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■セブンアイ 「鮭」の季節
「鮭」の季節がやって来た。 「再挑戦は意地みたいなものでしょうか。小さい頃からやってきた柔道の集大成にしたい、楽しんで有終の美を飾りたいと思います」 シドニー以後の海遊で、さらに体を、何より心を研磨し、大きくした滝本は悠然とそう話した。彼ら、アマチュア選手の体内時計には、4年に一度の五輪を基準とする特別な時が刻み込まれている。そして、彼らが五輪を目指す姿は、こちらもなぜか4年に一度、川に戻り、身を削って遡上する鮭に似ている、と言ったら、彼らに怒られるだろうか。 河口にたどりついた一人に胸を躍らせた翌日、国体のハーフマラソンに出場する山口衛里(天満屋)と東海道線の座席で向き合い、陸上競技場へ向かっていた。 「あの東京から、もう4年、早いねえ」 99年11月、最初の選考レースとなった東京国際を独走し、2時間22分12秒と、当時、世界最高に匹敵する記録で初の代表となった。本番では7位入賞をしたが、その後の3年は怪我と体調不良に苦しみ、アテネへの河口からは遠い海に今もいる。 30日朝、報告の電話が入った。 「鮭」の季節がやって来た。河口にいてもいなくても、とびきり勇敢なる鮭たちの。 (東京中日スポーツ・2003.10.31より再録) |
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