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日本人というと、何かと「真似」ばかりしていてオリジナリティ―が無い
という有難くないレッテルを貼られていますが、
日本のお人形が外国に大きな影響を与えたものだってあるんです。
。。。とふんぞりかえる館長。(-_-;)支えが要るなー。。。

外国のお人形のサイトを見ていると、Motschmann-typeモッチマンタイプ
というお人形の説明を見ることがあります。
状態の割に、かなりの高額。
オークションでも、何で?というほど、ヒートアップ。
特別な思い入れがあるんだなーと思わされます。
でも、よく見ると、日本の抱き人形に似た作り。

これは、1851年(日本はまだ江戸時代だよ)のロンドンの万国博覧会で
日本の抱き人形が紹介されて大変な反響を呼び、
それを見たドイツのメーカーが
Taufling babyという日本の抱き人形の体を
コピーしたものを作ったかららしい。
Taufling(e) babyというのは、洗礼服を着た赤ちゃん
という事らしいので(ドイツ語わかりませ〜ん(T_T) )
首がすわるかすわらないか。。。の
おつむくらくら。。。の赤ちゃんを模したお人形。
それまで、お人形といえば
ファッションドールのおすまし系だったので
(゚o゚)Oh......!となったわけです。
しかも関節を布で繋いだというところが
お人形メーカーに多大な影響を与えたわけです。
あのスタイナーさんにも。

モッチマンタイプという別名ですが
これは間違いで、モッチマンさんは
ふいごのようなメカニズムで
泣く装置の発明者であって、お人形を
作っていたわけではない。
日本のお人形のお腹に入っていた泣き笛を見て
「パパママ」とかに発展させていった人なのでしょうか?
今でもこの呼び名は、お人形界では燦然と輝く
ありがた〜いもの。きっとこの誤解を
喜んでいるでしょう。だって、かなり有名ですよ。

さて、うちの明治くん。
明治かどうかは別として、
アメリカで見つけました。

体は胴のつなぎ目で分かれてました。(-_-;)
でも、不鮮明な画像ながら、ばらばらになっていても
にこにこ、ご機嫌さんな男の子に見えて、
たしか、アメリカしか発送しない。。。というのを
お願いして手にいれました。

このタイプのお人形は、説明に「モッチマンタイプ」
の2文字があると、もうアウトです。
100ドルで済むものが、10倍ぐらいになっても不思議では無い。
とにかく、コレクターの中は、古い、オリジナルが
有難いものなのですから。数も極端に少ないし。
でも、絶対日本の江戸末期の抱き人形を、それと間違ってる事もある。
違うって。モッチマンタイプは、外国製。真似したもの。

明治くんは、体がばらばらなこともあるし、
状態悪そうでしたので、あまり競争は激しくなかったと記憶しています。
売り手があまりよく解らないという風な出品の仕方でした。

ま、たいして期待せずに待つことにしました。
ひどい画像より実物が良いことなど
まず無いと思ったほうが良いからです。
期待し過ぎると、だめです。

ところがですね、箱を開けたら
こんな子が「こんにちは!」って出てきたわけですよ。
あれ、あれ、可愛い。特に指の形が可愛らしくて。
お顔の汚れ具合も、オークションの画像ではもう「期待するな」
だったのに、とても綺麗。

胴は、ちゃんと離れてましたけど。(~_~;)

こんな具合です。

「ぼく、これでもにこにこできるよ」
って、明治くん、良い子です。(T_T) 号泣。

胴に、泣き笛が入ってますが、アメリカの人は
これの意味が解ってませんでした。
しかも、逆さに突っ込んであるし。(-_-;
これじゃ、何の為の部品かわからない。
説明にもそう書いてあったように思います。

胴の状態、かなり悪し。
うす―い胡粉の塗りで、ヒビが入ってます。
あまり高級なお人形では無いってことですよね。
Y'sらしくて、よろしいではないですか?

