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■セブンアイ 「49歳の新人」
空調が止まっている体育館は静まり返り、湿度のせいでむせ返るような木の匂いが立ち込めていた。 サッカーW杯で日本代表が華やかな脚光を浴び、トルコ戦にベスト8をかけているころ、新聞の片隅に、W杯とあまりに対照的なわずか数行の記事が載った。日本バスケットボール界の名門いすゞ自動車の休部に伴い、行き場を失った佐古が、強豪アイシン精機で練習を再開したとあり、新聞をちぎって手帳に挟んでいた。 孔子の論語では「30にして立つ」、両立というものである。学問や志は30歳でようやく確立するということだが、実感なんてできやしないだろう。省みれば、惑わないどころかほとんど迷路状態であるから、40歳の実感はさらに伴わない。さて、30、40とポピュラーな孔子も50歳になると何と表現するかかなり怪しくなってくる。 「じつは、それは自分にもわからなかったんだよ。彼は、年齢だ、50歳が決断させたと言っているんだけれどね」 49歳の新人である。 (東京中日スポーツ・2002.7.19より再録) |
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