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■セブンアイ 「パイオニア」
先週末、サッカーのコンフェデレーションズカップから戻り、5月29日、タイ・バンコクでの最終予選突破を目指してアブダビ(UAE)に向け日本代表と成田を出発してから1か月に及んだ、長い、長い旅がようやく終わった。出国した際11枚あった航空券が全て切られたチケットホルダーを握り締め、本当に安堵した。しかし、安堵は長続きしないと相場は決まっている、私の場合ですが。 翌日は、シドニー五輪柔道金メダリストで「プライド」に転向した瀧本 誠の2戦目を取材し、さて、ようやくトランクを整理しようと安堵すると、今度は、谷 亮子(トヨタ自動車)が妊娠3か月で9月の世界選手権を欠場すると急な連絡が入った。 都内の会見に駆け込むと、ひな壇に座った谷は、ほとんどセクハラといえるような質問にも笑顔を絶やすことがなかった。彼女と周囲は知っていたが、関係者の中には、「日本スポーツ界で、ママになってメダルを獲得した人はいません」と盛んに言う人もいた。この時代、谷が母となって柔道で金を狙うことより、体操の小野清子さんが、40年も前の1964年東京五輪当時、すでに2児の母で銅メダルを手にしていたことがあまり知られていなかったことの方に、ちょっと驚いた。小野さんも金メダルを狙ったのだ。 昨年夏、五輪に母親たちをもっと五輪に送り出したい、と、アンケートなどをしながら合宿を視察し、女性トップアスリートを支援していた小野さんに話を聞くことがあった。 壇上でフラッシュを浴びる妻や、全面協力を約束する夫の笑顔を見ながら、時代というのは不思議な逆行をすることもあるのだ、とふと考えた。「本当のパイオニア」は、時に実に目立たぬ存在なのだ、と。 (東京中日スポーツ・2005.7.1より再録) |
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