デフレになるのはなぜか

日本経済はデフレで物価が下がりつつある。物価が下がってたくさんのモノが売れるようなら経済は縮小しないのだが、売れないので経済規模は縮小する。つまり、モノの値段が下がることが問題なのではなくて、モノが売れないから値段が下がるのであり、値段が下がっても売れないからデフレになるのである。

なぜモノが売れないのだろうか。モノが売れないのは我々が買わないからだ。なぜ我々がモノを買わないのかというと、お金が無いから...ではない。ちょっと前までは、お金が無くても、買いたければ借金してでも買っていたのである。ちょっと前までの経済が拡大してきた時代には、我々はだんだん値段の高いモノを買うようになっていったのだった。だから、経済が拡大したのだ。

ビジネスの基本は、仕入れたモノに「付加価値」を付けて高く売るということである。我々は付加価値にお金を払うのだ。その付加価値というのは「便利な機能」や「デザイン」などで、それがあると何となくいい気分にさせられるようなものである。モノを売る側は、そういう付加価値を考えるために創意工夫し、感性を発揮しようとする。いってみれば、付加価値というのは売る側の自己表現みたいなものである。買う方は、他人の自己表現にお金を払って、それを自分のモノにしたような気分になるわけだ。

ところが、そうやって他人が考えたものばかりを自分のモノにしていい気分になっていると、「自分って何?」という疑問が涌いてくることになる。経済が拡大するのは、我々がたくさんお金を使うようになることだが、たくさんお金を使うほど自分でものを考えなくなるのである。逆に、経済が縮小するのは、みんなが自分でものを考えようとし始めたからだと考えられる。つまり、世の中全体が「自分探し」モードに入っちゃったのがデフレの原因であると考えることもできる。

(01.9.1)

 → デフレはどこまで行くか