5.カシュガルは遠かった

注)2002年9月25日の文章加筆

この夏は旅行されましたか?私は台湾に行ってきました。日本以上に暑く、デング熱が流行っていると聞いていたのですが、衛生状態も気にせず夜市で食べまくり、蚊にもさされましたが、今のところ異常はないようです。体が丈夫なのだけがとりえです。
さて今回は、遊学中の夏休みに、20日間で新彊ウイグル自治区を旅行したお話です。

 

3774km、3泊4日寝台車の旅
北京にいる間に、チベットのラサかカシュガルへは絶対行きたい!と思っていました。
日本から直接行くと、時間とお金がかかるし、ゆっくり旅行できるのは夏休みがある学生の特権ですから。
ラサの方は高地のため、持病に与える影響も考えて断念しました。でも病気が治ったら是非行きたい場所です。

で、旅行先はカシュガルに決定。カシュガルってどこ?と思われる方もいますよね。中国の西の端っこ、パキスタンへ抜けるバスも出ているところ。昔、シルクロード交易で栄えた都市です。
さて、次はどうやっていくかです。北京→ウルムチ→カシュガルを飛行機を乗り継いで行くこともできますが、お値段を考慮すると貧乏学生の選択は列車の旅です。北京→ウルムチは3774Kmを寝台車で3泊4日で移動します。「硬臥」という寝台車があり、3段ベッドで料金は下が一番高く、その次が真ん中、その次が一番上。少しづつ安くなります。一番人気は真ん中のベッド。一番最初に売り切れます。一番したのベッドは高い割には、昼間はみんなが座る椅子がわりにされるので、朝「もう少し寝ていたいなー」と思っても、朝の早い他の乗客に起こされて勝手に座られるので、おちおち寝ていられないのです。

チケットを買いに行った時、既に真ん中は売り切れていました。友達4人でのウルムチまで行く予定でしたが、全員下の席を取りました。
寝台車って、乗った時はワクワクするものですが、これが3泊4日となるともう飽き飽き。最初は景色を眺めたりするのですが、広い中国はそんなに景色が変るわけでもなく、親しくなった他の乗客と話したり、似顔絵のうまい乗客に絵を書いてもらったり。
乗客の一人に、これからチベットとパキスタンの国境警備に行くという男性がいました。その人のトランプで北京でしか流行っていないというトランプ遊びをして、降りる時に記念にトランプをくれましたが、あの人たちは今どうしているのでしょう?一期一会ですね。
そんなこんなで過ごすうちに、いよいよ新疆ウイグル自治区に入ると荒野や砂漠が続くようになり、遠くの高い山に万年雪が見えてくると、「あー、中国の西部に来たんだなー」と思ったものです。
ちなみに、北京→ウルムチの寝台車料金は651元。1万円くらいでした。

バスで砂漠横断
友達4人でウルムチまでは一緒に行くと決めたものの、後は行き当たりばったりの旅。それぞれ行きたいところも違うので、何日かウルムチで過ごした後、それぞれが行きたい場所に出発。私は友達と2人でクチャへ。クチャにはキジル千仏洞やスバシ故白などがあり、その昔はオアシスとして栄えた町でした。ウルムチからクチャ行きのバス。これがひどかった。坂は登らないし、途中で荷物は落とすし。乗客の荷物はバスの上に載せられるのですが、載せ方が超適当なので乗客のトランクがドサッと道に落ちるのです。その度に乗客も降ろされ強制的に休憩。18時間で着くと聞いていたのに、結局23時間もかかってしまいました。でも誰もあせりません。

乗客はほとんど現地のウイグル人で、中国語があまりうまくないのですが、夜中にこれまた強制的な休憩となった時、きれいな星空を指差して「ウイグル語でオスマンというんだよ。」と教えてくれました。(オスマントルコの旗は、だから星が描かれているのね。と勝手に納得。)
その星降るような夜空と、夕日をあびながらメッカの方向に向かってお祈りするウイグルの人達のシルエットは今でも忘れることができません。
閉口したのは、「おーい、飯だー。」とドライブインとは名ばかりの砂漠に立つほったて小屋に降ろされる時。メニューにあるのは”ラグメン”とよばれるキシメンみたいな麺にトマトと羊肉をからめたものか、羊肉のサモサくらいなもの。あー、米が食べたい!と真剣に思いました。でもどんな辺鄙なところに行っても、コカコーラだけはあるんですねー。

さて、クチャで2日過ごした後、いよいよあこがれのカシュガルへ。ウルムチからクチャ行きのバスがかなりひどかったので、今度は寝台バスにしようと思いチケットを買ったものの、定刻の12時になってもバスが来ないのです。午後2時すぎにやっと来たバスは寝台バスじゃない!乗合バスのような感じで、これから24時間このバスに乗るなんて耐えられない。ウルムチからクチャに来るバスで、狭くて硬い座席に押し込められ、既にお尻にはとこずれのようなものができているのに・・・でもでも次のバスがいつくるか全くわからないので、しょうがなく乗り込みました。

乗り込んでから気付いたのですが、車内は羊と汗とオシッコのニオイが渾然一体となったような悪臭がたちこめていました。ウイグル人は肉ものでは羊肉しか食べないので、汗もなんだか羊くさいのです。それに、オシッコのタイミングが合わなかった子供が車内でオシッコをしてしまうので、そんなニオイが混じりあい、正に鼻がまがりそうなニオイ。私のザックにもこのニオイがしみつき、しばらく消えなかったくらいです。
車内の悪臭に耐えかね、窓を開けてひざを抱えて寝ていたのですが、夜中2時に突然の砂嵐!窓の外から砂が投げ込まれたような感じです。髪の毛は砂まみれ、口の中までじゃりじゃり。あー、シャワーが浴びたい。
もうどうにでもして!と投げやりな気持でバスに揺られていると、翌朝10:30くらいにカシュガルに着きました。あら?以外に早く着いてラッキー!でも、もう二度とあのバス旅はごめんです。