![]() |
■ピッチの残像 「“守られた”GKと“嫌われた”GK」
緑のピッチ上で「黄金」と「黒」が激しく交差する。実に鮮やかなコントラストだ。 W杯得点王は「ゴールデン・シュー」、最優秀選手は「ゴールデン・ボール」、しかし唯一、人名のついた賞がある。 「最高の名誉だが、その話をするにはまだ早い。私はまだ、何も止めていない」 15日、パラグアイを完封したドイツのGKオリバー・カーン(バイエルン)は試合後、ヤシン賞最有力候補だと聞かされ、そう答えていた。唯一偶像化された賞が物語るのは、孤独や、ストライカーの華に対しての陰を体現するポジションへの感嘆や敬意であり、連帯感である。ヤシンは晩年、病で足を切断し90年に亡くなった。しかし後進のGK誰もがその技術と、人生にひかれるからこそ、この賞が続くのであろう。 190cm台の大型GKが身体能力を生かしてプレーする時流に対し、我らが守護神・楢崎正剛(名古屋)は技術、繊細さで、明日から世界と、「ヤシン」に挑む。楽しみだ。 16日のスウェーデン対セネガル戦では、延長でポストに当った2本のシュートが勝敗を分けた。ポストに守られたセネガルのGKは、ポストに嫌われゴールとなったスウェーデンのGKに駆け寄り、2人はしばらく抱き合っていた。縦2.44m、横7.32mの空間(ゴール)で争われる運の綱引き、残酷さと魔力。 楢崎は唇をかんで、それらをじっと見ていたのだと思う。 (東京中日スポーツ・2002.6.17より再録) |
BEFORE |
|