Composition Dollsのお部屋へ 市松人形のお部屋へ
1800年代後半フランスで最も充実した時を迎えるビスクドールですが
ビスクと言う壊れやすい素材にもかかわらず
布製のものや、木製、ワックス、パピエマッシュ(市松のような)
のものよりは、今日たくさん残っています。
ただ、それはひとえに、それがとても高価なもので
美的及び、財産価値のあるものだからでは無いかと思います。

お人形を作る人達は一般の消費者の要望に答えるため
より安く、より壊れにくいお人形の供給
ということを常に考えて今日に至っています。
あくまでも子供の遊び相手ですから
当然のことです。

もともと上流階級の婦人にファションを伝達する為
マネキンの役割を果たしていたビスクドールでしたが
モード雑誌が流通するようになると
その役割も変わってきます。
次第にお人形そのものの美しさ、愛らしさを競うようになり
大人のファションに身をつつんだドールから
ベベタイプと呼ばれる幼児の体型の物へと変化していきます。
これも消費者のニーズにそって変化していったわけです。
そしてさらに価格的にリーズナブルなものということで
フランスからドイツ主流へ。。。と生産の拠点も移っていきます。
一方、1850年以前、アメリカでは
まだ素朴な布製の人形が主流でした。
そしてドイツなどからアメリカへ移住した人達が
ヨーロッパの伝統を踏まえ、アメリカで人形をつくりはじめます。
南北戦争(1861−65)以降、
お人形は新たな素材と工夫、発明で
次第に大量生産されるようになります。

第一次大戦(1914−18)後は、それまでのドイツから
アメリカへと人形産業の中心舞台はうつります。
その当時の主流はヘンドレンちゃんや
シャーリーテンプルちゃんに代表される
壊れにくく、安全、衛生的で、安く大量生産できる
コンポジションドールでした。
アメリカの人形産業の黄金期といわれています。

しかしコンポジションには水に弱いと言う欠点がありました。
勿論壊れないものでもありませんでした。
そして、その欠点を克服するべくセルロイドが出てきます。
しかしこれもまた水に強く、軽く加工しやすいのはいいのですが、
つぶれると元には戻らない、
そして最も問題とされた、発火し易いと言う
致命的な欠点を持っていました。

そして次の新しいお人形の素材である
ハードプラスチックが登場します。
何年に開発されたかについてははっきりしない様なのですが
第二次大戦(1941−45)後の1947−8年の事のようです。
デュポン社が開発したという記述があります。

私はHPドールの存在をアメリカの
オークションのサイトで初めて知りました。
そして現代のドールとも、アンティークドールとも違う
不思議な魅力を持ったこのお人形達に
とても関心を持ちました。
何が魅力的といって、まずそのドレスです。
今の大量生産には無い丁寧さとデザインがあります。
そして生真面目そうな表情です。
ツンとしたお鼻、ちょっと曲がっている口元。
何千と言うHPのお人形をサイトで見た結果
私の心を捉えたのはNanett、Mary Hoyer
Sweet Sue、Anne Shirly、Debuteenのお人形達です。

ビスクドール同様ヘッドマークの無いものも多く
製造していた会社もたくさんあったようですから
ビンテージドール市場は混乱状態のようです。
右の子はナネットもどきちゃんと言う事で購入しました。
ヘッドマークが判別不可能なのです。
でもナネットちゃんだと私は思っています。
ちょっと曲がった口元、可愛い。
身長がまたHPドールのキーワードのような
14インチ(35センチ)。小さくも無く、大きくも無い。
髪のリボンと胸のお花のブローチ以外は購入時のまま。
眼はうすいブルーのつむり目です。

私の好きなタイプの子達は
コンポジションとHPの端境期の子達なので
コンポとHP両方ある場合が多い。
ただコンポのものは状態が良いものが少ないので
私としてはHPで大満足です。
さて、このお嬢さんを作ったのは
アメリカンキャラクターという会社です。
1919年に設立された会社で初めはもちろん
コンポジションのお人形を作っていました。
とても可愛い、質の良いお人形を作り、
ドレスも素敵なお人形がたくさんあります。