胴は、古い和紙を使って裏張りをしました。
体を繋いでいる布も藍、朱、黄土色という
館長泣かせの渋い組み合わせ。
こんな小さい事すら嬉しい、
変な人です。\(^o^)/

これが、泣き笛です。
外野:「おーい、ピントが合ってねーぞー」 すいません_(._.)_

お腹の中に基本的にはずーっと入ってるものですから
つい昨日作ったみたいに、とても綺麗な状態です。
使っている紙を見ると、年代を知る手がかりにもなるし。
明治くんのは、お店の売掛帖でした。

ひっくり返して入れなおし、胴は和紙で
繋ぎ合わせました。
こころなしか、
ばらばら状態を脱して、これま以上に明治くん、嬉しそうでした。
お腹を押すとぶいぶい鳴きます。

裸で日本に帰ってきた明治くん。
次は、着物です。

まず、細かい絞りを館長が泣きながらほどいて
あぶちゃんを作りました。
ノーブルな顔立ちの明治くんには、絹の白だ。
そして、着物は黒だ!そしてさし色は抹茶グリーンだ!
と館長は確信したのでした。

裸にあぶちゃんをして、次に館長はなにやら
設計図のようなものを描きました。
「こんなにかんたんなすんぽうで
いいのでしょうか。。。」
にこにこしながらも、心配な明治くんでした。
このまま、階下の裁縫ルームへ移動です。

そして、いつものように、泣きながら着物が出来ました。
お帽子も出来ました。唐子ですね。
館長作、てきとーな唐子スタイルです。

Seikoさんが、明治のお人形の目について説明してくれました。
風鈴のように、ガラスに裏側から色を乗せているとの事です。
いつまでも乗っているとは限らず、はらりと落ちてしまう事もあるらしい。
西洋のお人形とは違って、儚げです。
私の印象では、目のガラスはとても薄いように感じます。

明治くんとあそぶのは、今年1月
ロンドンのエンジェルにいって見つけた
シャムネコ。
Shinobuさんも前年に行ってるのですが
「え〜っ!こんなのどこにあったんですかー」
(゚o゚)
って、絶叫されたけど、「その他ガラクタ」
って感じで、かごに入って彼女も行ったお店にありましたよ。
名も無いネコですって。(~_~;)
でもロンドンは何でも高いので、
こんなぼろぼろなのに、まけてもらっても
「た、たかい。。。(-_-;)」
Ebay価格を知ってしまうと辛いのよー。

明治くん、おつむは、くらくら動くし、
手足は布で繋がっていて、胴も泣き笛を支えに
胴紙で繋がっていますから、赤ちゃんのようです。
柔らかい。
時々抱っこしてあやす。(~_~;)

どのような経緯でアメリカまで渡ったのかな。。。と考えます。
移民と一緒に?汚れ方からして、
大事に飾っておかれたものでは無いことがわかります。
壊れるまで遊んでもらったと考えることも出来ます。
お人形にとって、どんな生活が良いのか、わかりません。

でも、確かなのは
いつでも、明治くんはこんなふうに
ずーっと、にこにこしていたということです。

とても良い子です。
幸せな気持ちになります。

明治くんに味をしめて、明治抱き人形に
もうすっかりはまってしまった私。
よせばいいのに、またまた探してしまう。

そこである日、
サムネイルのオークションリストをずーーーっと見ていたら
一瞬手が止まった。「すげー(゚o゚)」
サムネイルって、本当に親指の爪ほどの写真ですよね。
でも、インパクトのあるものは
どんなに小さくてもある。
数こなしてると、第六感も働く。そうですよねー?

桃ちゃんは、そんな子でした。
なんだ?!なんだ?!これはー
でも、中の写真を見たとき「は、さいなら〜(~_~;)/。。。」
だって、すごく厳しい顔をした子だったので。
あごに傷。お顔の汚れも半端ではない。
画像自体が、すでにくら〜い。。。
着ているもの、髪の鹿の子、きちゃな〜い。。。
このページを作る為にその画像も取って置いたのに
どうしても探せませんでした。残念。

でも、すぐにそのページに戻っちゃうんですよ。
そして、見れば見るほど今まで見たことも無い
不思議な魅力を持った子に見えて。
しっかり入札してました。(~_~;)v
「わしに直させてくれ〜」

来てからお顔の汚れを落とし、
顎の修理をしました。

明治くんと並べてみると明治くんが新品に見える程
桃ちゃんは大変な汚れでした。
何とか出来るだけの事をして
またしても、着物。(T_T)こればっかりです。。。

桃ちゃんの着物は、参った。
どれを合わせてもピンと来ない。
私のポリシーのようなもので、
お人形達に、同じものは着せない、作らない。

悩んだあげく、これだと思ってかなりのところまで作ったのに
結局納得がいかず、それは珍しくキャンセル。
そして、市松、Tomokoさんの自由人形に使った
着物の残りを使うことに。
3人分で、丁度大人の着物一枚を使い切りました。

