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■セブンアイ 「マグネ」
「マスジマさん、できれば目立たないように、地味目に行動してくださいよ」 そもそも、私たちがスカーフを使うとすれば、それは装いに華やかさを加えたいと思うときであって、「地味なスカーフ」という全体がかなり難しい。それでも無地で派手ではないものを選び、テキスト通り髪を隠して巻いてみると、たった布一枚なのになんだか圧迫感がある。そして、その圧迫感に、鏡を見つめながら、ふと、イスラム圏の女子アスリートたちのことを思った。 アジア大会でも世界陸上でも取材してことのあるイランの投てき選手は、思えば、場内に入っても、あのスカーフを頭に巻いていたのだ。試技の瞬間だけそれを取り、投げ終わるとまた巻く。真夏の気温と湿度と、大量の汗をかいてもなお、インタビュー中も外さなかった姿に、同情ではなく、どこか気高さを感じたことを思い出す。 知らない土地での「いつも通りではない」仕事に緊張し、電話1本かけるにも大騒ぎし、締め切りに胃を痛めながら、自分もまた、アウエーで試されているのかもしれない。10万人といわれるイランの観客の前で、平然とプレーし勝ち点を奪おうという代表とは、レベルが違うのだが。 (東京中日スポーツ・2005.3.18より再録) |
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