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■ピッチの残像 「“火中の栗”拾って決勝まで来た両監督」
額に刻まれたシワの数が、なぜか同じだった。7本──。 欧州予選ではウクライナとのプレーオフまで苦しみ、今回もドイツを出る日は、見送りの数がかつてないほど少なく、期待されていなかったはずである。大会前には故障者が続出、大会が始まってさえ「退屈なサッカーだ」と酷評された。 「だからこそ、強い誇りを感じる。2位になったことではなく、ドイツが史上もっとも苦しんだW杯を戦い抜いたからだ」 ブラジルのフェリペ・スコラリ監督も、昨年、ベネズエラとの最終戦でもし敗れればプレーオフにまで落ちかねない事態をサバイバルしている。「プレッシャーは信じがたいものだった。予選であえいでいる時でさえ、W杯の優勝を求められていた」と会見で本音を吐き、苦しい時期を支えてくれた家族全員の名前をあげると、涙ぐんでしまった。 「火中の栗を拾う」という例えは両国にあるのだろうか。終わってみれば、という言い方をする者は多いが、今回に限れば、ブラジル、ドイツとも決して絶対的な優勝候補ではなかった。2人の監督は、歴史をかけたもっとも苦しい時期に、重責をあえて担っている。この日の両国の戦いには、かつての王国がともに、崖っぷちであり、どん底から這い上がってきたからこその喜びがあった。サッカーで見逃してはならないのは、咲いている花の美しさではなく、根の強さのほうかもしれない。 (東京中日スポーツ・2002.7.1より再録) |
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