私のところのこの御嬢さんの名前はわかりません。
ヘッドマークは単に made in USA です。
ただオンラインのドールショップで
アメリカンキャラクターといわれたので
はい。。。と信じるだけです。
お洋服とお顔の可愛さで選ぶ人です、私。
この子はストッキングをはいてるのですよ。
ナイロンの。
HPの子達はソックスをはいてる事がおおいんですけど。

帽子がちょっとさびしいものだったので
お花をたくさんつけてあげました。
眠り眼です。
あとで登場する、私が頼まれてアメリカからとりよせた
同じ会社のSweet Sueというお人形とボディーが同じ構造です。
両手がHPではありません。
お顔と体、足はHPなのに両手がヴィニールのような
素材で出来ています。不思議。
髪の毛はHPのお人形ですとそろそろ人造に変わる時期なのですが
この子はモヘアーなので、時代が古いかもしれません。
どの子もたいていは愛想があまり良くないので
このように下目のアングルで撮影すると
ちょっとなまいき、たかびーなお嬢さんになりますね。
逆に上からのアングルで撮ると
憂いをふくんだとても良い表情をみせます。
そこがとても魅力的。

HPのお人形のなかでも、とくに私の好きなのが
Mary Hoyer というブランドです。
実はいまでもまだ会社は存在していて
新しいMary Hoyer シリーズがでていますし
Mary Hoyer さんは今年100歳になられたとのことです。
この会社ははじめご主人の毛糸の小売店から出発して
Mary さんがニットに才能を発揮し
それを着せるお人形のデザインへ。。。と発展していきました。
お人形はメールオーダーのみで販売されたようです。
そしてここが素晴らしいのですが、
ニット(Mary Hoyer といえばニットというほどすてき)
やお洋服の作り方の本がたくさんでて
家庭でそれを縫ったり、編んだりが流行しました。
会社としては既成の洋服はあまり販売しなかったようですが
それだけに希少価値があります。
鉤針編みのスケートのお洋服、スキーのお洋服
どれをとってもセンスよく、大大大好き!
オークションではお洋服もその対象です。
失礼します。またしてもMary Hoyer もどきちゃんです。
まず、なかなか状態も良く、お値段も納得。。。
というのがないのです。
Mary ちゃんは結構オークションでは出ます。人気ですから。
そのなかでもこれは可愛いと思いました。
はるばるカナダからおこし頂きました。

来た時はお約束のスケートのニットのお洋服でしたが
見るからに寒そうで、着いたその日にこのドレスを
作ってしまいました。
何か、バレリーナのようですね
靴は来た時のままです。
髪はモヘアなので年代的には古そうです。
目はブルーのつむり目です。

HPのお人形もビスクドールのように
トランクを持っているものがあり
一度Mary Hoyer のトランク付きというのが
オークションに出た事があり
とても欲しかったのですが結構なお値段で
諦めたこともあります。
とにかく、それに付いてるニットが素晴らしかった。
よだれものでした。
とてもきちんと、かっちりと鈎針で編んでありました。
デザイン,色すべて申し分無かった。。。残念。
なんだかこの時代はスケートがはやりだったのか
お人形もスケートはいているのが結構いたりします。
ローラースケートも。
普通の可愛い洋服に足にはスケート。。。
ちょっと変だけど流行ってそんなものです。
それとスキーの格好もあります。
つまり、色々な場面を考えて
お洋服や、道具まで作って、販売したわけで、
レジャーという考えが庶民に広まって行ったことが
お人形に反映されいるのでしょう。
これが、後のバービーやジェニーにつながるのですね。

