようです。
Monday.マンデイ・月曜日
 月曜日は月 Moon(ムーン・月)の Day(デイ・日)。dies Lunaeから来ておりまして、 luna(ルナ・光る)やluceoに由来します。ドイツ語ではMondag.フランス語ではlundi. スペイン語ではlunes.と呼んでおります。ルナはローマ神話では月神を表します。
             

北欧神話

なぜ北欧神話に?
 次にお話しますように、英語などの曜日の名前は北欧神話に由来します。 北欧神話はバイキング達により語られておりましたが、他のインド・ヨーロッパ語族である ローマ神話やインド神話との類似点も研究されている(カール・ケーレニイ)ようでありますが、 その本は探し出せませんでした。

 バイキング達の船は船足が速くて、沿岸諸国の町が襲われていると報告が入っても、 その町に当着したときには、もう町を荒らしまわり引き上げた後で対処のしようがありませんでした。 そこで町を荒らし、抵抗する者は皆殺しにするのを誇りとするような彼らの信じる「野蛮な(^^;」 神々を捨てさてキリスト教に改宗させようと長年の努力を重ねました。

 最終的にはバイキング達はキリスト教に改宗され、(より進んだ?)倫理観が浸透し、 海賊行為はなくなりました。北欧神話はここに滅びてしまうわけですが、なぜ曜日の名前に 北欧神話の神々の名前が採用されているのかは分かりませんでした。

 北欧神話は大きくはゲルマン神話に属します。キリスト教に改宗するのが1200?〜1400?年代 であるようなので、その時には曜日の考えは既に伝わり、該当する神々の名が当てられたものと 想像しますが、何が真実であるのかまでは調べられませんでした。

Tuesday.チューズデイ・火曜日
 火曜日は北欧神話の軍神チュール(ティル)の日です。 チュールは主神オーディンの三番目の息子であります。 [Tyr・チュール]が[Tiw・ティウまたは Tiu・チュー]に変化して、 チュートン語で何々のを意味する[es・ズ]が付いたものです。

 神々の国アスガルトに「いつの日か巨大な狼が現れ世界を滅ぼすであろう」という伝説がありました。 そして巨人の国ヨツンハイムにその狼フェンリルが生まれたのです。

主神オーディンは息子のチュールに狼フェンリルを縛らせようとしましたが、鉄の鎖を使っても 身をチョット震わせるだけで鉄の鎖をバラバラにしてしまうほどでした。

 そこで主神オーディンは透明の魔法の鎖グレイプニールを 使って後で鎖を外すからと約束して狼フェンリルを縛ろうとしたのですが、 狼フェンリルはどこか怪しいと感じたのです。そこで「誰かが自分の口に手を入れておくなら」 という条件で魔法の鎖グレイプニールで縛られることを許しました。

 誓約を司る司法神でもあったチュールは条件の通り狼フェンリルの口の中に右手を入れました。 そして主神オーディンは魔法の鎖グレイプニールで狼フェンリルを縛りました。 狼フェンリルは何時もの通り身を震わせれるだけで鎖など切れてしまうと思っていたのですが、 どんなに暴れても魔法の鎖グレイプニールは切れませんでした。

 だまされたと知った狼フェンリルはチュールの右手を噛み切ってしまいました。 しかしチュールが右手を失ったお陰で世界最後の日と予言されたラグナレク(神々のたそがれ)までは 狼フェンリルを縛り付けておくことが出来たと言います。

Wednesday.ウエンズデイ・水曜日
 水曜日は北欧神話の主神オーディンの日です。 [Odinオーディーン]が[Wodenウヲーデン又はWendenウエンデン]に変化して、 チュートン語で何々のを意味する[es・ズ]が付いたものです。Odinは怒りを意味します。

 全世界を貫く宇宙樹ユグドラシルと呼ばれるトネリコの根の1本は、 知恵の泉ミーミルに通じておりました。 主神オーディンは賢いが上にも賢くなりたかったので、知恵の泉ミーミルを飲もうとしましたが、 泉の番人がその片眼を置いていくなら飲ましてやっても良いという条件を出したので、 主神オーディンは自分の片方の目をとり泉に投げつけ、ミーミルの泉の水を飲みました。 こうして主神オーディンはさらに賢くなったのですが、片眼を失ってしまったのです。

 ラグラレクの魔軍総攻撃の時、狼スコルはソールの車に乗っている「太陽」を飲み込み、 狼ハティはマーニの車に乗っている「月」を飲み込み、 最後には巨人の悪神ロキの子供の一人の巨大狼フェンリルは、 下顎が地につき上顎が天に届くほどの口を開け、主神オーディンを飲み込んでしまいます。 〜ラグラレクより〜

Thursday.サーズデイ・木曜日
 木曜日は北欧神話の雷神トールの日です。トールは怪力の戦神・雷神で農耕神でありました。 [Thor・トール]に、チュートン語で何々のを意味する[es・ズ]が付いたものです。

 雷神トールはの使命はこの世の終わりラグナレクの時まで、霜の国の巨人と戦い、 神々の世界を守ることにありました。

 ある朝雷神トールが目覚めるとどんな敵でも一撃で倒し戻ってくる ミヨルニールと言うハンマーが無くなっています。 ハンマーを盗んだのは巨人トリムと言うものでした。 雷神トールは巨人トリムにハンマーを返してくれるよう頼みますが、 巨人トリムは「女神フレイアを嫁によこすならハンマーは返してやる」と言います。