襦袢の様に重ねとして使ったのは、総絞りの羽織。
古着ですが、殆ど新品。いつもの行きつけの古着屋さんで。
この赤は、完璧に求めていた色です。
帯は、大人の帯から。この赤も好きです。
江戸とんぼ玉と、私のイヤリングで根付を作りました。

古着屋さんの店長さんから、どんぐりの飾りをもらい
髪飾りに。

そのお店には、桃ちゃんの写真が飾ってあります。

桃ちゃんを見て、「怖可愛い」とおっしゃった方がいました。
当たってると思います。
好き嫌いの分かれる和人形の中でも、特にそうでしょう。
単に可愛いだけの造作とは違うからだと思います。
特に、細目に作られた目です。

ただ、私にとっては、綺麗にしてあげる為に膨大な時間を懸けましたし、
桃ちゃんの持つ圧倒的な存在感が何よりも魅力で、
どこの誰が、いつ作ったのかもわかりませんが、
ずっと大切にしていくつもりです。

明治くん、桃ちゃんと来て、これで打ち止めと思いきや
またまた大変な子を見つけたのですよ。(-_-;)
良く見つけるなー。。。との声がどこからか。。。

小梅ちゃんです。着物の柄が、梅。そして小さいから。
小梅ちゃんは、ちょっと変なお顔です。
目と目が近すぎるからだと思います。
でも、やはり不思議と惹きつけられました。
(こればっか。。。(-_-;) )
それ以上に、片手片足が無いということ。
直したい。(こればっか。。。(-_-;) )

小梅ちゃんも片手片足は無いながら、
無事に?弘前に着きました。
セラーからは丁寧なメールが入っていて、
「いつか直してあげよう、あげようと思いつつ
時間だけが経ってしまった。いったいどんな方法で
修理していいやらも解らない。日本のあなた、ぜひがんばってくれ。
ついでに、もうひとつ、日本の人形の頭だけあるから
あーたにあげる」
と、中には、市松人形の頭だけ入ってました。

こ、こまるなー。。。相談してからにしてもらいたい。
こちらは、小梅ちゃんの修理で頭が一杯。
とても、番外編までする気力がない。

で、こうなったの。お手手は親指以外、片手が全部無し。
足は完全に1本が無し。
それを作りました。
さて、右左どちらの手と足でしょう。
(こればっかりだ。。。)

答えは、向かってどちらも右です。

横からみたところ。
手足があると無いではお人形の雰囲気は大違いとなります。
ちょっと厳密な形と、寸法は違いますけど
それも愛嬌という事で。
もう、考えすぎで嫌になったんでしょ。
材料が決まって、かなり良い出来だったので
それだけで満足してしまいました。
アメリカの通信教育の免状は取りましたが
自分の力だけで、ここまで直せたことは
このあとの修理にとても自信を与えてくれました。
応急処置でも、これだという材料に出会うまでは 
試行錯誤の繰り返しだからです。

足を繋ぐ和紙にも一応こだわって。
近くの古道具屋さんから、清元直伝本とかいうのを買ってきた。
江戸っぽいんですけど。一冊200円。
何書いてるかもわからん。これ本当に日本語かー?

でも、立派に小梅ちゃんのあんよを繋いでくれています。やっほー\(^o^)/
ありがとよー直伝本
しかし、和紙は強い。すぐれものです。

お腹には、
「東京人形師坂本國次」の落款が。
誰?それ。知らん。(~_~;)
胡粉の塗りはとても良い。
研いたら、つるぴかに。。。

「東京」というと、何か現代の呼称と思われるあなた。
小桃ちゃんの為に知恵をひけらかすと、

1868年江戸時代は終わり、明治維新を迎え、
それまで京都にいた天皇が江戸に移り住み、
江戸は東京と呼ばれるようになったのです。
ですから、東京とあってもまだ明治の可能性一杯っす。

私の和人形修行は一応これで終わりです。
何故この3人を手に入れたかと言えば
それはひとつの理由に突き当たります。
直したいから。
日本から遠い外国に渡って、大変な状態で買い手を求めている。
それは、私でなければ絶対いけないとまで思ってしまう。
嬉しさを感じるのは、きちんとした状態に近づけたと思えるとき。
名も無いお人形でも、そうしてもらう価値はある。
名も無いお人形でも、輝く事も出来るはずだ。
それは、私達でも一緒です。

たかだか、人間の人生80年。
綺麗にしてあげれば、お人形は
私よりも、ずっと長く生き続けて行けるはずと思っています。
がんばれ、君達。
館長が、泣きながら着物を縫った事だけは、忘れないでね。(T_T)


 
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(Aug. 18, 2004)


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