夏ばて


 ここ最近ずっと、悠太・光太、うんちがゆるゆるでした。どうやら、夏ばてで消化不良を起こしているよう。それなりに食欲もあるのですが、食べてしまうとまた下から出てしまう。ちょっと心配でした。

 そんな状態が続いていた先週の土曜日。
 この日は1学期最後の個別療育の日で、家族みんなでK学園のプールに入れるのを楽しみにしていました。
 が、悠太に異変が。
 いつものように起き、いつものように朝のミルクを飲み、そしていつものようにお風呂で水遊び。
 ふと風呂場を見ると、さっき飲んだばかりのミルクを吐いたあとが。
 あれれ?悠ちゃん、お水むせちゃったかな?そう思っていると、悠太が泣きながら、そして、これでもかというくらい血の気の引いた真っ青な顔で、お風呂からあがってきました。
「悠ちゃん、大丈夫?!」
あわてて夫が抱きかかえると、悠太、そのまま夫の肩口にむけて、お風呂でしこたま飲んだ水をげーーーーーーーっ。
「うう、やられた・・・」
夫も悠太も、吐いた水でずぶぬれ。そのままお風呂場へ逆戻りして、シャワーで体を流します。
その後もまた懲りずに、お風呂場で水遊びを続ける悠太。
「そんなにお水飲んだら、また吐いちゃうよ〜」
しばらくすると、また泣きながらお風呂場から出てきて、「抱っこー!」
今度は私が抱き上げます。すると、すかさずお水を大量に嘔吐。ううう、気持ち悪い。吐いたのはお水とはいえ、胃液交じりのお水の臭いこと。
悠太、お水はおしまい。有無を言わさず撤収。
個別療育は欠席決定。あ〜あ、残念。

悠太はしんどそうに布団に横になり、眠ってしまいました。
まさか、嘔吐下痢症?私もずっとおなかの調子が悪いし・・・なんだかだるい。もしや、ゴールデンウィークの二の舞か?
青ざめた悠太の顔を見つめながら、本気で心配していました。

悠太、30分ほど眠っていたでしょうか、気がつくと目が開いています。顔にも随分血の気が戻っています。
悠太、すくっと立ち上がって、そのまま台所へ。何食わぬ顔で、「ごはんください」。って、あんた、さっきまで死んでいたでしょうに!
吐いてすっきり、おなかがすいたらしいです(笑)。なんなんだ、その回復力は。結局、その後は普段どおり。なにはともあれ、よかった、よかった。


梅雨の明けた日曜日、私と夫は、The Boomの野外ライブに行ってきました。
子供は、夫方のおばあちゃんとお留守番です。午後1時半に家を出て、帰宅予定は夜10時。かなり長い時間留守にしてしまうので、かなり心配。けど、せっかくのライブ、子供のことを忘れて楽しもう!
夫と二人きりのデートも久しぶりです。

場所は宮島。会場に着いたのは午後3時半。開演の5時までまだ時間があります。芝生の上にレジャーシートを広げて、ビールとたこ焼きを買ってきて、乾杯〜。ちょっとしたピクニック気分です。悠太・光太がいたら、こんなことできないもんなあ・・・

存分にライブを楽しんだ後、デートのしめは食事。夫と夜に外食するなんて、悠太・光太が生まれて、退院して家に帰ってきてから初めて。ほぼ4年ぶりです。
海辺のイタリアンレストランのテラスは夜風が気持ちよく、ムード満点。
この海辺はショッピングセンターから続くこともあって、ドライブがてら悠太・光太を連れてよく遊びに来ていました。
いつも、このレストランで優雅に食事をする人を横目に、悠太・光太を追い掛け回し、テラスからレストランに入り込もうとする悠太・光太を押さえつけながら、「ああ、いつかこのレストランでのんびり食事がしたいなあ・・・」と思っていたものです。
その、ささやかな夢がかないました。
ふはははは!悠太・光太、おまえらはこの中には入れまい、ざまあみろっ!(笑)