 雷神トールは女神の中でも最も美しいフレイアを巨人の手に渡すには忍びなく、 ロキの計略でトールが女装して女神フレイアの代わりに乗り込みハンマーを取り返したと言います。 〜トリムの歌より〜

Friday.フライデイ・金曜日
 金曜日は愛と美と豊穣の女神フレイア(Freija)の日です。 海の国で生まれ、女神の中で最も美しい女神でありました。 又発音が似ているためオーディンの妃のフリッグFriggと混同されました。

北欧では金曜日を魔の安息日と言って、魔女が会合して女神フレイアを追い払う日と言われております。

 戦場で名誉の戦死をとげたものがいると、女神フレイアは鷹の羽を付け、戦いの乙女ワルキューレ達を 率いて戦場に行き死者の半分を自分の館に運んだそうです。後の半分はオーディンが引き取りました。

フレイアの夫は太陽の光を現わすオッド(オスル)でありました。 オスルはフレイアとの結婚に飽きてしまい旅に出てしまいました。 フレイアは悲しさにくれながら夫の帰りをずっと待ちつづけていたのです。 その時に流した涙が岩に染み金になったといいます。北欧では金の事を「フレイアの涙」と言います。

 いくら待っても恋しい夫が帰ってこないので、フレイアは夫を世界中捜して回りました。 世界中から少しずつ金が取れるのは、その時のフレイアの涙であると言います。

 フレイアはついに南の国で夫を見つけました。天人花の花園にうっとり座っていたのです。 夫オスルは再びフレイアを見たとたん愛が蘇り、二人で天上の都アスカルドに帰ったといいます。

 これは長い北国の冬に太陽の光が戻ってきた(春が来た)ことを指していると言われております。 北欧でよく女性が天人花を髪に挿しているのはこのお話がもとになっております。     

Sartuday.サタデイ・土曜日
 土曜日はサトゥルヌス(ローマ時代にギリシア名クロノスと同一視されるようになりました)の日。 人類に畑作を教え、ブドウの木の剪定方法を教えた農耕神。

 ギリシアのクロノスについては、収穫の時に祭りが行われ、主人も奴隷も平等に無礼講となり、 あらゆる遊びが行われたと言います。

 ローマでは12月17日から7日間国を挙げてサトゥルナリア祭を行いました。 年期を終えた奴隷に自由が与えられ、贈り物を交換して、ローソクを燃やしたと言います。

 このサトゥルナリア祭の最終日が「征服されざる者の誕生日(dies Natalis Invicte)」として、 この日が太陽の復活の日「冬至」になるように計画されておりました。 この12月25日が「ミトラ神」の誕生日であることもあり、 クリスマスの日付の起源となったようであります


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●神話の比較(一部)
北欧神話ケルト神話備考
神々トゥワサ・デー・ダナンの神々と同じ 考古学により確認されているようです。
オーディーンは片眼で睨むと相手を麻痺させる・聖鳥は ルグは片眼で魔力を持つ・聖鳥は同じような神力を持つ
ティルは右手を無くし、剣の神 ヌアドウが戦闘中右腕を失う・神剣の持ち主同じく右手を失う

北欧神話ローマ神話備考
オディーン(片目)とティル(片手)が協力して働きをする ホラティウス・コクレス(片眼)とムキウス・スカエウォラ(片手)が ローマを救う同じく片眼・片手の二人
オーディーンは睨むと相手を麻痺させる コクレスは橋の上でエトルリア軍を睨み付け追い返す同じ目の力
ティルは片手を犠牲にしてフェンリルを信じさせる スカエウォラは片手を燃やして相手を信じさせる 双方相手を信じさせるため右手を失う
 北欧神話とローマ神話は両方とも放置すると世界の破滅が訪れ、かつ、相手の方が強い神話。

北欧神話インド神話備考
オーディン・トール・フレイの三神のため小人が神の仕事に必要な宝を作る フルハスパティ・インドラ・フシュヴインにルブ達が神の仕事に必要な宝を作る 宝を作る詳細まで話が似ている
 この比較神話学ジョルジュ・デュメジル氏の研究にありましたが、チョット読むの が大変なので。あとでね。う〜〜〜んと(^^;

●ラグナレク(神々の黄昏)
 ラグナレク。北欧神話最後の神々と魔軍との戦いをここに書こうと思ったのですが、 御存じない方に一番面白い部分を教えてしまうことになりますのでやめました(^^;

 ワーグナーが歌劇にした部分ですね。ん〜「ワルキューレの騎行」と言う序曲は どこかで聞いたことがあると思います。

 北欧神話の範囲はノルウエー・スェーデン・デンマーク・アイスランド・グリーランド地方です。 最も古い最高神がテュール。次が農民層の古い神であるトール。オーディンは後から侵入してきて 支配者となった貴族や戦士層の信仰するか神であるとするのが、大方の説であるようです。

●参考引用文献
  • ●暦と占いの科学・永田久著・新潮選書
  • ●時と暦・青木信仰・東京大学出版会
  • ●現代こよみ読み解き事典・岡田芳朗。阿久根末忠編著・柏書房
  • ●時間と宇宙について。アイザック・アシモフ著。山高昭訳。早川書房(注A)
  • ●ギリシア神話・付北欧神話。山室静著。社会思想社・現代教養文庫430
  • ●サガとエッダの世界〜アイスランドの歴史と文化〜・山室静著・教養文庫1441 D280
  • ○旧約聖書略解・日本基督教団出版局
  • ○世界の宗教と経典・自由国民社
  • ○世界の神話伝説・自由国民社
  • ○古代文明の遺跡と謎・自由国民社

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