お顔にしても初期のバービーは怖いような
深刻な表情ですよね?後になるほど愛想が良い。
ジュモーだって後になるとラーフィングジュモーなる
にかにか笑ったキャラクタードールを出します。
一般受けするんでしょうね。深刻顔より。
私などあまり笑われてもな。。。と思うのです。
HPのちょっと憂い顔が
いつ見てもほっとするのです。
いつもの気分にしっくり来ます。
さて、私の持っている3体のHPドールに加え、
私の所でHPを見て「きゃー可愛い!」
と一目ぼれしたTomokoさんの依頼で
私がアメリカから取り寄せてあげた
お姉さんのSweet Sue を加え、記念写真を撮りました。
何かMary ちゃんのバレー発表会を見に来た
お姉さんとお友達。。。という雰囲気ですね。

本当に普段着というよりはよそいきの似合う
お人形達だと思います。
いまのお人形だと浮いてしまいそうなお洋服が逆にぴったり。

50年代というのはまだ
けじめのついていた時代だったと思います。
ドラマをみても家の中できちんとした格好をしていました。
ウェストのあるドレスにハイヒール。。。
ストッキングもはき、真っ白なソックスをきちんと三つ折で。
お化粧も節度があり、髪の毛もみつ編みで。
お花のついたお帽子をお出かけのときは被る。
コンサーバティブですね。
ひょっとするときちんとした物へのノスタルジーかも。
惹かれる理由の一つは。
さてHP最後になりましたが、このページへのゲストです。
Tomokoさん宅ご令嬢ありすちゃんです。
アメリカンキャラクター社のSweet Sue というシリーズです。
とてもポピュラーなお嬢さんで、サイズも一つではありません。
ありすちゃんはかなり大きくて50センチ程でしょうか。
そしてかつては歩けたのです。
手をひくと歩けるようなメカニズムになっていたのですね。
その時ころんだのかお鼻がちょっと痛んでいます。
(リペイントされています)

ありすちゃんはTomokoさんからご予算をお聞きして
すべておまかせで私が選びました。
責任重大。
日本に着いたときはお世辞にも素敵とは言えない
コットンのワンピースでしたので
余ったご予算で、私がお洋服を仕立てました。
淡いピンクのリネンでワンピースを作り、
ビンテージのレースで襟もと、そでを飾りました。
リボンは素敵なピンクのグラデーションのオーガンジー。
もちろんMokubaのものです。
黒のエナメルの靴は、もともとのものですが
ビーズの飾りをつけました。
撮影のため髪をととのえ、ラインストーンの可愛いピンは
私からの、ありすちゃんへのプレゼント。
気に入ってもらえたかな?
うーん、プリティー!
Tomokoさんもうるうる。。。
(Tomokoさん宅にはもう一人市松のおぼっちゃまもお世話しました
激プリティーで後ほど登場)
現在同じ素材でお人形を作ると、
とても採算が取れない。。。といわれるハードプラスチックです。
お洋服にしても同じでしょう。
人件費が高くなってしまい、しかも一方では安い物が出回って
物の質と価格が解らなくなってしまいました。

でも良いものを作るには、手間を惜しんでは無理です。
お洋服の場合は素材選びに何時間もかかります。
不思議なもので、人と同じくお人形にも
似合う、似合わないがあるのですよ。

私がHPに惹かれたのは
もちろんその可愛さとかドレスの素敵なこともありますが
一番はこの子達が私と同い歳だということです。
1951年生まれの私とHPのお人形達は
同じ時代を今までずっと生きてきたんです。
とても近く感じています。
(どちらもヴィンテージ?)
この子達の持つノーブルさを見習わなくてはと思います。

ありすちゃんの手はHPではなくヴィニールです。
だんだんお顔もヴィニールへと時代とともに変わっていきます。
今、アメリカでHPの熱狂的なファンが多いのは
ヴィニールでは到底だせない
この表情を愛しむからに違い有りません。

私達、これからも一緒。ね?
Composition Dollsのお部屋へ 市松人形のお部屋へ
  (Oct. 30, 2001)


このページのTopへ
©2001-2014 Y`s Antique Doll Museum
All rights reserved

*このホームページはWin7/IE11/解像度1280x1024で作成/動作確認をしています。