ライブの余韻にひたり、レストランの食事に舌鼓を打ち、幸せいっぱいに帰宅。
悠ちゃん・光ちゃんは起きているかな?
真っ暗な玄関、そーっと鍵を開けて戸を開けて・・・靴を脱いで玄関から上がろうとした夫が一言、「うっ」・・・動きが止まりました。何、なに、どうしたの?
明かりを点けたそこには。
「うんち、ふんじゃった・・・・」
光太のゆるゆるうんちが。家の中でパンツをはかない光太は、うんちは大抵玄関でします。思い切りそのうんちを踏んづけてしまった夫。
夢のような時間は吹っ飛び、一気に現実に引き戻されてしまいました。
しかし、こんな絵に描いたようなオチ、つけんでもいいがな。

留守にしていた間、子供たちはさほど困らせることも無かったようです(とはいえ、大変だっただろうな。改めて、お姑さんには感謝!)。それどころか、思いもかけぬ効用が。
夕食は、親以外の食事介助でなくてもこれなら絶対食べるだろう、と二人の好物のクリームシチューを用意していました。
まだまだ二人とも食事は全介助、親が食べさせています。が、なんと。悠太はおばあちゃんの介助をいやがり、自分で、しかもスプーンを使って一皿たいらげたそうなのです!

びっくり仰天とはこのこと。
だって、ご飯をスプーンですくうことすら教えていない、やったことないのですから。親が相手だと甘えがあるのか、「自分でやるより、お母さんに食べさせてもらったほうがラクチン」とばかりに、スプーンを口に運んでもらうのを待っています。まだ、「自分で食べたい」と思うほど、食べることに対する意欲が育っていないのだ、と思っていました。

それが、自分で食べたなんて!
もちろん、スプーンを使うのも下手っぴです。何度も温めなおしてもらいながら、長い時間をかけて食べきったそうなのです。それも、ニコニコで。
食事に対する意識が、そんなに長時間続いたことも驚きでした。
いつもは、ちょっと食べるとすぐに他の遊びに意識がとんでしまうのです。

親以外の人との関わりだからできることがあるんですね。
(後日、私が「自分で食べてみなよ」とスプーンを渡しても、「え〜、ボクできなあい!」とばかりに、ニヤニヤ笑ってばかりで食べようとしないし)


明けて海の日、月曜日。
午前中はプールに行って、ニコニコで遊んで・・・その帰りの車の中で、なんだか悠太がぐったりしています。
帰って熱を測ってみると、37度7分。それほど高い熱ではないものの、ぐずぐず、しんどそうです。お昼ごはんも食べられず、お布団の中でゴロゴロ、ぐずぐず。
風邪の症状は無く、うーん、やっぱり疲れからくる夏ばてのよう。
悠太がこんな状態で出かけるのは、気が引けるなあ・・・

この日は、The Boomのボーカル・宮沢さんの弾き語りコンサートが宮島・厳島神社の千畳閣であり、夫に子守を頼んで、私だけ2日連続でライブに行くことになっていたのです。
ま、もちろん行きましたけどね。だって、どうしても行きたかったんだもの。

大好きな宮沢さんが目の前にいて、大好きな宮沢さんの歌を聴きながら・・・やっぱり、夫と一緒に来たかったなと思っていました(状況的にムリなんだけど)。
「あの曲よかったね」と誰かと共感したいし、その共感する相手は、友達もいいけれど、やっぱり夫が一番いい。

この目の前の光景は、非現実のもの。
私にとっては非現実のコンサートも、多くの観客を前にありったけの気持ちを込めて歌う宮沢さんにとっては現実であり、自分の仕事を真摯にまっとうしようとしている。たった今の、自分の仕事を。
自分の仕事・・・私の仕事って?今自分がしなければいけないことって?

