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■ピッチの残像 「2人の闘将の“W杯”に爽やかな結末を」
アイルランドのロイ・キーン(マンチェスターユナイテッド)が造反した理由はもしかすると、これだったのかもしれない。アイルランドの練習を見ながら、そう思った。 マッカーシー監督は、練習には必ず選手と同じ恰好で現われ、おそらく今大会でもただ一人であろうが、スパイクまで履いている。現役時代は、闘争心や、DFとして決して諦めることのないプレーを称賛して「アニマル」と呼ばれた人である。 世界的に絶賛される主将・キーンが帰国したのは、練習環境をめぐる口論が原因とされる。「2人のやり取りは、固唾を飲んで見守るしかなかった」と、もう一人のキーン、ロビー(リーズ)は話していたが、大舞台を控えチームに2人の「闘将」がいては、良いことばかりではない。 16日、凄まじい延長戦とPK戦の末に破れたアイルランドのマッカーシー監督はキーンとの一件に触れた。アイルランドのサッカーに心を揺さぶられた誰もが、喉につかえた魚の骨のように感じているだろう。 「すべては帰国してからだ。この結果が出たからといって、彼を帰して良かったなどと私は思わない。彼も、間違いなくこの結果を誇りに思ってくれていると信じているから」 98年、フランスW杯を前に同国対アルゼンチンの親善試合を取材したことを思い出す。首都ダブリンで、国旗の鮮やかな緑色は「シャムロック」という、素朴だが生命力に溢れ、力強い三つ葉のクローバーを指すのだと教わった。魂を揺さぶるサッカーを今大会に残して去る同国の、もうひとつの「W杯」も、彼らのサッカー同様、爽快感とともに終わってほしい。できればシャムロックのような2人の闘将の固い握手で。きれいごとだろうか。 (東京中日スポーツ・2002.6.18より再録) |
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