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■セブンアイ 「足」
気がつかないうちに、足が変な格好になっているんですね、と井上康生が話した瞬間、机の下に見える自分の足、とりわけ、サンダルからのぞくつま先部分を、なぜだかとっさに隠してしまった。 「何や、この足は! こういう足はな、相撲取りには最高なんや。横綱になれるぞ」 心強い味方がいた。今や靴売り場には欠かせない存在となった「シューフィッター」のナカムラさんは、どんなシューズでも、たとえブーツであっても難なく見つけてくれた。仕事柄、靴は消耗品で、もちろんアスリートの繊細さのレベルではないが、少しの不都合が病気に至ることもある。何十年ものキャリアを持つ彼女に詳しいことは話さなかったが、「足を見れば、生活や健康状態、お仕事もわかりますからね。マスジマさんの足は本当によく運動されていて、傷みのないとても丈夫な足ですよ」とアドバイスをくれた。 今週はじめ、彼女が重いヘルニアで突然退職することになった、と電話をもらった。長年の仕事で、立ったり座ったりが負担となったそうだが、これから「ぴったりの靴」をすぐさま運んでもらう、シンデレラ気分を味わえなくなると思うと本当に寂しい、そう伝えるとナカムラさんは言った。 「丈夫な足をこれからも大切にしてくださいね。お仕事は足から築くものですからね」 (東京中日スポーツ・2004.5.21より再録) |
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