あれだけ、自分の身にふりかかった現実がいやで、現実から逃げ出したくて・・・けど、いざ現実から逃げてみると、置いてきた「現実」ばかりが気にかかる。「現実」がどれだけ大切か、思い知らされる。
現実がそこにあるから、現実から逃げることができる。現実に帰ることができる。

宮沢さんの歌を聴きながら、そんなことばかりを考えていました。

夫と出会って、付き合って、結婚して・・・その頃は世界中のラブソングが自分たちのためにある、と思っていたものです(そんな頃もあったのですよ・笑)。
けど子供が生まれてからは、ラブソングの中の「君」は悠太と光太になりました。
子供に対するどうしようもない焦燥感やいらだちは絶えることなく、けどそこにあるのは「愛情」と呼ぶしかない感情なのです。

「君がいなければ、世界は色の無い虹」
君たちがいないと生きていけないのは、私なのかもしれない。
君たちに依存しているのは、私のほうかもしれない。


3連休の終わった火曜日、平熱にもどった悠太。元気いっぱいでK学園に行ったものの・・・
昨日、悠太が37度台の熱があったことを聞いた園長先生が、「プールはやめといたほうがいいよ〜」
夏ばてを甘く見てはいけない。今ここでムリをすると、本当に病気になっちゃうよ〜、とのこと。
ありゃりゃ、悠太、残念。お水遊び、楽しみだったのにねえ。

私は、「行き着くとこまで行ってしまえ!病気になったら、そのときはそのときだ!」と思っていたのです。先手を打って休むなんて、と。
私がそのようにして生きてきたし、そのように育てられてきたし。多くの私の世代の人たちは、「病気になるかも」では休ませてもらえなかったですもんねえ。病気になって、動けなくなってからでないと。

でも・・・それはNG。
プールに入れなくて、さぞや悠太はつまらないだろう、という親の思い込みに反して、プールに入らず体力を温存しておいた悠太は、その日1日の活動をご機嫌で過ごすことができたのです。自分の体力をコントロールすることのできない子供ですから、もし、大好きなプールに入って、体力の限界を超えて遊んでいたら・・・確かに、大変なことになっていただろうなあ、と悠太の笑顔を見て反省しました。

「なんだかだるいなあ、しんどいなあ」そんなことを言えない悠太・光太です。「まだまだ大丈夫、元気だもん」、そんな過信は禁物!もっと子供の表情や体調に気を配らないとなあ。
休むことが恐いのは私(休んで、子供と3人きりで家の中に閉じこもって過ごす自信がないのです)。「まだまだ大丈夫、元気だもん」は、「大丈夫であってほしい、元気であってほしい」という私の願望であり、私の勝手です。
ここで子供を病気にさせたら、親の責任。親の監督不行届きなのです。

と思っていたら・・・その日の夕方から、光太が発熱。あれ、なんだか熱いなあと思っていたら、39度!
ハイ、私の責任ですね。風邪ではないようで、本人はさほど気にせずニコニコしています。疲れからくる発熱のよう。
水曜日はお休み決定、トホホ・・・


本当に久々の親子3人水入らずで過ごした水曜日。果たして、私と子供だけで間がもつかどうか・・・
幸い、昨夜の光太の熱は午前中には37度台に落ち着きました。ニコニコしながら、ジャンプ、ジャンプしています。
家事は子供が起きる前にだいたい済ませておいたし、私ものんびり。私がのんびり、余裕があると子供もうれしそう。二人とも満面の笑みで、からだ一杯で甘えてきます。こんな二人の顔を見ていると、たまにお休みするのもいいな、なんて思いました。
とはいえ・・・やはり間がもたず(笑)
お風呂場にビニールプールを出すと二人とも大喜び。結局、1日中お水遊びで過ごしたのでした。


木曜日、昨日1日お休みしたおかげで、二人とも気力・体力十分!と、ほっとしたのもつかの間、今度は夫が・・・
いつもの帰宅時間、夜11時に帰ってきた夫。いつもヨレヨレに疲れて帰ってくる夫ですが、いつもより数十倍ドロドロです。
「頭が痛い・・・」
熱を測ってみると、37度9分。晩御飯を食べる気力も無く、布団に直行。夫も夏ばてのようです。
聞くところによると、職場の冷房がきつく、長袖の上着を着てもまだ寒いとか。けど、外に出ると灼熱地獄。そりゃあ、夏ばてにもなるわ・・・

