ヘラクレス座2・誕生

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凱旋の夜(その1)

●ゼウスの変身
 さて婚約者アルクメーネーの兄弟の仇を討つことになったアムピトリューオンが、 そのエレボエス攻撃軍の指揮をとっている間の出来事でありました。 ゼウスはテーバイに残っていたそれは美しいアルクメーネーがとても気に入ってしまったので、 ゼウス自らアムピトリューオンの姿に変身してアルクメーネーの前に現れました。

 アルクメーネーは遠征に行っているはずのアムピトリューオン突然現れたことに少々驚きました。 そこでアムピトリューオンの姿に変身したゼウスは、 アルクメーネーの疑惑を解くために エレボエス攻撃の実際の戦場の様子を話して聞かせ、 証拠として戦利品の「ポセイドンがタポスの初代王に贈った黄金の盃」を見せ、 ゼウスがエウロペーに贈ったのと同じ首飾りを手にしてアルクメーネーの寝所に入りました。

●三度昇った月
 ゼウスはアルクメーネーと共に過ごす時間を増やすため、太陽神ヘリオスに命じて 三日間太陽を空に昇らせず、夜の長さを三倍にしました。

伝令神ヘルメスは月の女神セレーネに月の船をゆっくりと進めるよう頼み、 眠りの神も人々に楽しい夢を贈ったので、誰もこの不可思議な夜に気が付きませんでした。

 このとき月は三度昇ったと言われ、ヘラクレスのトリセソス「三度昇った月の子」と言う別名の 由来となりました。

●双子
 そしてこの不可思議な夜に本物のアムピトリューオンが帰り着き、 初めての夜を共にしました。

 こうしてアルクメーネーは一夜のうちに「ゼウスの子ヘラクレス」と 「アムピトリューオンの子イピクレス」の双子を身ごもったのです。 


凱旋の夜(その2)

●疑い1
 凱旋の日に付いては別のお話があります。

アムピトリューオンが遠征から帰ってきた晩に、アルクメーネーと夜を共にしようとすると、 「あなたは昨日帰ってきて私を寵愛しながら手柄話をしてくれたでしょ」と 証拠の「黄金の盃」を見せました。

 アムピトリューオン一瞬何の事やら分かりませんでしたが、 凱旋してた時、直ぐ預言者テイレシアースが何やら言っていたことを思い出し、 自分のかわりに何かただならないものを感じ、アルクメーネーには手を振れなかったというお話。

●疑い2
 また夜が明けて帰ってきたアムピトリューオンにアルクメーネーはそれは驚きましたが、 ゼウス又はアテナから予言力を与えられたテイレシアースに 実は昨晩のアムピトリューオンはゼウスの化身でと「ゼウスとヘラクレス」 について話を聞かされたというお話。今1つは。
●ゼウス現わる
 アムピトリューオンはアルクメーネーの話と黄金の盃の話を信じないで、問い詰めようと殺気立って アルクメーネーを追いかけました。身の危険を感じたアルクメーネーは神殿の祭壇の下に 隠れましたが見つけられてしまいました。

 アムピトリューオンはアルクメーネーの隠れている祭壇の周りにまきを積んで火を付けましたが、 にわかに雨が降り出して火を消してしまいました。 すると突然雷鳴が轟き電光と共にゼウスがその姿をあらわしました。

 ゼウスはアムピトリューオンに何もかも話し、ヘラクレスのことを予言して 忽然と姿が消したということです。。


ヘラクレスの誕生

●ヘラの策略
 アルクメーネーがヘラクレスを生む時と同じくして、 アルクメーネーを首尾良く追放したあのステネロス王にも子供が産まれようとしておりました。 ステネロス王の妃ニッキペはアルクメーネーよりも二ヶ月遅れての出産予定でした。

 ゼウスの子のヘラクレスが自分の子供でない事に非常な怒りを感じているゼウスの妻・ 女神ヘーラーはある策略を考え付きました。

 ヘラクレスが誕生する日、オリュムポスに神々が集まったとき、 ゼウスは嬉しさの余り皆にこう話しました。 「今日、わしの身から出た一人の男の子が全アルゴスの支配者としてこの世に産まれるのだ」

 女神ヘーラーはそんな話など全然信じない振りをして、 きょう生まれる男の子がゼウスの後裔全てを支配するように神聖な誓いをたてて欲しいと願いました。 これが女神ヘーラーの策略であると気がつかないゼウスは、 その男の子とは、てっきりヘラクレスの事だと思っており、神々の前で誓いをたててしまいました。

 女神ヘーラーはゼウスが誓いを立てると直ぐにオリュムポスの山を駆け下りアルゴスに向かいました。 ステネロスの妻ニッキペが7ヶ月で出産するように仕向け、 それからアルクメーネーのいるテーバイに向かい、幸運の出産の女神エレイテイアを アルクメーネーの所から追い払い、アルクメーネーの陣痛を止めてしまいました。

 ヘーラーはすぐさまオリュムポスに戻ると越え高高に 「大神ゼウスの誓いの通り、たった今アルゴスを支配する男の子が生まれました。 その子の名はステネロスの息子エウリステウスです。」 と叫びました。

 ゼウスはこれを聞いたとたんヘーラーにしてやられたと思いました。 このとき始めて悪しき惑わしの女神アーテがゼウスを欺いて誓いを立てさせた事に気がつき、 ゼウスは女神アーテの前髪をひっつかみオリュムポスから下界に投げつけました。 こうして人間界には悪しき惑わしの女神アーテがうろつく事になりったのです。

●出産妨害
 ヘーラーはこれだけではとてもあき足らず、運命の3人の女神モイライたちに ヘラクレスが絶対生まれない様に厳しく命じました。 大神ゼウスでさえモイライたちには逆らえないのですが、 この時の血相を変えた女神ヘーラーの勢いに押され、 モイライたちはヘラクレスが生まれる戸口に幸運の出産の女神エレイテイアと一緒に 膝を重ね手をその上に硬く組みあわせてヘラクレスが生まれることができない様にしていました。

 アルクメーネーの友達のガリンティアスは女神の処置に気がつき、 アルクメーネーのいる部屋を出るなり女神たちに 「大神ゼウスの御心により無事男児が出産したので、もうお前たちに用はない」と言いました。 驚いた女神たちは組んでいた手を解いてしまったので、ヘラクレスが生まれました。

 アルクメーネーの友達のガリンティアスの嘘にだまされたと知った女神たちは ガリンティアスを「いたち」に変えてしまいました。

    通常のお話では運命の女神たちは、突然現れた「いたち」にビックリして思わず手を放して しまったと言うお話ですが、ガリンティアスは「いたちの少女」という言葉なので、 カール・ケレニイの説を採用しました。

●十月四日
 このようにヘラクレスは10ヶ月と4日で生まれたので、ギリシア人は十月四日で生まれた子は 大きな苦労に堪えねばらないと考えたのです。

 ですから非常に苦労をしている人を見ますと 「この人は四日目に生まれたに違いない」と言うそうなのであります。


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