■セブンアイ
 
パリダカ


「眼力(メチカラ)」と書かれた化粧品のポスターを見ながら、なるほどと頷いた。
 パリもダカールも通らなかった今年の「パリダカ」(元日スタート:フランス・マルセイユ、19日ゴール:エジプト・シャルム・エル・シェイク、8,576キロ)で、日本人初の連覇、パリダカ史上4人目の偉業を果たした増岡 浩(三菱)の祝賀報告会が30日、都内のホテルで行われ、1年ぶりに合うことができた。今年は2番手で我慢を続け、トップのアクシデントによってほぼ不可能とされていた27分もの差を残り2レグで逆転。19日間で約8,600キロを走るレース、しかも砂漠で見せた「我慢」の中身を聞きたかった。

「なんも、なんも、諦めるなんて一度も。予測不可能だからラリーですから。我慢も、2番手もまたタノシ、と思いながら走り続けました」
 我慢のために、今年もあの特別な「メカニック」を使っていたはずである。
 埃、高温、乾燥、強烈な陽射しに過労。砂漠のレースでもっとも酷使され、疲労するのは最大の情報源である「眼」だと、昨年教えられた。パンクやクラッシュ、コースミスといったハプニングは、眼の疲労から起きる判断ミス、集中力の欠如、錯覚が大きな原因で、筋力トレーニングと同じように、眼力トレーニングに取り組んでいる。
 週3回、パソコンの画面で特別メニューを訓練し、視力も、確か2.0以上、眼鏡のサポートで2.5は見えていると聞いた。

 どんな素晴らしいマシンであってもそれを本当の意味で動かしているのは、時速160キロで小石を見つけるような眼力であり、それが今回の大逆転を可能にした我慢の中身だった。
「いいドライバーは、新進とも強靱なアスリート」と、増岡は言う。
 87年初出場から昨年の初優勝まで実に15年の苦難に耐えたことを思えば、20日間の2番手など「なんも、なんも」で笑って過ごせるのだろうか。

(東京中日スポーツ・2003.1.31より再録)

BEFORE
HOME