翌日・金曜日も夫の熱は変わらず。大事をとって、仕事はお休みです。
これで、夫の有給休暇は、10月の更新を待たず使い切ってしまいました(涙)。我が家、12、3日そこらじゃ有休は足りません!夫本人の体調不良のとき、私の体調不良時の子守、子供の体調不良時に病院へ行くとき・・・夫に会社を休んでもらわなくてはどうにもならないときが多いのです。
特に、子供の通院に関しては深刻。病院の診察は子供にはとてもストレスです。嫌がり、暴れる子供を私の力では押さえつけることも難しくなってきています。
漫画「光とともに・・・」で、幼少時の光くんを、お父さんお母さん二人がかりで病院に連れて行き、押さえつけて検温するシーンがありました。
我が家も、まさにそんな感じ。
これからますます、男手が必要になってくる場面が出てくることと思います。
ああ、有休がもっと欲しいーーー!

夫の体調も1日休んで落ち着き(やっぱり、疲れたら休養が一番ですね)、子供たちも元気になり、これで週末が迎えられるわ〜と、この日は夜8時前に家族みんなで就寝。このまま朝までぐっすり・・・とはいかないのが我が家。
「ギャーーーッ!」
夜10時半過ぎ、夜の静寂は悠太の叫び声でかき消されました。
んもー、悠ちゃんは・・・
ま、いっか。悠太の相手は夫にまかせよう。私は知らん振りを決め込んでいました。が、「お母さん、お母さん」と夫が呼びます。夫が私を起こすのは珍しいこと。
「悠太の唇が腫れてる」
なにーーーーっ!?
見ると、確かに。いつぞや、泡遊びをしてかぶれた時と同じように、下唇だけがパンパンに腫れあがっています。
その唇の違和感に気付いて、悠太が泣き叫んでいたのです。
けど、そんなに唇が腫れる原因が何も思い当たりません。変なものも食べていないし、だいいち今まで眠っていたのですから。
う〜ん。心配だけど、この間のときは一晩寝て起きたら随分落ち着いていたし、時間がたてば大丈夫だろう、と泣き叫ぶ悠太をなんとか夫が寝かしつけたのですが・・・

翌朝起きても、悠太の下唇は腫れたままです。
目が覚めた悠太は、唇の不快感に泣き叫びます。
ふと、悠太の耳も腫れていることに気付きました。良く見ると、首筋も赤い跡がぽち、ぽちと。どうやら、虫刺されのようです。夫いわく、悠太が夜中に起きたとき、蚊か虫か、羽音がしたので、液体蚊取り線香をつけたのだとか。
むむ、これは・・・この唇も、虫刺されか?唇を刺されることがあるのか?とも思ったけれど、どうやら本当に虫刺されのようです。原因がわかって、ひと安心。
しかし・・・悠太、受難じゃのう。


家族みんなが夏ばてにさいなまれた1週間でしたが、ちょっとした変化がありました。なんと、悠太がスナック菓子を食べられるようになったのです!
な〜んだ、そんなこと、と思ってはいけません。私と夫にとっては大ニュース、青天の霹靂なのです(そこまでじゃあないか)。

とはいえ、少し前からその兆候が見えてはいました。
スナック菓子に興味を持ちはじめた悠太、今までは匂いをかいだり、唇に当ててみるだけでしたが、口の中に少しずつ入れるようになったのです。けど、まだそのときは口の中に入れて齧るだけ。齧る感覚を楽しんでいるだけで、口の中に残ったものは、ぺっぺっと吐き出していました。
味は感じてくれているんだろうな。飲み込んで食べられるようになればいいねえ、と思っていたのですが・・・

しばらく夏ばてで食事を食べたり、食べられなかったりした日が続ていたので、体調が回復してよほどおなかがすいていたのかも。
火曜日のこと、光太のために出していたスナック菓子を、悠太もモグモグ、ごっくん!
吐いてないぞ。悠太が食べた!
とってもおいしそうに、ニコニコしながら食べています。

スナック菓子、体にあまりよくないことは百も承知。けど、「今まで食べられなかったものが食べられるようになった」ことのほうが何倍も大切です。それだけ、「食」に関してかたくなだった悠太の世界が、少しずつ広がってきている証拠なのですから。
スナック菓子が食べられるようになったら・・・これで、たまには「ご飯つくるのめんどくさ〜い、お菓子でも食べといて」なんてできるかも。しめしめ・・・(これが本音だったりします)

光太は光太で、私の食べていたカップラーメンの麺をあげてみると、おいしそうに「もっとちょうだい」。といっても、一本の麺を2、3センチの長さにちぎったものを、ちまちま食べるのですが・・・
でも、おコメ以外の主食を食べた!
一緒にラーメンを食べられる日もいつか来るかな?


