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■セブンアイ 「雑巾がけ」
最後の待ち合わせをしたのは、シドニー五輪女子マラソンの翌日、街のコーヒーショップの前だっただろうか。 シドニーで待ち合わせたとき、1か月1000キロを走り込むような彼女たちでさえ、ビッグレースを終えた途端、あれほど無防備でか弱い姿になることを目の当たりにした。そうして、山口は走れなくなった。恥骨炎、坐骨神経痛、ひざの関節、練習するぶんだけ痛む箇所は増えていく。何より痛んでいたのは、自分と戦う「心」だったと思う。 「どんな形でもいいから、もう一度スタートラインに立ちたいんです」 25日の北海道マラソンで、2年ぶりにスタートラインに立った。棄権は一度も考えなかったが、血マメには苦労したようだ。 さて、私たちは2年ぶりに待ち合わせをした。プラットホームに立っていた彼女は、2時間39分もかかるレースをしながら不恰好ではなかった。競技者としていいマラソンだったとは、本人も思っていないだろう。 (東京中日スポーツ・2002.8.30より再録) |
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