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■セブンアイ 一人旅の季節
横浜での取材途中、JRのホームに立っていると男の子に声をかけられた。 夏休みは、小さな一人旅の季節である。新幹線やエアポート、そこら中のプラットホームで、小さな冒険者たちが、看板を確認し、一生懸命大人たちに質問をしている。 「後にも先にも、あれほど緊張したことは一度もありませんでした。はい、もちろん、サッカーの試合よりも。もし遅れたら、2度とサッカーができないような気がして」 先日メキシコを破って、4大会連続でのW杯出場を決めたサッカー日本女子代表のMF、小林弥生(日テレ)は、子供のころ、憧れの女子ジュニアチームに入ることになったころの思い出話をしてくれた。初練習の日、絶対に遅刻してはならないと、隣の駅から乗る上級生に言われた発車時刻の、何と1時間半も前にホームに行き、何十回も駅員さんや大人たちに確認をし、緊張して、ついには持参していたサッカーボールの上にちょこんと座って時間を過ごしたという。たった一駅乗るだけなのに、少女の不安な顔や、ボールの上で緊張して待つ姿も思い浮かべる出ことができる。 さて、横浜での話には続きがある。 いちいち声をかけるのは、少年に失礼だと思い少し遠くから、乗るかどうかを見ていた。発車間際、男の人が「ありがとうございました、ご親切に」と頭を下げて、少年と違う車両に隠れて乗ろうとした。少年に見つからないように後をつける、お父さんである。 (東京中日スポーツ・2003.8.8より再録) |
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