こんなこともありました。
ミルクや牛乳を飲むストローマグ。「座って飲もうね」と躾けていない我が家は、子供は遊び飲み。あっちで飲んで、こっちで飲んで・・・飲み終わったら適当にその辺に、ストローマグをぽいっと放ります。
悠太はたまに、「飲んだよ〜」と飲み終わったマグを持ってきてくれたり、光太も親がすぐそばにいて「ちょうだい」と言えば手渡してくれるのですが、やはりぽいっと放ってしまうことが常。後になって「マグはどこ〜?」と大探しするはめになります。テレビの裏にあったり、押入れの中にあったり、カーテンの陰に隠れていたり。
いつも、「ぽいしないで、お母さんにちょうだいよー!」と私はプンプン。

ある日、光太がミルクを飲み終わったカップを手に取りました。
台所で皿洗いをしていた私は、「ああ、またぽいっとしちゃうんだろうなあ。まあ、いいか」と思っていました。ところが光太は、台所にいた私をじっと見て、カップを持った手を私のほうに差し出しています。「まるで、お母さん、飲んだよ。はい、カップ」と言うように。
あら、珍しいこと。私はあわてて、「光ちゃん、ぽいしないでよ!」と光太に駆け寄りました。いつもは、この間が待てずにカップを放ってしまう光太。けどこの日は、駆け寄る私をじっと最後まで見つめ、はい、とカップを手渡してくれました。
んー、光太、えらいぞ!
「ありがとう、光ちゃん!」と褒めちぎったのは言うまでもありません。
まあ、たまたまだったのでしょうが、ね。

一方悠太のストローマグのエピソード。
食卓に座っていた私の目の前で、悠太がミルクを飲み終わりました。「悠ちゃん、カップちょうだい」その言葉が聞こえなかったかのように、私のことが見えないかのようにカップをテーブルの上に置いた悠太。
「あー、もう!カップちょうだいって言ったでしょ!ほら、カップ。それ、それ!」と手を伸ばしました。
すると、悠太が、いったん手放してテーブルの上に置いたカップを再び手に取り、私に渡してくれたのです。

びっくり!
何をそんなに驚くことがあるのか、と思われるかもしれません。
けど、悠太は言葉が分かりません。私が何を言っているのか意味がわからないのです。物に名前があることすら、まだ認識できていません。私が言う「カップ」が何を示すのか、分からないはずなのです。
さらに、私が指差ししたものを見ることもありません。指差しすることの意味も分からないのですから。(「これ見て」と絵本の中の犬を指差したら、その指差したものを、1歳の赤ちゃんですら自然に見て、共感できるのを見ると、複雑な気持ちになります。)
いったん手放したものは、そこでおしまい。意識がほかのものにすぐ飛んでしまうので、手放したものに再び注意を向けることも悠太にとって簡単ではないはずなのです。

そんな悠太が分かるのは、「お母さんがなにか、わあわあ言っているなあ」ということくらい。
何を言っているのかなあ?うーんと、これかな?
きっと、そんな感じで差し出したカップ。
この感動、分かってもらえるでしょうか?
全く指示のとおらない、分からないことだらけ悠太が、私の言葉に注意を向け、私の言いたいこと、思っていることを推測してくれたのです!
初めて、私の言葉が悠太に通じたような感覚でした。

きっと、健常の子供を持つ親御さんにとっては、こんなこと、取るに足らないことなんだろうなあ、と思います。
けど、私や夫にとっては、こんなことすら飛び上がるほどうれしくて、記念すべき出来事で。

もうすぐ悠太・光太も4歳。
これからも、こんな小さな宝物をかき集めながら生活していくんだろうな。




育児なんか大キライ!目次へ
ホームへ